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EP11 ていうか、ナイアの奮闘?

「ひ、人食い花ですのおおおおっ!?」

 ぶおんっ! ごげっ!


 サイ・ハンマーを振り回して花をブッ飛ばす。


「ああ〜……流石に細胞膜じゃなく細胞壁なだけあって、丈夫だわね〜」


 ブッ飛ばされても平気そうな人食い花は、仕返しと言わんばかりにナイアの足を触手で掴み、ブンブカ振り回す。


「ひぁぁぁぁっ! ひぁぁぁぁっ!」


 ハンマー投げ並みに振り回して遠心力をつけると。


 ぶぅぅぅん!

「あひいいいいいぃぃぃぃぃ〜〜〜…………」


 上空に向かって放り投げた。


「……何がしたいのかしら?」


「…………ぃぃぃぃぃいいいいい!!」


 墜ちてきたナイアの落下点には、大口を開いた人食い花……って、ブン投げて獲物の抵抗力を無くしていたのか!


「はああああっ!」


 両手の小手にブレードを作り出し、回転しながら突っ込む!


「秘剣・新≪竹蜻蛉≫!」

 スパパパパパン!

 ……ドサッ バラバラ……ズズン!


 触手と口がある花の部分を斬り落とす。


「いいいいいあああああ!」

 どずぅぅぅぅん!


 ナイアが地面に激突したけど気にしない。


「ヴィー、マーシャン! 炎で焼き払って!」


「え? あ、はい! ≪聖火弾≫ホーリー・ファイアバレット!」

『うむ! ファイアバレット!』


 ヴィーのアンテナから、そしてマーシャンの砲身から炎が飛び出す。


 ズズン! ゴオオオオオッ!

 ぴぎゃああああああ!


 炎に巻かれた人食い花は、断末魔の叫びをあげる……っていうか、植物も叫べるのね。


「……サーチ、何故焼き払う必要があるんですか?」


「さっきも言ったけど植物には細胞壁があるから、意外と丈夫なのよ。しかも多少斬ったくらいじゃ死なないし」


『となると焼いてしまうのが一番じゃな』


「わかりました。植物系のモンスターが出た場合は、即焼き尽くすようにします」


「多分だけど、氷系にも弱いと思うわ」


「…………ねえ、サーチ姉。ナイア姉が動かなくなったけど」


 ……あああ、忘れてた!



「ひ、酷い目に会いましたわ……」


 さんざん振り回されたあげく、上空に投げ飛ばされてそのまま地面に激突だからねぇ……。


「ていうか、あれだけの衝撃でかすり傷だけのあんたも驚きだわよ」


「地面に激突する寸前に魔力で衝撃を緩和しましたわ」


 き、器用ね。


「流石は月の魔女。魔力操作はお手のモノですね」


「? ヴィーにはできないの?」


「できません。おそらく陛下でも難しいのでは?」


『無理じゃな』


 そ、そうなの?


「月の魔女は月魔術にばかり目がいきがちですが、一番恐ろしいのは繊細な魔力操作です」


『魔力操作に長けておる故に、攻撃にも防御にも最小の魔力で最大の威力を発揮できるのじゃ。近距離戦が得意なのもそれが要因じゃよ』


「そ、そうなの?」


「そのようですわ。半ば無意識ですけど」


 無意識でどえらいことやらかしてたのね……。


『おまけに魔素を直接取り込めるからの、魔力の枯渇はあり得ない……まさに無敵じゃな』


「ていうか、ナイア最強?」


「……でもありませんわ。サイ・ハンマーが通用しない相手には、それだけで詰みますもの」


 ああ、今の植物みたいな。


「ま、だったら私達がフォローすればいいのよ。そのためのパーティなんだから」

「そうですよ、ナイア。逆に私達がナイアに頼る事もありますから」

「うんうん、ナイア姉に頼りきる」

『パーティの絆も良いモノじゃな』


「皆さん…………わ、わかりましたわ。その時は全力でサポート…………う」


 う?


「う…………お、お【見ちゃイヤン】ええ!」


「うひゃあ! い、いきなり何よ!?」


「あ、そういえば、ぐるぐるぐるぐるでしたね」


 ……あ、振り回されてたヤツ!? あれで酔ったの!?


「おげ【見てはいけない】ええ!」


 ……ナイア……あんた、吐きキャラになってきてるわよ……。超美人でスタイル抜群なだけに、ギャップが凄まじい……。



 ナイアが回復するのを待って、私達は歩き始めた。


 きしゃああ!

 スパン!


 小型のリスみたいなモンスターがちょくちょく襲ってくるけど、ブレードで瞬殺する。


「……サーチ、随分癖のある武器になってしまいましたね」


「そうね。流石に前世でも使ったことがない武器だけど、伸縮は自在だから案外便利よ」


 とはいえ、攻撃方法もクセがありまくりだから、自由になった両手の使い道も考えておかないと。


 きしゃああ! メキメキメキメキ!


 あ、最初に遭遇した人食い花。


「どうする、ナイア。リベンジする?」


「したいのは山々ですが、時間がかかりますわよ」


 ヴィー達を見てみるが……何も言わない。ならいいか。


「ナイア、君に任せた!」


「きゅ、急になんですの!? まあ、任されますけど」


 ナイアはサイ・ハンマーに股がると、人食い花に向かって飛んでいく。


「ほらほら、こちらですわよ!」


 高速飛行するナイアを追って、無数の触手が殺到する。


「捕まえられるなら捕まえてみなさい、ですわ!」


 四方八方から襲ってくる触手を華麗に避ける。


「さっきぐるぐる振り回されて吐きまくってた人と同じとは思えないわ! がんばれ!」


「声援は有り難いですが一言余計ですわよ!」


 高速で人食い花の周りを回転するナイアを追ううちに、触手は己に巻き付いていき……。


 き、きしゅあああ!


 結果的に自分を雁子がらめにした人食い花は、身動きが取れなくなる。


「よし、狙い通りですわ!」


 地上に降りると、サイ・ハンマーに魔力を集中させる。


「はああああ! ブッ飛びなさいませ!」


 ばがああん!


 アッパー状にハンマーを振り上げ、人食い花を打ち上げる。


 どしゅん!


 それを追ってナイアは高速で上昇する。


 ばがああん!

 どしゅん!

 ばがああん!

 どしゅん!


「……だいぶ上空に行きましたね」


『どうするつもりじゃろな』


 ……たぶん……。


 …………ぅぅぅぅぅううううう


 あ、人食い花が墜ちてきた。


 うううううううう! どぐゎあああああああん!


 これは…………見事に木っ端微塵だわねぇ。


「成程、意趣返しですか」

「それだけ根に持ってたわけね」

「ナイア姉、要は仕返ししたかっただけ」

『そうじゃろな』


 しばらくして「やってやりましたわ」感ありありで、満面の笑みを浮かべたナイアが降りてきた。


「どうでしたか? 華麗な意趣返しですわよ?」


「「「『はいはい、スゴいスゴい』」」」


 みんなのやる気のない声が重なった。

大人気ないナイア。

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