EP12 ていうか、尋問尋問♪ 楽しいな〜♪
海賊船の内部を徹底的に家捜ししたけど、アジトの場所を示すモノは見つからなかった。
「ヴィー、航行記録から辿れそう?」
ピッ ピピピッ ブーッ、ブーッ
「……駄目ですね。おそらく生体認証をしないと見られないようになっています」
クソ、海賊のくせにガードが硬いわね。
「サーチ、あの鉄人形の方からは聞き取れませんでしたの?」
「かなりの手練れでさ、殺すので精一杯。生かして捕らえるなんて、とてもとても……」
生かしたままってのは、殺すのよりも数倍難しいのだ。
「弱りましたわね……こんな事でしたら、雑魚の方を一人くらい生かしておくべきでしたわね」
三人でウンウン唸ってる後ろで、非常に困っている人がいた。貨物船の…………何て名前の船だっけ……まあいいや、貨物船Aの船長さんである。
「あ、あの〜、私共はそろそろ失礼したいのですが……」
あ、忘れてた。
「ごめんなさい、少しだけ話を聞かせてもらえない? 一応あなたの証言も連合宇宙軍に提出しなくちゃいけないし」
アジトはわからなかったけど、海賊行為を行っていた証拠はバンバン出てきた。あとは被害者である船長さんの証言があれば、裏付けも十分だろう。
「も、申し訳ないのだが、船員が一人重傷でしてな、至急病院へ連れていかねばならんのです」
重傷? そりゃ大変。
「なら仕方ないかな……」
「サーチ、良ければ私が診ましょうか?」
あ、ヴィーなら大丈夫かも。
「船長さん、ヴィーは聖じゅ……じゃなくてサイキッカーでして、特に回復が得意なんですよ」
「おお、サイキッカーの方でしたか。ならばありがたい、早速診ていただけませんか?」
ヴィーは頷くと、船長さんに付いていった。
「…………」
「どうかしまして、サーチ?」
「…………いや、急病にしてはタイミングが、ねぇ……」
「確かに……絶妙なタイミングですわね。まるで船長の証言を拒みたいかの様ですわ」
……気になったので、ヴィーのあとを追うことにする。
「ナイア、とりあえず船に戻ってて。貨物船に動きがあったら、すぐに知らせて」
「わかりましたわ」
私が着いたころには、ヴィーが回復を始めているところだった。
「い、いてえ! いてえええよお!」
……こいつ……。
「ど、どうですかな、サイキッカー殿!?」
両手をかざして≪回復≫をかけるが……ヴィーは手応えを感じていないようで、微妙な表情をしていた。
「……本当に胸が痛いのですか?」
「い、いてえ! 死ぬほどいてええ! は、早く何とかしてくれええ!」
一生懸命≪回復≫をかけつつも、怪訝な顔をして首を捻るヴィー。
「ヴィー、どうしたの?」
「……おかしいです。何も手応えが無いのです。本当に、本当に痛いんですか?」
「お、俺を疑うのか!? お前がヘボなんじゃないのか!」
私は手甲剣を出すと、苦しんでいる男の肩に突き刺した。
「ぎゃあああああ!」
「なっ!? い、一体何を!?」
船長さんの抗議は一切無視。
「ヴィー、治してあげて」
「はい」
再び≪回復≫。すると刺し傷はみるみる塞がっていく。
「なっ!?」
「というわけで、ヴィーの腕は確かです。あんた、ホントに痛いの?」
「い、痛いもんは痛いんだよ!」
「船長さーん、この船員って長いの?」
「いや、数ヶ月前に雇ったばかりだ」
「……へぇ〜……」
「い、痛い痛い! 腹が痛いいい!」
「あら、胸じゃなかったの?」
「りょ、両方痛いいい!」
半分ボロを出したようなもんだけど、もう少し付き合ってあげるか。
「あらら、大変。痛みのあまりショック症状を起こすかもね。こういう場合は」
ドスッ!
「があああああああああああっ!!」
「他の痛みで紛らわせるのが一番ね。さっきは肩で、今は左太もも」
ドスッ!
「うぎゃあああああ!」
ザクッ! ドスッ!
「あが、ぎゃあああああああ!」
「よーし、これだけあちこち痛ければ、腹と胸の痛みも紛れたでしょ。一旦治してあげて」
「はい、≪回復≫」
「ぐあ……あ……」
「さーて、まだ治療が必要かしら? もっっと強い痛みじゃないとダメかしら?」
「や、止めてくれ! わかった! 腹なんか痛くない! 仮病だ! 全く痛くないんだあああ!」
はい、ゲロった。
「そうなの? なら何で痛い振りをしてたのかしら?」
「そ、それは…………」
「あらあら、まだお腹が痛いの? これは緊急手術しないとダメかしら〜…………麻酔無しで」
「ぎゃ!? か、勘弁してくれ! 全部話す! だから止めてくれえええ!」
結局海賊の手下だったことが判明した。手下を襲う船に潜り込ませて、内側から手引きするのがこいつらのやり方らしい。
「あとはあんた達のアジトね。どこにあるの?」
「い、言えねえ! 言ったら俺が殺される!」
「今言わないと、どっちにしても死んじゃうけど?」
目の前でブレードの刃を伸ばしてみせる。
「ひっ!? …………や、やっぱ言えねえ。家族がいるんだ!」
「あら、そうなの? だけどこの船の船員さん達にだって家族はいるわ。その人達のこと、考えたことある?」
「そ、それは……」
「記録によると、あんた達は襲撃した貨物船は必ず撃沈してるそうね?」
「…………」
「一番高く売れるはずの船を沈めてるんだから、足がつかないように慎重に仕事してたのよね。だったら、目撃者は全員消している……と考えるしかないわね」
事実、この海賊に襲われた貨物船の船員は、全員行方不明になっている。
「皆殺しにしてから船を爆破したか、生きてる状態で撃沈したかは知らないけど……そんな連中に『オレニハカゾクガー』なんて語る資格があるのかしら?」
「だ、だったら殺せばいいだろ! こうなったら絶対にしゃべらねえからな!」
「あっそう。ならM-57居住艦ごとあんたの家族を木っ端微塵にしてあげるわ」
「な……か、家族は関係ないだろうが!」
「あ、そうなんだ。M-57居住艦に家族がいるのね」
「…………へ?」
「いやさ、この場所から一番近い居住艦は二つ。そのどっちかに家族がいるのかなー、と思って、適当に言ってみただけなんだけど」
「…………はい?」
「で、家族がどこにいるかわかった以上、あんたの家族をこちらも人質にとれるわね」
「…………ぐぁ」
「さーて、私達はキュアガーディアンズの看板を背負っている以上、あまり手荒なマネはできないのよ。だから人質じゃなく、保護することになるわね。無論、有益な情報を教えてくれるであろうあんたも含めて」
「…………」
「さて、これでファイナルアンサーよ。私達に情報を吐いて家族と自分を守るか、海賊に忠義立てて自分は死んで、家族の無事を確認できなくなるか……どっちがいい?」
「…………………………わかった、全部話す。だけど……家族は必ず保護してくれよ?」
「もちろん」
テレフォンを起動し、紅美を呼び出す。この海賊の家族を保護してもらうために。
これは拷問という。




