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EP20 ていうか、だるまさんが……

「ひ、酷い! 酷いですわ!」

「ヒドいのはどっちだよ! 危うく三人そろって圧死させられるとこだったわよ!」


 警察署を脱出してから、私とナイアは仲良くケンカ中。


「ていうか、何で捕まったのよ」


「そ、それが、非常に恐ろしい敵と対戦しまして……」


 非常に恐ろしい敵?


「ワタクシと陛下は、警察署の裏口付近でブラッド・マーズ・ファミリーの幹部がよく目撃される、という情報を頼りに警察署に張り込んでいました」


「……その情報はどこから?」


「街の破落戸です。複数の同じ証言を得ましたから、間違いないですわ」


 裏づけは取ってあるか。


「で、ワタクシと陛下とで張り込みをしていた際……何故か見つかってしまい、陛下は逃げる事も叶わずに捕まってしまいました」


「マ、マーシャンが? 抵抗はしたんでしょ?」


 ナイアは少し震えながら、首を横に振った。


「……いえ……全く抵抗もできずに……」


 ……は?


「抵抗できずにって……ホントに何もしないまま捕まったの?」


「はい」


「……罠に引っかかったとか? それとも複数の相手だった?」


「いえ、罠ではありません。正真正銘、一対一ですわ」


「魔術は?」


「使えませんでしたわ」


「あ、相手に攻撃するくらいは」


「できませんでしたわ。ワタクシも含め、何も抵抗できないまま捕まってしまったのです!」


「……ナ、ナイアですらも?」


「……はい」


 ナイアは小刻みに震えている。どうやらホントのことらしい。


「……となると、相当の実力者ね……」


 相手を捕まえる、ということは案外難しいものだ。罠に掛けるとか、複数で取り押さえるならまだしも、一対一で、しかも無傷に近い形で捕まえるとなると……相当な実力差が必要になる。


「マーシャンやナイア相手にそれが可能となると……まさか院長先生……〝飛剣〟が相手?」


「いえ、どうやら血の四姉妹(フォーシスターズ)とは違うようでした。ブラッド・マーズ・ファミリーの幹部らしいですわ」


「どんな攻撃をしてきたの? 剣? 魔術?」


「……おそらく魔術ではないかと……」


 おそらく?


「ていうか、どんな状態だったのよ?」


 ……ナイアは少しずつ恐怖体験を語り始めた。



「……なかなか尻尾を出しませんわね」


『仕方なかろう。どうやらこの街の警察とブラッド・マーズ・ファミリーは、何かしらの繋がりがあるようじゃからの』


 張り込みを始めて三日目、何も進展がありませんでしたわ。


「……陛下、何か買ってきますわ。欲しいモノはございませんこと?」


『む、そうじゃな……其方の愛が欲しいのう』


「はいはい、お茶で宜しいですわね」


『……そうフラットに流さないでほしいの』


 ワタクシが立ち上がろうとした時、あの強敵が現れたのです。


「あー、お姉ちゃん達みーつけた」


「!?」


 そこにいたのは、十歳くらいの男の子でした。


「な、何か用ですの?」


「用があるからボクはここにいるんだよ」


「そうですの。ですがワタクシ達には用はありませんわ。危険ですし、早くお家に帰りなさいな、坊や」


「……ボクさ、坊や呼ばわりされるの大っ嫌いなんだよね。皆、ちょっと痛い目に遭わせてもいいからさ、さっさと捕まえて」


 男の子が声をあげると、複数の黒服達がワタクシ達を囲みました。


「……貴方……何者ですの?」


「ボク? ボクはショーヤ・ブラッド。ブラッド・マーズ・ファミリーの元締めであるお婆ちゃんの孫で……次期元締めだよ」



「次期元締め。また大物が出てきたわね……ていうか、まさか黒服に?」


「いえ。黒服は軽く片付けましたわ」


「……ま、まさか十歳の男の子に捕まった?」


 ……ナイアは小さく頷いた。



「ぐはあっ!」

 ドサッ


「ふう。準備運動にもなりませんでしたわね」

『手応えがないのぅ』


「……へぇ……ファミリー内の手練れを連れてきたんだけど……凄いね」


「あら、何を他人事のように言ってるんですの? 次は貴方ですわ」

『そうじゃな。ブラッド・マーズ・ファミリーの幹部とわかった以上、見逃す訳にはいかんの』


「え〜、怖いよ〜、仲良くしようよ〜」


 ワタクシ達に迫られても、ショーヤ・ブラッドはクスクス笑うだけでした。そして。


「……?」


 突然後ろを向いたのです。


「今からボクが振り返るまでは動いていいよ。だけど振り返ってった時は動いちゃ駄目だよ」


「『…………?』」


「それじゃいくよ。だるまさんが……」



「サ、サーチ? 何故ずっコケたんですの?」


「な、何でもないわ…………続けて」


「は、はあ……?」



「…………転んだ!」


 ワタクシ達は意味がわからず、お互いに顔を見合ったのです。そして。


「あーあ、動いちゃった。二人ともアウトだね」


 ドササッ


「え、ええ?」

『身体が……動かぬ?』



「……そして黒服達に捕まり、警察署に連れ込まれたのですわ」


「……あー、そっか。なるほどね。あんた達は知らないわけだ」


「はい?」


「何でもないわ。でも少し調べたほうがいいわね……ナイア、一旦引き上げるわよ」


「へ? へ、陛下がまだ捕まってますわよ?」


「いいからいいから」



 ホテルに戻った私達は、ことの次第をヴィーに説明し、ネットで検索してもらう。


「……ありました。それはサイキックですね」


「やっぱり」


「レアサイキックの一つで、ある条件を宣言して、それを破った相手に強力な麻痺を付加する事ができます。回避は不可能です」


「……つまり、その条件を破らない限りは、麻痺状態にはならないってこと?」


「そうなります。因みにですが、起動条件はあくまで『サイキッカーによる条件の宣言』ですので、その条件を耳にするしないは関係ありません。サイキックの範囲内ではサイキッカーの条件は絶対です」


 うあ、めんどくさ。


「但し制限もあります。ある一定の法則が必要なようです」


 制限?


「おそらくショーヤ・ブラッドは『だるまさんが転んだ』でしかサイキックを発動できないのでは。このレアサイキックを持っている者は、そういう制限を持つ者ばかりですね」


 ふーん……つまりは、だるまさんが転んだで勝てばいいわけか。


「オーケー。ヴィー、ありがとね」


 ブレードを装着すると、外へ向かう。


「サ、サーチ?」


「そいつは私が何とかするわ」


「何とかするって……正気ですか!?」

「あのサイキックにはつけ入る隙がありませんわよ!」


 ヴィー達にはそうなるか。でもルールを把握してる私には、そのサイキックは穴だらけだ。


「あ、二人にも来てもらうわよ」


「「は?」」


「このゲームはね、二人だけじゃ成立しないのよ」


「……??」

転んだ!

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