EP5.75 ていうか、リジーにお仕置き。
ヴィーのおかげで無事に依頼を済ませた私達は、キュアガーディアンズ支所へ達成報告をしに出向いた。
「では達成されたご本人が前に出てください」
ヴィーがカウンターに進み出る。
「はい、失礼しますね……是か否か答えよ、≪審査≫」
受付嬢がヴィーのアンテナに手をかざすと、何らかの情報のやり取りが行われる。
「はい、確かに討伐されていますね。破落戸の件に関してはやむを得ないと思います」
「……ゴロツキ?」
「ええ。サーチが睨んだ通り、依頼の横取りを企んだ連中が来まして」
……なるほど。
「以前から問題視されていたパーティでしたので、全く問題ありません。正当防衛と見なし、不問と致します」
……ヴィー、殺っちゃったのね。
「それでは始まりの団の依頼達成報告を受理し、報酬をお支払い致します。ガーディアンズカードをお願いします」
私がカードを渡すと、コンビニのレジにあるピッとする機械を使う。バーコードリーダーっていうのかな。
「はい、OKです。それと先程の不届き者の件に関しまして、ガードオーナーから追加報酬が出ています」
…………?
「ガードオーナーって?」
「………………はい? ガードオーナーはガードオーナーです。キュアガーディアンズ支所の責任者じゃありませんか」
「あ、ああ、そうだったわそうだったわ。ちょっとド忘れしてた」
……要はギルドマスターってことか。
「ていうか、追加報酬? ギルマス……じゃなくてガードオーナー直々に?」
「はい」
「……わかったわ。ガードオーナーには謹んで拝領します、と伝えておいて」
「わかりました」
……口止め料か。確かにキュアガーディアンズの面汚しだしね。
「それじゃ、ありがと」
「いえいえ。では次の方どうぞー」
いつの間にか私達の後ろには長蛇の列ができていた。少し時間がかかっちゃってごめんなさい。
「……おい、あれって……」
「間違いない、〝闇撫〟だ」
チラチラ見てくる連中を一睨みして黙らせる。
「こ、怖……くわばらくわばら」
「流石……あの格好で町を練り歩くだけはある」
ちょっと、どういう意味かしら? 問い質そうとする私を、ヴィーが引っ張っていった。
「ギルドと同じなら、支所で揉め事を起こすと罰則事項のはずですよ」
……ちっ。闇討ちリストに登録……に留めておくか。
「うは、結構入ってるわ。ここのギルマス……じゃなくてガードオーナー、太っ腹よ」
「それはそうでしょう。ある意味目の上のたん瘤だったのでしょうから」
明確に規則違反してるわけじゃないから、なかなか処罰できなかったらしいし。
「どこの世界にもいるのよね〜、そういうヤツ」
ま、おかげで懐が温まったんだけど。
「とはいえ、また同じように使えば一気に破産だから、今回は簡易宿泊所を有効活用して、切り詰めていきます」
「わかりました」
「当然ですわね」
「うい」
……おっとっと、このまま流すところだったわ。
「リジー」
「何?」
「弁明する機会は与えてあげるわ。あのエステは何だったの?」
「え? え〜っと……ヴィー姉ヘルプ」
「正しき裁きを望みます」
「え……ナ、ナイア姉」
「厳正な処分を望みますわ」
「え……えっと……」
「では判決。陪審員、評決の結果は?」
「有罪」
「有罪」
「よって被告人リジーは有罪。一週間強制的にブラトップショーパンの刑に処する」
「え゛」
「というわけで……剥いちゃえ♪」
「「おー♪」」
「え、ちょっと!? こんな往来で……いや、いや、いやああああああああっ!!」
「サ、サーチ姉……」
「何よ」
「寒いよ〜〜……」
「いいじゃないの。せっかくエステでツルピカになったんだから、みんなに見てもらいなさいよ」
ブラトップのみは断固として拒否したため、ヘソ出しTシャツに変更。それでもサイズは大きめを選択したので、胸の谷間は強調されまくりだ。
「大丈夫ですよ、リジー。サーチと並んでいれば、そこまで目立つモノではありません」
「そ、そういう問題ではないと思われ! ヴィー姉も着てみればわかる!」
「いいですよ。私は全然抵抗がありませんので」
「え…………あ、そうだった」
ヴィーは露出にあんまり抵抗がないって、リジーも知ってるでしょうに。
「な、ならナイア姉」
「ワタクシも抵抗ありませんわ。自信があるのなら見せなくては損ですわよ?」
確かにナイアの魔女っ子スタイルは、素足剥き出しの超ミニに、胸の谷間ガバッのストラップレスだ。
「う、うぅ〜……」
「あら、そんなに恥ずかしがるという事は、リジーは余程体形に自信がないのですわね?」
流石のリジーも、ナイアのその言葉には反応した。
「そ、そんな事はないと思われ! 括れでは負けるけど、バストサイズならサーチ姉に」
「バストサイズが? 私には? 何だって?」
「え…………あ、う、その……ま、負けずとも劣らずだと思われ」
……うまいこと逃げたわね。
「でしたら恥ずかしがる必要はないでしょう? 折角の武器ですもの、アピールすべきですわよ、アピール」
「……アピール……」
リジーはしばらく考え込んでいた。
「…………」
「…………」
「…………ねえ、リジー」
「何?」
「目の前をうろちょろしないで。うっとうしい」
「うぐ……わ、わかった」
たく。何がしたいのやら。
「…………」
「…………」
「…………ねえ」
「何?」
「何でさっきから私の前で屈み込むわけ?」
「…………何でだろう」
ギター片手に踊る気か。
「止めて、うっとうしいから」
「うぐ……」
……たく。何だってのよ。
「…………」
「…………」
「…………あのねえ……」
「何?」
「何で私の前で胸の谷間を強調してくるわけ?」
「えっと…………アピール?」
「アピール?」
「そう、アピール。サーチ姉、大きい胸が好きだから」
ぶちぃ
「サ、サーチ姉?」
「…………確かに好きだけどね…………大きい自分の胸が好きなんだよっ!」
「ええっ!?」
「何で人様のデカい胸見て私が喜ぶのよ! そんなことされたって、単なるイヤミでしかないじゃない!」
「え、あの、そういうつもりじゃ」
「何か、私のほうが大きいぜ〜っていうアピールか? そういうアピールか?」
「い、いや、じゃなくて」
「あーあー、どうせ私が勝てるのはリルとエカテルだけだよ!」
「そ、その通りだけど」
ぶちぶちぃ
「……何ですって?」
「へ? あ、しまった、本音がつい」
ぶっちぃぃん!
「闇に撫でられ狂い死ねぇぇぇぇぇぇっ!!」
「うぎゃあああああああああああああっ!!」
「……リジーも『口は災いの元』って言葉、ちゃんと理解すべきですわね」




