EP23 ていうか、死ぬほど大変?
運転手無双に支えられて、私は次の階へ進む。まだまだザコさん達はいるけど、浮き足立ってる人ばっかなので余裕で片づけられた。
ザクッ ズブッ
「ぐはあっ」「ごぼぁ」
廊下にバリケードを作って応戦してきたけど、一っ飛びで越えられる程度じゃ意味ない。勢いのまま二人同時に喉笛を掻き斬った。
「な……っ」
「う、うあ……」
「あんた達、ブラッド・マーズ・ファミリーなんて大層な名前の割には、戦い慣れてないわね」
はっきり言って手応えが無さすぎる。これなら街のチンピラのほうが、よっぽどケンカ慣れしている。
「距離を離して銃さえ撃てば勝てる、とでも思ってるみたいだけど」
ザザザザザン!
「ぎゃ!」「がっ!」「うあ!」
ドサドサッ
「私には無意味だからね」
銃は撃てばまっすぐ弾が飛んでくる。つまり銃口の向きさえ気をつけておけば、弾道を読むのは難しくないのだ。
「さて、二階はこれで全員かな……ヴィー達が楽に上がってこれるように、大掃除しながらいきますか」
二階をもう一度確認して残ってたザコを掃討すると、エレベーターに向かった。
「エレベーターが上がってきます!」
「よし、半々に分かれるぞ! 階段へ行く!」
「なら俺達はエレベーター前で待ち伏せだ!」
……チーーン
ガーッ
「撃てええっ!」
ダーン! ダーン! ズギュンズギュン! バババババン!
「止め! 止めええ!」
「だ、誰もいません!」
「なら階段だ! 応援に行くぞ!」
「「「おうっ!」」」
チーーン
ガーッ
……………………チーーン
ガーッ
「やっぱり待ち伏せだったか」
一度空のエレベーターを上げて、二度目で上がってきたんだけど……ここまでうまくいくとは。
「あとはこっそり背後から近づいて……」
階段付近でバンバン撃ちまくるおバカさん達に、手榴弾をプレゼントし。
…………どがあああああああああん!
よし、一気に片づいた。三階はかなりの戦力がここに集中してたらしく、掃討も楽なもんだった。
「エレベーターが上がってきます!」
「階段を上がってくる気配は?」
「……ないそうです!」
「ならエレベーターだ。二度目に上がってくる可能性を踏まえ、万全の態勢で迎えうつ」
「「「はっ!」」」
……チーーン
ガーッ
「……よし、誰もいな」
どがあああああああああん!
がらがらがら! どずぅぅぅぅん!
「うまくいったかな。エレベーターが派手に落ちていったけど」
エレベーターが開くと同時に、手榴弾の安全ピンが抜けるようにしておいたのだ。
「階段から様子見に行ってみるか」
「何だ、今のは!?」
「エレベーターからです!」
「ちいい! エレベーターに向かうぞ!」
バタバタバタ……
「……あれ? 誰もいない。無用心ねぇ」
途中で拾ったマシンガンを手に、エレベーターへ。
「あ、いたいた」
ダダダダダダダダダダダダダダダダ!
「「「ぐああっ!」」」
ドサドサッ
「はい、一丁あがり」
この階も戦力は集中してたみたいで、生き残りはほとんどいなかった。
「エレベーターが潰されました!」
「なら階段しかない! 階段で待ち伏せだぁ!」
「……んしょ、んしょ」
エレベーターの穴を這い上がってくるとは、流石に思うまい。足音を殺して階段へ向かい、再び手榴弾。
……どっかあああああああああん!
よし、またまた楽に片づいた。この調子でいけば、最上階までにはボスを仕留められるでしょ。
「……あ、待てよ。ヘリで脱出されちゃかなわないなあ……」
結構な高層ビルだったから、上に着くまでには時間かかるなぁ。
「……ん? 高層ビル?」
ダダダダダダダダダダダダダダダダ!
「あーっはっはっは!」
「運転手さん、お疲れ! もういいわよ!」
札束を投げ渡す。百万エニーあれば、しばらくは安泰でしょ。
「ありがとーよ、お嬢ちゃん! またこういう機会があれば、必ずダイブ・ハードル交通へ!」
バタン ギャギャギャギャ! ブゥゥゥィィン!
……ダイブ・ハードルって、略せば……。
「あの人、名字がマクレーンじゃないわよね……」
……っていうか、どうでもいいわ。早く準備しないと。
「結構な量の爆薬があったから、うまくいくと思うけど……」
「おい、敵はどうなってやがる!」
「ボス、どうやら八階付近で仕留めたらしいです。そこから上がってくる気配がありません!」
「そうか、でかした! こんなフザけた事しでかしたヤツにしては、案外呆気なかったな」
ズズゥン!
「……ん? 何だ、今の?」
「さ、さあ……」
ズズゥン! ズズゥン! ドドドオオオオオオオオン!
「うおっ!?」
「今度は何だ!」
……ズズズズズズズズズ!
「お、おい、何か……」
「傾いて……」
ズズズズズズズズズズズズ!! ドドオン!
「「うぎゃあああああああああ!」」
ズドドドドオオオオオオオオンンン!
よし、爆破解体うまくいった!
「サ、サーチ、何が起きたんですか!」
「あ、ヴィー。もう片づいたわよ」
「片づいたって……まさかビルを爆破しちゃったんですか!? ケホケホッ」
うわ、スッゲえ砂ボコリ。
「ホ、≪聖風弾≫!」
ブアッ!
ゲホゲホッ! あ、ホ、ホコリが……!
「ゴホゴホ……ほ、埃か散りましたわね」
「ケホケホ……い、息がようやくできた……」
さ、流石はヴィー……ゲホゲホ!
「リ、≪回復≫!」
パアアア……
ゲホゲホ……あ、の、喉が。
「ふう……あ、ありがと、ヴィー」
「いえ……そ、それより! サーチ、何故爆破しちゃったんですか!」
「え? だって、各階を制圧してったら、時間がいくらあっても足りないわよ」
「だからって、ビルを丸ごと破壊するなんて……!」
「いや、仕方ないじゃん」
「仕方なくありません! 周りの迷惑を考えてください!」
「いや、あいつらの存在自体が周りの迷惑っていうか」
「それを排除する為に、周りに迷惑をかけてどうするんですかあああああっ!」
うああ、ヴィーがキレたあああ!
ジリリリリッ
ガチャ
「……はいはい、何かあったのかい」
『大変です! 本部が襲撃されました!』
「本部に襲撃かい。なかなか骨がある奴がいるねえ」
『それどころか、本部ビルそのものが爆破されました!』
「はあ? それはまた、無茶をしたもんだねぇ」
『事実上のブラッド・マーズ・ファミリーの壊滅ですよ!』
「はいはい、わかったよ」
がちゃん!
「……たく、やってくれたねぇ。あたしが長年苦労して作り上げた組織を、たった数週間で潰してくれたよ」
『息子さんやお孫さんは?』
「息子はビルの崩落に巻き込まれたよ。孫も捕まったねぇ」
『あらら、本当に壊滅だね』
「他人事みたいに言うんじゃないよ!」
『あらら、恨むのは私じゃないでしょ。恨むんならあのガーディアンズチームを恨みなよ』
「……始まりの団だったかね……この落とし前、必ずつけさせてもらうよ!」
明日から新章、火星復讐戦です。




