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EP8.5 ていうか、緊急事態。

 カチャカチャカチャカチャカチャカチャ

 がたんっ!


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! 全財産使っても必要な分の1/10にもならなあああああい!」


 だんだんだん!


「な、何があったんですの?」

「わからない。マーシャンと戻ってきてから、ずっとあの状態」


 無言で帰ってきたサーチは、計算機を叩いてから絶望的な声を上げ続けています。これは……当事者に聞くしかありませんね。


 しゅるるるっ


『のあああ!?』


 背後でコッソリと逃げようとしていた陛下を、私のサイ・テンタクルが捕らえます。


『な、何をするか! 妾はアンドロイドの祖たるMK』

 だぁん!

『ヴィ、ヴィー? 妾は同性に壁ドンされてもときめかぬのじゃが……』


「ときめいていただく必要は皆無です。何があったか話してください」


『そ、其方はサーチが絡むと暴走するのう』


「暴走ついでに壁ドンしますか? 違う意味で(・・・・・)


『違う意味でって……のわああああ!』

 ぶおん! ごおおおおん!

『は、はが……』


「あら、壁ドンじゃなく壁ごおおおおんになってしまいましたね。今度こそ、ちゃんと壁ドンを」

『わ、わかったのじゃああああ! 話す! 話すから勘弁してくれええええ!』



「……では、アンドロイド達の協力を取り付けた代わりに、多額の現金が必要になったと?」


『うむ、大体これくらい』


 陛下が弾き出した金額は…………な、何と。国家予算並みの金額ではありませんか。


「こ、これは……」

「わ、私の呪われアイテム売っても、全然足りない……」


「何言ってんのよ、リジー。そんなことする必要ないわよ」


 サ、サーチ?


「大丈夫なんですか?」


「あ、ヴィー。大丈夫よ、うふふ……秘策を思いついたから、うふふ……」


 め、目が据わってますよ……。


「サ、サーチ姉、秘策って?」


 そう聞いたリジーをジロジロ見てから、サーチは一言。


「……リジーなら高く買ってもらえるわね」

 ずざざざざっ!

「サササササーチ姉!?」


 凄い勢いで後退さるリジー。瞬間移動並みでした。


「……ナイア」

「ひっ!?」

「……ヴィー」

「はひ!?」


 ……サーチはにぃぃ……と笑って。


「……みんなで仲良く売られましょうね♪」


 ま、不味いです。サーチがキレかかっています……!


「さあさあさあ、まずはリジーから」

「サーチ姉!? まずはマーシャンからが妥当と思われ!」

『何を言うておる! 妾は女王じゃぞ!』

「心配しなくても大丈夫。マーシャンはもう奴隷契約成立してるから」

『売約済!? しかも妾だけ奴隷待遇!?』


 ……仕方ありません。


「……≪眠れ≫」

 パタッ

「くぅ〜……」


 このままベッドに寝かせて……。


 バンッ トントントントン!


 釘で打ち付けてドアを封鎖。


「ナイア、最強クラスの物理結界で部屋を覆ってください!」

「わかりましたわ!」


 ビキビキビキ! バキィィィン!


 超強力な結界で、サーチを封印しました。


「……さて……」


 私は皆に向き直り。


「私達自身の為にも、知恵を搾りましょう」


 全員、音がする勢いで首を縦に振りました。



「どちらにせよ、チマチマと稼いでいる暇はありませんわね。一攫千金を狙わないと、どうしようもありませんわ」


 確かに。事は一刻を争います。


「取り敢えず陛下はアンドロイド達を抑えてください。下手に私達にツケという形でお金を借りるアンドロイドが現れたら、目も当てられません」


『わかった。しっかりと手綱は掴んでおこう』


「ナイアは念の為に、銀行へ融資の依頼を。陛下の名前をフル活用してください」


「わかりましたわ。ただ、絶望的ですわね」


 あと打てる手は……。


「ヴィー姉、ヴィー姉。これ」


 するとリジーが何か紙を持ってきました。


「キュアガーディアンズ支所にあった、塩漬け依頼」


「塩漬け? 何故そんなモノを……」


 塩漬け依頼というのは、あまりにも無茶苦茶な内容な為、誰も引き受けない超不人気依頼の事です。


「報酬額見て」


 報酬額って………………ぶっ!?


「な、何ですか、この天文学的な額は!?」


 こ、今回必要な額を支払っても、まだお釣りが出ます。


「西マージニア国の先代総統からの依頼。お金はすでにキュアガーディアンズに支払われている模様」


 せ、先代総統ですか。でしたらこの金額も頷けますが……しかし、これは……。


「……でも取ってくるモノと金額が見合いますわね……」


 依頼内容は。


「……オリンポス火山頂上にいると思われる、〝嘆きの竜〟(ローレライ)の牙を一本、ですか……」


 ……この世界にもいるのですね、〝嘆きの竜〟(ローレライ)は。



「まずは移動手段ですね」


 成功するかどうかは二の次。まずは行ってみないと。


「鉄道だと時間がありませんわね。ワタクシが全力で飛んだとしても、半日は見てほしいですわ」


「ナイア、私を乗せて飛べます?」


「勿論。今の時間計算も二人乗っての計算ですわ」


 ……今から半日なら……明日の朝には着きますね。


「詳しい作戦は飛行しながら考えましょう。陛下、なるべくアンドロイド相手に時間稼ぎをしてください」


『うむ』


「リジー、貴女は待機です。万が一サーチが暴走し始めたら、全力で止めなさい」


「…………うぃ!」


 さあ、時間は一刻を争います。すぐに行動開始です!


 ぴんぽーん♪


「っ……と、届けモノと思われ」


 ……もう。いきなり出鼻を挫かれるなんて。


「はいはーい」


 リジーが玄関にいき、ドアを……。



 ゾクリッ



「…………!」


 な、何ですか、この恐ろしい威圧感は……!


「う、あ、あ……」

『う、うぐぐ……』 


 ナイアも……陛下も……声にならない……ようです。な、何というプレッシャー……!



 ――――突然の訪問、申し訳ありません。サーチさんのお宅でいらっしゃいますか?



 こ、声が直接頭に!? というより、何故サーチが此処にいると!?



 ――――そうですか、居るのですね。でしたらこれをお渡し下さい。



 何を置いていったのかわからないけど、プレッシャーの主は去っていきました。すると私達もフッと緊張から解放され。


「っ……は、はあ、はあ、はあ……」

「い、命の危険を感じましたわ……」

『あれは……まさか……』


 ようやく動けるようになった私が玄関へ行くと。


「……ぶくぶくぶく……」


 失神しているリジーが、何かを抱きしめています。


「……紙袋……? 中身は……牙?」


 牙……牙……? ま、まさか! 



「……あの娘達、吃驚したでしょうか……。しかし何故、私の歯がそんなに高く売れるのでしょう? 抜けた乳歯で良ければ、幾らでもあるのですが……」



 その日、何十年か振りに〝嘆きの竜〟(ローレライ)の飛翔が観測されたそうです。ま、まさか……?

ジョーカー出動。

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