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EP1 ていうか、ゲームの世界……?

 時は2020年。人の生活の場は宇宙へと広がっていた。

 人々は当たり前のように宇宙旅行に出掛け、軌道エレベータによって自由に宇宙と地球とを往き来する。現在の流行りは月で結婚式を挙げる事である。

 惑星改造「ニュー・シャングリラ計画」も開始され、増えすぎた人類は太陽系の惑星を第二の地球にしようと躍起になっていた……そんな時代。

 少数ながらも企業・個人単位で宇宙船を駆るようになってくると、宇宙空間においても様々なトラブルが起きるようになった。密輸や人身売買といったような国際犯罪は宇宙へと舞台を移し、広大な暗黒空間を隠れ蓑に盛んに行われるようになったのである。自然と宇宙空間に犯罪結社が出来上がり、やがて「ブラッディロア」という超巨大組織へと変貌する。

 犯罪組織の台頭に危機感を覚えた国連は、各国の宇宙軍を統合し「国際連合宇宙軍」を結成し、ブラッディロアに対抗した。

 犯罪結社と国連軍との争いによって混沌とした状況下で、さらに宇宙海賊や小さい犯罪組織も活動を活発させ、急激に治安は悪化した。そんななか、必然的にある組織が誕生した。それは爆発的に増えた犯罪に対処しきれなくなった警察に代わり、民間において犯罪者に対抗するべく生まれた民営化警察組織「キュアガーディアンズ」である。

 彼らの活躍によって無法地帯と化していた宇宙空間は、仮初めではあるが均衡がもたらされたのだった。

 ……そんなキュアガーディアンズに、一人の新人が入隊する。誰もが知るよしもない未来の英雄の第一歩が確かに刻まれたのである。

 それが君、「」なのだ……。



「……で、「」内がプレイヤーの名前ってわけなんだけど……」

「「「「……はい?」」」」


 ですよねー。意味わかんないよねー。私だって少しかじった程度でしかないんだから、こっちの世界に慣れてないヴィー達には余計にわかるわけないよねー。


「ここはね、ゲームの舞台そのモノなのよ……」



 私達は結局エセ神を阻止するのに失敗したのだ。本体であった右足(アカデミア)を弱らせて主導権を握ることが真の目的だった、というアカデミコの企みに気づくことなく。

 アカデミコが何をしたかったのか、今となってはわからない。ただ結果として、私達はゲームの世界にいるのだ。


「ちゃんとゲームに登場する衣装や武器になってるし……」


 私はそんなに変わらない。いつものビキニアーマーに……何だろう、腕に小手みたいなのが着いている。


「わ、私は頭の蛇が……」


 最も外見が変わったのはヴィーだ。頭の蛇はサラサラの髪の毛に代わり、髪飾りから数本の触手みたいなのが伸びている。見た感じはアホ毛っぽい。服装はいつものローブが近未来化した感じ。


「な、何かゴツゴツしてる」


 リジーも大きく変化している。某巨大ロボのようなメカちっくな装備を纏い、腰には刀の柄みたいなのが二本差してある。


「ワ、ワタクシのホウキが! ホウキがこのようなモノに!」


 ナイアはいつもの魔女っ子スタイルに、近未来的備品がくっ付いている。ただしホウキは球体の付いた棒に変わっていた。


『ワ、ワシなんか……! ワシなんか……!』


「え? マーシャンは何も変わってないじゃない!」


『そう思うなら触ってみよ!』


 へ? 触れって……。


 ブウン


 あれ?


 ブウン ブウン


 さ、触れない? ていうか、手がすり抜けるっていうか……あ。


「ま、まさかホログラム?」


『そうじゃ! ワシはこの船そのモノになってしまったんじゃ!』


 あ〜……つまり宇宙船の制御コンピュータってことか。


「そういえばゲーム内でも宇宙船ってAI制御だったっけ」


『な、なぬ? 一体何を言っておるんじゃ?』


 ゲーム通りだったら……私達の世界と同じように、ステータス画面が開けるはず。


「オープン」

 ピコッ


 おおっ! 空中に画面がっ!


