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第三話 ていうか、日焼けを見せ合ってキャッキャウフフ。

「サーチ……真っ黒になったな……」


 夜。

 甲板での日焼けの跡を見せあっていた。

 私は基本的に部屋では裸族なので、誰よりわかりやすい。しっかりとビキニラインがついていた。

 ていうか、最近リルがうるさいので、下だけは履いてるけどね。


「まあ私は焼けやすい質だから……リルはどう?」

 ぐいっ

「ニャッ! いきなりなんだ!」

 ぱごっ!

「つぅっ……! ちょっと、いきなりグーパンはないじゃない!」

「それを言うなら、いきなり人のシャツをめくり上げるほうがおかしいだろ!」

「そ、それは悪かったわ……」

「まあ、サーチが謝るなら……私も殴って悪かった」


「す、すごい! サーチもリルも謝れるようになったんでひゅへ……いひゃーい!」


「……エイミアにだけは言われたくないわ……」


 私がエイミアの頬っぺたを引っ張っていると。


「……それに関しては私も同感だな……」


 リルが耳を引っ張りだした。


「いひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」


「ねえ、エイミア……悪いことをしたのなら」

「謝るのが筋ってもんだよな?」


「いひゃい! いひゃい! いひゃい! ひょへんひゃひゃい!」


「……サーチ、何を言ってるかわからねえから離してやれ」


 確かに。


「いひゃいいひゃい痛い痛いごめんなさーい!」


「……わかればいいんだよ」


 リルが手を離すと、エイミアは耳と頬っぺたを器用に両方おさえた。

 ……そういえばエイミアも、あの後日焼けしてたはずよね……?


「エイミア、ちょっとごめんね」

「きゃっ!」

「あれ? こっちは?」

「ちょっ……!」

「? 何で焼けてないの……? ほげっ!」


 ……痛い……。


「サーチ、いい加減にしてください!」


「いたた……な、何よ! ちょっと日焼けの跡見ようとしただけじゃない!」


「いきなりスカートめくってシャツめくってブラずらされれば誰だって怒ります!」


 ……確かに。ごめんなさい。


「もう……! 私はあまり日焼けしないタイプなんです!」


 さいですか。


「そういえば……マーシャンはどうしたんですか?」


 ……ああ、エイミアは知らなかったっけ。


「私の部屋に立て籠ってるわ」


「え? 何でですか?」


「ああ……昼間からかったからいじけたのか」


「違う違う。マーシャンは日焼けすると真っ赤になってヒリヒリするタイプらしくて」


「なるほど。私達に『触るな!』って言いたいわけか」


 私達のことをよくおわかりで。


「それは心外です! 私はそんな事しません!」


 でしょうね。

 あんたは善意で(・・・)傷に塩を塗り込むタイプだからね。

 私達は悪意で(・・・)やるから……。


「……おい。私はお前と違うからな。()に入れるなよ」


 それこそ心外だ。


「つれないこと言わないでよ。ちょっと前に寝てるエイミアのバストサイズ測った仲じゃない」


「なっ!?」


「リ、リル!?」


 両手で胸を隠しながら、リルから離れていくエイミア。


「ばっ、ちげーよ! エイミアのブラ、洗濯したときに失くしちまったから、弁償しようと……サーチ! お前が協力してくれるって言うから……! ……て、どこいったサーチ!」


「リ〜ル〜!」


 バチ……バチバチ……


「だ、だからちょっと待て! 誤解だって」


 バリバリバリ!

「ニャニャニャニャニャニャニャニャ!!」



「……危ない危ない」


 さて。部屋に戻って寝ますか……。


 バタバタバタ


「おい! 早くしろ!」

「あるだけ持ってこい!」


 ん?


「どうかしたの? モンスター?」


「はあ? ……あ、トップレスの姉御でしたかぎゃひい!」


「誰よそんな呼び名つけたの!!」


 股間をおさえてのたうち回る水夫さんに聞く。


「……船長が……ちょっと待って待て待て待て! お前何する気だ!?」


「え? 船長さんの【いやん】を潰そうかと」


「止めてくれ! 船を動けなくする気か!?」


 船長さんいなくても動くでしょうに……まあ仕方ない。


「じゃあ港についてからで」


「…………来年定年の爺さんを今さらおネェにはできないだろ……」


 いいじゃない。なかなか他にはない老後になるわよ?


「……て、それよりも! 一大事だったんだ!」


「あ、そうだったわね。話が逸れたわ……何があったの?」


「そういやあんたら冒険者だったな! 頼むから協力してくれ!」


 そう言って走り出した。


「……人魚の巣だ!」



「……マーシャン! すぐに出てきて!」


 ドアをドンドン叩いていると。


「……何ですか、サーチ」

「……てめえ……やっと見つけたぞ」


 まだパリパリと静電気を纏ったままのエイミアと、黒焦げのリルが隣の部屋から出てきた。


「二人ともちょうどいいわ! すぐに甲板に行って! 私もマーシャン引っ張り出したら行くから!」


「……何かあったのか?」

「モンスターですか!?」


「もっと悪いわ。人魚の巣が近づいてきてるらしいの」


「人魚の巣!? 大変じゃないですか!」

「相手はガッチガチの水属性だから、エイミアは相性いいはず。悪いけどエイミアメインで私達はサポートで行くわ!」

「わかりました!」


 周りの喧騒から外れてリルが困っているっぽい。


「リルもお願い!」


「あ、ああ……おい、人魚の巣って……?」


 え? あ、そっか。


「リルは森育ちだから知らないか」


 私はリルに走りながら説明する。



 人魚の巣。

 あまり人間の害にはならない海のモンスターの中では、数少ない船の天敵。

 その外見は巨大な岩。それが海の中を進んでくる。

 そして名前の通りに、無数の人魚を吐き出す(・・・・・・・)

 巣本体が船に体当たりして沈め、吐き出された人魚が人間を捕まえて巣に持ち帰る。

 当然、巣にお持ち帰りされた人間が生きて戻ることは……まず、ない。

 海で一番恐れられている人魚の巣は、謎だらけのモンスターなのだ。

 ちなみに謎だらけということは、倒す方法も不明である。



 説明してる間に甲板に到着する。

 甲板では樽爆弾を次々と海に投げ込んでいた。人魚への攻撃方法としてはもっともポピュラーだ。


「船長! 女の冒険者がいましたんで! 協力してくれるそうっす!」


「おお、そうか! では頼めるか?」


 船沈められちゃたまんないし。やりますか。


「あっちにいるぞ!」


「今ならちょうど浮かんできてますぜ!」


 フォーメーション変更! 私とマーシャン攻撃要員、エイミアとリルで守備要員!


「エイミア、リル! 出てきた人魚を叩いて! 私とマーシャンで直接攻撃(・・・・)するから!」


「はあ!? 人魚の巣をか? 確か倒す方法は見つかってないんじゃ……」


「倒せないわ。ただ動かなくする(・・・・・・)方法はある!」



 人魚の巣には二つの特徴がある。

 一つ、なぜか女性には手を出そうとしない。エサとするのは全て男性。

 二つ、人魚の巣はそもそも生物ではなく、巣内部の巨大な浮遊石によって移動している。

 つまり、内部に入り込んで浮遊石を破壊すれば、行動不能にできるのだ。


「マーシャン、行くわよ!」

「……仕方ないのう」

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