EP4 ていうか、母艦って何なのよ……?
『もうすぐ母艦に到着する。艦橋に来てみい』
自分の部屋でウトウトしていたらマーシャンの声で起こされ、急いで部屋を出る。
『ちょっと待てぃ! サーチ、せめて服くらい着てこぬか!』
「へ? いつも通りじゃん?」
『自分の部屋以外はカメラが付いておる。下手すれば母艦に中継されてしまうのじゃ』
「ちょっと待ってよ! 何で私のプライベートが生中継されなくちゃならないのよ!?」
『例え話じゃよ。どちらにせよ、艦橋に居る時は高確率でオペレーターに見られるの』
うぐっ。それはマズいか。私はスゴスゴと自分の部屋に戻った。
プシューッ
「あ、サーチおはよう」
「おはよう。着いた?」
「あと一時間くらいです。今は帰還する船が重なってるそうなので、この場でしばらく待機するようにと」
「そっか」
席に座りながら髪をセットする。
「結構伸びてきたな〜……おもいきって切っちゃおうかな」
私の一人言を聞いたヴィーが、血相を変えて私の後ろに来た。
「それは絶対に駄目です。私が許しません」
「何で!? ていうか、髪形は私の自由じゃん!」
「いえ、サーチの髪形を整えるのは、私の朝一番の重要な仕事ですから」
勝手に自分の必須項目にしないでくれるかな!?
「できなくなると私の一日のテンションに激しく影響します」
そこまで重要なの!?
「私のルーティーンなんです。どうかご協力を」
……ま、いいけどね。確かに毎朝の習慣だし、ヴィー以外には髪を構われたくないし……。
「何でしたら髪形を変えてみますか?」
「……何に?」
「そうですね〜……ツインテ」
「止めて。それだけは止めて」
完全にネタ化しちゃうしから。
「そうですか。ならいつも通りのセ○バーヘアーですね」
セイ○ーヘアーって……要はアップするのね。
「……毎回やってくれるのはありがたいんだけどさ、その髪形ってめんどくさくない?」
「いえいえ、遣り甲斐がありますよ」
その割にツインテ薦めてきたよね? 少しめんどくさくなってきてるよね?
「…………はいっ!」
キュッ
「あだだだだだだだだだだだだっ!?」
「すみません、少し強かったですね…………はい、できましたよ」
……うん、いつも通りのセ○バーヘアー。
「ありがとう♪」
「いえいえ…………これも妻の務めですから」
「ん〜? 何か言った?」
「いえ、何でもありません」
……ま、いっか。怖いから流しておこう。
「リジーとナイアは?」
「まだ起きてきてません。陛下が声を掛けられてるはずなのですが……」
『……駄目じゃ。≪電光弾≫でも放たんと無理じゃの』
流石に≪電光弾≫はマズいっしょ。
「……マーシャン、私の声を二人の部屋に中継できる?」
『簡単じゃぞ』
「じゃあ今からお願い」
『おーけーじゃ』
「では…………ちょ、ヴィー!? 何をするの、ここは艦橋よ! あ、そんな、昼間っから……あ、止めて止めて止めて!」
……どこかで何かが落ちた音が響く。たぶん二人ともベッドから転げ落ちたのだろう。
「……ヴィー、私の髪を適当に弄ってて」
「へ? は、はい」
ヴィーは私の前髪をブラシで梳かし始める。
……ダダダダダダダ!
「サ、サーチ姉……あれ?」
「ヴィーさん、一体何を……なさって……?」
「二人ともおはよう。どうしたの?」
「……へ? ヴィー姉が……何かしたんじゃ?」
「何かしたって……髪をセットしてもらってるんだけど? ねえ、ヴィー。そうよね?」
「え、ええ。私はサーチの髪をセットしていただけです」
うん。事実だし。
「で、でも何か声が聞こえて……」
「ワ、ワタクシもですわ」
「へ? 知らないわよ……マーシャンは何か言った?」
『いや、知らんのう』
「……ていうか、あんた達寝ボケてたんじゃないの?」
「そ、そんなはずはないと思われ!」
「そうですわ! はっきりとサーチがヴィーさんに襲われている声が……」
「だーかーらー、私はヴィーに髪をセットしてもらってただけだって。ねえ、ヴィー」
「は、はい、間違いないです」
「ねえ、マーシャン?」
『間違いないの』
事実だし。
「……あんた達、エッチな夢でも見たんじゃないの? 勝手に私を登場させたりしないでよ?」
「そ、そんな事はしてない…………と思われ」
「ワ、ワタクシもしてませんわ! …………稀にしか」
稀でもやってるんかい!
「それより二人とも、早く着替えてきなさい。もうすぐ母艦に着くわよ」
「は、はい」
「わ、わかりましたわ」
二人は首を傾げながら部屋に戻っていった。
「……たく。二人揃って私を夢の中でナニしてるんだか……」
『お陰で起きたわい。礼を言うぞ』
「あー、気にしないで。私も面白かったから」
「…………サーチ、夢の中に貴女が出てくるのは、二人の場合はストレスが原因おぐぅ!?」
じゃかあしい!
「うっわー、デカいわねぇ……」
『あれがキュアガーディアンズの本拠地、艦隊先導艦「ギルディア」……通称が母艦じゃ』
「……マーシャン、妙に詳しくない?」
『この船のメモリーに基本的な情報がインプットされておる。どうやらワシは其方らの先導役も兼ねておるようじゃの』
な、なるほど。チュートリアル省くためか。
「それとギルディアって名前が気になるわね。要はギルドってこと?」
「可能性はありますが……しかし地球にギルドなんてありますか?」
「無いわよ。ある必要性も無いし」
「……でしたら、何故ギルドが?」
知らないわよっ。
『それよりサーチ、母艦に連絡せい』
「へ? 私が?」
『先程は仮にワシが連絡したが、本来はリーダーであるサーチが連絡をしなければならぬ規則なのじゃ』
そ、そうなんだ。なら……。
「マーシャン、通信繋いで」
『らじゃあじゃ』
すると目の前の画面にオペレーターの顔が……って。
「何だ、紅美か」
『……何だ、は失礼ですね。折角スタンバってたのに』
「はいはい、ごめんなさい。じゃあ……えっと……」
マーシャンがカンペを見せてくれた。
「キュアガーディアンズ所属の始まりの団、任務が完了しましたので、これより帰投します」
『えっと……りょ、了解。帰投を許可します。ちょうど空いていますので、今のうちに専用ドッグへ行ってください』
「はーい……ん?」
画面の角に手紙マーク。メールか。
『それでは後ほど。報告書は明日までに提出願います』
紅美に手を振って返事すると、メールを開いた。
『後で会いましょう。詳しくは夕方に』
はーい。
『よし、ドッグに向かうかの。全員シートベルトを』
時代は進んでもシートベルトは健在!
『……む? 少し止まるでの。他所の船が来たわい』
ま、混雑してるみたいだから仕方ないか。
『む? サーチ、其方宛てに通信じゃぞ?』
「私に?」
『向こうの船からじゃ』
向こうの? この世界に知り合いなんていないわよ?
「まあいいわ。繋げて」
『うむ』
『…………サーチ! サーチですサーチですサーチですよぉぉ!』
『お、落ち着けエイミア!』
『サ、サーチさん、お久し振りです』
「あ、あんた達は……!」
エイミアにリルにエカテル!?
リル達と合流。