『サーチ 職業・ファイター』


 げっ!? 何で私ファイターなのよ! ゲーム内で一番使えないって評判の!


『特殊技能・無し』


 無しって……やっぱファイターだなぁ。


『武器熟練度・ブレードS++ ショートソードS ワイヤートラップS……』


 ……ていうか、武器熟練度ほぼSかよ……。それにしても、ブレードって? ゲームにはそんな武器はなかったけど?


「みんな、元の世界みたいにステータス開いてみて」


「ステータスですか? ……あ、出ました。職業が……さいきっかあ?」


 サイキッカーか。やっぱりヴィーはそうよね。


「ワタクシは……ふらいやー?」


 揚げ物かよ、ていうつっこみ満載の職業。飛ぶ方のフライで、空を飛ぶサイキックが使える。


「私は……バーサーカー」


 っぽい。リジーにはそれが一番ピッタリ。


『ワ、ワシは……』


「あ、いい。言わなくてもわかってるから」


『な、何でじゃ!』


 職業・宇宙船以外の何があるのよ。


「……ま、聞いた限りだと、今までとそんなに変わってないみたいだから安心して。ヴィー、聖術を使う要領でサイキックが使えるはずだから」


「さ、さいきっく?」


「いつも通りでいいのよ。ほら、≪回復≫(リカバリー)してみて」


「は、はい。≪回復≫(リカバリー)……わわっ!?」


 ヴィーの額に付けられたアンテナが輝き、周りにサイキックが広がる。


「基点がそのアンテナになる以外は何も変わらないはずよ」


「な、成程。わかりました」


「ヴィーと同じよ。今まで使ってたのと近いイメージをアンテナに送れば、似たようなサイキックが使えるはずだわ」


「イメージをアンテナに…………ああ、飛べましたわ!」


 あの球体付きの棒はサイ・ハンマー。用途は以前のホウキと同じ。フライヤーの専用装備だ。


「≪呪われ斬≫≪呪われ斬≫≪呪われ斬≫……あ、柄から何か出た」


 人の負の力を結集してソード化するサイ・ウェポン、カースブリンガー。バーサーカーの専用技能だ。


「サーチはどうなのですか?」


「どうもこうも、私は技能無しだから」


 ファイターは各職業の専用装備以外は全て使いこなせる肉弾戦のエキスパート。


「ただ……それだけ」


 つまりは近距離でしか戦えないのだ。サイキックによる中長距離攻撃がメインのこのゲームでは、ファイターは役立たずの代名詞だったからねぇ。


「あ、あれ? 肉体系技能?? こんなのあったっけ?」


 これもゲームではなかった項目よね。どれどれ……。


『状態異常完全耐性』


「ス、スゲえ。ファイター使用者が夢にまで見た技能が……」


 ファイターは近づく前に殺られるか、状態異常系のサイキックの的になるのがパターンだったから……これは嬉しい。


「……ん? ゲームでは起こりえないことが起きてる? ブレードといい、肉体系技能といい……」


 そのとき、私のインカム? から声が聞こえてきた。


『サーチ、サーチ!』


「え? こ、この声って……紅美!?」


『そう、紅美! サーチ達は無事なのね!?』


「無事……なのかな? 私はゲームの中に飛ばされたみたいだから」


『そう、それそれ! どうやら違うみたいなの!』


 ……は?


『私はこの世界にキュアガーディアンズのオペレーターとして来ちゃった、と思ってたんだけど! 違うのよ!』


 ……は?


『皆居るのよ! 友達も、大学の同級生も、そしてホンニャン母さんも!』


 ホンニャンまで!?


『どうやら……地球そのモノ、まるごとゲームの世界と同一化しちゃってるのよ!』



 このとき、私はようやくアカデミコの狙いに気づいた。アカデミコはゲームの世界を現実化するために、≪万有法則≫(コトノハ)を求めたんだ……!


がらりと変わりました。

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