EP10 ていうか、近代ダンジョン?
炭鉱の入口付近に建物があったので、それをそのまま拠点に使わせてもらう。監視カメラもあったけど、すでに電気自体が切られているらしく、動作していなかった。
「ま、野営慣れしてる私達にとっては、屋根があるだけマシってもんよね」
そのおかげで拠点の設置も予定より早く完了した。なので明るいうちに一度ダンジョンの下見をしておくことになり、入口付近で中を覗き込むことになった。
「サーチ姉、これがダンジョンなの?」
前の世界のダンジョンみたいな雰囲気は0だからねぇ。
「まーね。ていうかさ、人造ダンジョンよ」
「じ、人造?」
「ええ。元々炭鉱なだけあって、アリの巣みたいに複雑な構造になってる。そこにガードロボットが放たれているのよ」
「成程、確かに人造ダンジョンですね。ですがダンジョンコアは無いのですよね?」
「ところがどっこい、あるのよ。どこかにガードロボットを統括してるコンピュータがあるみたいだから、それを破壊できればダンジョン攻略って感じね」
ヴィーに視線を送る。頷いて取り出したモノは、USBメモリだった。
「ヴィーが作ったプログラム破壊ウイルス。コンピュータのUSBにブッ刺せば勝手に作動するタイプだから、各自一個ずつ持っていって」
それぞれ一個ずつ取り、私も魔法の袋に放り込んでおく。
「かなり脆いヤツだから、扱いは慎重に」
バキョ!
「あ、割れた……んがひょい!」
無言でリジーの鳩尾に膝をぶち込んだ。
次の日。朝イチで攻略を開始した。フォーメーションは前衛が私、その後詰めがリジー。私が先制攻撃をして、リジーが仕留める構図だ。で、中央にヴィー。サイ・テンタクルと聖術……もといサイキックで援護。そして後衛がナイア。背後からの奇襲に備えるのと、ヴィーのバックアップだ。
「今回は今までのダンジョンとは全く違うと思って。相手は機械だから気配も何もなく、突然襲ってくるから」
「音は?」
「音は…………あるかもしんない」
……とりあえず入ってみるか。私が歩き出すと同時にみんなも…………って、忘れてた。
「みんな、靴の底に傷入れて」
「「「……は?」」」
自分の靴底を見せてやる。
「……何故十字の傷が?」
ニヤリと笑い、地面に足跡をつけてみせる。
「……ほら。足跡に特徴が出るでしょ」
「……出ましたね」
「……出ましたわ」
「……出たと思われ」
………………わかんないのかよ!
「その足跡を辿ってくれば、100%安全だってこと! 私が罠がないことを確かめながら進むから、それに続いてきなさい」
「「「あー、成程」」」
応用力のないヤツらめ。
「でしたら私も……サーチ、ナイフを貸していただけますか?」
太ももに着けている投げナイフをヴィーとナイアに貸す。リジーはカースブリンガーがあるから大丈夫でしょ。
ゴリゴリ
「……よし。できました」
「ワタクシも完了しました「あ゛あ゛あ゛あ゛!」な、何事ですの!?」
「あ、足が足が足があああああ!」
「ちょ、何してんのよ、リジーは!?」
リジーはカースブリンガーの斬れ味を甘く見ていたらしく、足の裏から甲へと貫通していた。
「…………ヴィー、回復を。誰か、代わりの靴を貸してあげて」
「ワタクシが同じサイズですから、予備を貸してあげますわ」
泣きながらカースブリンガーを引き抜くリジーを見て、ただただ不安にしか感じなかった。
入口から少しの間はソロリソロリと進む。足跡みたいな痕跡はたくさんあるので、つい最近まで誰かはいたのだろう。
「サーチ、足跡が判別しやすいですわ。流石ですわね」
「いやいや」
……実はこれ、本を正せば某ネット小説の受け売りです。実際にやってみるとかなり役に立つわー。
ガキンッ
今の音は!?
ガキンッ ガキンッ
「……金属音……てことは……」
「……敵、ですね」
魔力を集中し、手甲剣を作り出す。みんなもそれぞれに臨戦態勢に入る。
やがて。
ガキンッ ガキンッ
……ケイコクシマス、ココハシユウチデス。タダチニタイキョシナサイ。
無機質な声が響いてくる……と同時に。
ガキンッ ガキガキガキガキガキガキンッ!
突然走り出して何かを振り下ろしてくる!
ギャリリ! ズドムッ!
とっさに空想刃で受け流して、地面に突き立たせる。って、ツルハシ!?
「はああっ!」
ブチッブチン!
手甲剣が的確に敵の剥き出しの回線を斬る。
ガチャアン
どうやら重要な回線だったらしく、ロボットはその場に倒れ込んで動けなくなる。でもピクピクとはしているので。
「ヴィー、電撃を」
「あ、そうですね……≪聖雷弾≫!」
バリ! バリバリ!
……シュウウ……
あちこちから煙を出して、ロボットは完全に沈黙した。
「……ガードロボット……ですわよね?」
「ガードロボットだけどさ、ツルハシを使うって時点でおかしい。ていうか、警告中に斬りかかってきたし」
「……おそらくプログラムに手を加え、対人殺傷を許可したのですね。人間タイプのロボットがこの状態ですから、その他のロボットも……」
ガードロボットは全部で三種類。人間タイプの歩行型、天井や壁面に設置されてる固定型、そして偵察用の飛行型。
「固定型は電気ショックと無力化ガス噴射だったっけ。これが対人殺傷許可となると……電気が強力になってるかな」
「飛行型には何の機能がありますの?」
「ほぼ偵察オンリーだけど、中の動力源を暴走させれば、爆発くらいは可能だわね」
「飛行型爆弾ですの!? 厄介ですわね」
ガードロボットだけならいいんだけど……。
「確かガードロボット以外にもいるわよね」
「ええ。作業補助ロボットが何種類か配置されているみたいです」
ガードロボットに対人殺傷が許可されている以上、その他のロボットも何らか手が加えられてるか。
「作業補助ロボットでも、使い方次第で対人兵器になりえるからね」
これは作戦変更だわ。
「相手は機械だから、マトモな斬撃は効果ないわ。だから」
自分の膝を指差す。
「歩行型のロボットが出たら、とにかく関節部分を狙って。壊すより動けなくすることをメインに」
「固定型や飛行型は?」
「……これはヴィーに頼むしかないか。電撃はロボットにとって弱点だから、近づいてくる前に叩き落とさないと」
「サーチ姉、矢は有効?」
そう言って弓矢を取り出すリジー。その手があったか。
「もちろん。私はマシンガンを持ってきたから、それを使うわ」
歩行型が出てきたらナイアがサイ・ハンマーで関節を破壊。飛行型や固定型は私のマシンガンとリジーの矢で落とし、ヴィーの電撃で止めを刺す。とりあえずこんな感じかな。
「さあ、慎重に進むわよ!」
相手はロボットです。




