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第十九話 ていうか、世界中に広がる変化。その先に現れるのは…………?

 その日。

 高尾山から始まった異変によって、世界は大混乱に陥った。



 ニューヨーク。


『ご覧ください! マンハッタンを埋め尽くしていたビル群が全て消え、段々と草原が広がっていきます! これはCGではありません、現実なのです!』


 ロンドン。


『……地下鉄内部から溢れ出てきた謎の生命体は、既にロンドン市内を完全に制圧しました。現段階では人に対して危害を加えてはいないようですが、予断を許さない状況に代わりはありません』


 そして……東京。


『い、一体何が起きているのでしょうか!? 高尾山山頂に謎の建造物が出現してから半日経ちますが、未だに動きは見られません! 既に観光客の避難は完了しており、間もなく警察の特殊部隊による突入が開始されるモノと思われます!』


 ……スマホで世界各地のニュースを確認しながら、ため息をついた。


「……世界中で異変が起きてるわね。北極と南極じゃ、急速に氷の面積が拡大してるみたいだわ」


「もう一つ現れた地球っぽい星には、通信を送ったりしてるみたいなんだけど……何の反応もないって」


 うーん……右足(アカデミア)の目的がイマイチわかんない。巨大な建物が次々に消えていって、段々と広がっていく草原。それに次々と現れる謎の生命体……つまりモンスター。


「世界そのモノを改変するつもりなの……?」


 私達の視界には、変わり果てた高尾山の姿が迫ってきていた。



 途中からリジーの≪化かし騙し≫(トリック)で姿を隠し、人気のない森の中に降り立つ。


「ここでいいのね、サーチ?」


「ありがとう、紅美にイタチーズ。あんた達は店に戻って、二重三重に風の防壁を張って待機してて」


『わかりやした! 姐さんはあっしらが命に代えても守ってみせまさあ!』


「頼んだわよ!」


「サーチ、気を付けてね! マーシャン以外はどうか無事で!」


「ワシは無事じゃなくてよいのか!?」


 マーシャンのつっこみを無視して紅美とハグした私は、高尾山に向かって走り出した。


「サーチ、待ってるからね!」


 遠ざかる紅美の声に手を振って返す。


「マーシャン、魔術的な妨害はない!?」


「妨害だらけじゃよ。山門に至るまでに、既に五枚は障壁があるわい」


 なら……ぶった斬るまで!


≪偽物≫(イミテーション)!」


 私の魔力が長刀を形作る。


「秘剣≪竹蜻蛉≫!」

 ザンッ!

「おお!? しょ、障壁を斬り裂きおった。その刀、オリハルタイトかえ?」

「そうよ!」

 ザンッ! ザザンッ!


「何と……オリハルタイトまで精製できるようになったか。成長したのぅ」


 まあね。私には≪偽物≫(これ)しかないし!


 ザシュッ!

「四枚目ぇ! あとは……最後の一枚!」


「あ、待て。最後は……」


「秘剣≪竹蜻蛉≫!」

 がぎぃぃぃぃん!

「あきゃああああああああああっ!」


 ジーンって! 手がジーンってなった!


「最後の障壁は見えないオリハルタイトの壁じゃって言おうとしたんじゃが……」


「は、早く言えええええっ!」


 障壁をコンコン叩きながら、ヴィーが慎重に何かを探っている。


「……仮想金属でオリハルタイトを……本当に何でもありなのですね」


「どうじゃ、ヴィー。仮想金属ならば其方に破れよう」


「……はああああああっ! たああっ!」

 どがぎぃぃぃぃん!

「………………手応えはあったのですが……?」


「うむぅ……修復速度の方が上なのじゃな。これはまた厄介な……」


「陛下、魔術でどうにかなりませんか?」


「ううむ……構成式を解読できれば何とかなるが……少し時間がかかるのぅ」


「こうなったらヤケクソ! サーチ・ウルトラおしおキッーク!」

 どげぇぇん!

 びし……びしびし……ずずずずぅん!


 ……へ?


「う、嘘じゃろ!? いくら仮想金属とはいえ、オリハルタイトの壁を蹴破るじゃと!?」


「サ、サーチ、今のは新しい必殺技ですか?」


 違うよ。単なる蹴りだよ。


「……ただ、さっき私が斬りつけた場所とヴィーが殴った場所が同じだったから、一番弱ってる部分を≪急所攻撃≫(ピンポイント)で蹴っただけだけど……?」


「「…………」」


「な、何か変だった?」


「……ま、まあいいわい。突破できたのじゃから、それで良しとしよう」

「そ、そうですね。とりあえず先に進みましょう」


 ……何か引っかかるわね。まあいいか、この件が済んだあとでも。



「……陛下、あれは……」


「うむ……まだサーチの中には、眠っている力があるようじゃのぅ……」



「……何これ……」


 最後の障壁を越えた場所には、鬼みたいな顔を象った巨大な岩山ができていた。


「外からは見えなかったはずだけど……?」


「おそらく幻影で隠されていたと思われ。≪化かし騙し≫(トリック)と同じ匂い」


 これも≪万有法則≫(コトノハ)で? ホントに何でもありっていうか、形振り構わずっていうか……。


「それにしても奇っ怪な岩山じゃな。いや、内部に魔力反応があるから……城かの?」


 城? 城って………………あっ!


「……ラスボスの……ていうことは……」


 この変化って……RPGの世界を具現化してる?


「その通りじゃよ。相変わらず聡い娘じゃのう」


 !?


「この声は……まさかエセ神!?」


「似非とは失礼な。我は真の神じゃよ」


「やっぱり右足(アカデミア)……! どこにいるの! 姿を現しなさい!」


「フフフ、そう急かさんでも姿くらい現してやらうぞ」


 辺りから黒い断片が飛び集まり、一つの固まりになっていき……やがて。


 シュウウウ……!


「ふぅぅ……久しぶりじゃのう、小娘」

「「「「「…………」」」」」


「何じゃ、我の神々しい姿に言葉もないか?」


「「「「「……キモ!」」」」」


「な、なぬ?」


「ちょ、何よあれ!? あんな醜悪なモンスター、向こうの世界にいたっけ!?」

「いません。いてはいけません。見てもいけません。見ると呪われます」

「ヴィー姉、呪いに対して失礼! あんなのと一緒にしないで!」

「リジーの論点がズレてますが…………見るに耐えないのは間違いないですわね」

「……よもや最高神たる〝知識の創成〟(アカデミア)が、ここまで落ちぶれるとはのう……」


「な、何じゃと!? な、何故我がそこまで言われなくてはならんのじゃ!?」


「…………あんたね……足からジジイの頭が生えてる姿って、妖怪以外の何モノでもないわよ!?」


 ……このエセ神、アカデミコから切り離した右足の断面に、自分の頭を生やしたのだ。ヘタに右足が若い女のソレだから、余計に醜悪さを強調する結果になっている。


「おのれぃ、神たる我に向かって何という無礼な!」


「そう言うんだったら、神らしい格好しなさいっての! ポワンカレ予想も理解できないようなバカが、神を名乗ってるんじゃないわよ!」


「き、貴様ぁぁぁぁぁ! 良かろう! この場で握り潰してくれるわぁぁぁ!」


 さーて、最終決戦開始っと。

補足。ポワンカレ予想を理解できるってことは、物凄いことです。ちなみに私はあっぱっぱーです。

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