第六話 ていうか、壁画が描かれた通路へ。そこから外れたら、なんと……!
『姉御、通路が完成しやしたぜ!』
早っ!
「ちょっ、聞いてた予定より一日早いんだけど!?」
『かなり急いだのは認めやすが……不味かったでやすかい?』
「いや、そんなことはないんだけど……」
ただビーチ気分を満喫しまくってただけ。海はないけど。
「……と、とにかくご苦労様。はい、ご褒美のトカゲの尻尾」
『こ、こんなに!? 宜しいので!?』
ネットで買った高級トカゲの尻尾詰め合わせ×十箱。高級の基準がわからんけど。
「当然の対価よ、ご苦労様」
『い、いやっほおおおう! 今日は姉御からの施しを肴に、パーティだぞパーティ!』
『『『うおおおおおっ!』』』
……ま、喜んでくれたのならいいけど。
「で、その通路は?」
『『『あ・ね・ご! さ・い・こー! あ・ね・ご! さ・い・こー! あ・ね・ご! さ・い・こー!』』』
わかったわかった。
『『『あ・ね・ご! あ・ね・ご! あ・ね・ご! あ・ね・ご!』』』
「わかったからさ、通路まで案内を……」
『『『あ・ね・ご! あ・ね・ご! あ・ね』』』
ごがあああああああああああんんっ!
近くにあった大岩を蹴り割り、ニッコリ微笑む。
「……もう一度言うわね。私を、完成した通路に、今すぐに、案内しなさい」
『…………こ、こちらになりやす』
案内を始めたイタチ以外は、身を寄せあってブルブル震えていた。
「こ、こんなに広く掘ってくれたの!?」
イタチーズが作ってくれた通路は、人が三人並んで歩けるくらい広い通路だった。
『へえ。あっしらが左右に並んで、姉御を讃える歌と躍りを披露する予定でやした』
やらんでいい。
「この壁に書きかけの模様は何ですの?」
『姉御の偉大な功績を壁に描き、後世に伝えようと』
だからやらんでいい!
「サーチ姉、完成したらネットで公開おごっほぅ!?」
「殴るわよ、リジー」
「もうすでに殴ってますわよ……それより行かないんですの?」
あっといけない、ムダな時間を。
「じゃ、イタチーズ。あとはお願いね。何か異常があったらすぐに知らせて」
『へいっ! お気を付けて!』
「リジー、行きますわよ」
「うぐぐ……」
「うわあ……何てムダに凝ってる通路なの……」
「何だかエジプトの古代の壁画みたいですわね」
ナイアの言う通り、私らしき人物が異常に大活躍している様子が描かれている。ていうか、この通路って砂の中のはずじゃ?
コンコン
「あら、かなり硬いですわね」
「多分風の力で圧縮しまくったんでしょうね。イタチーズならでは、だわ」
それにしても……ムダに自分に似ている絵が大活躍してるのって、恥ずかしいを通り越すわね……壁を破壊したい衝動に駆られる。
「サーチ姉、壁壊しちゃ駄目だから」
「……何で私の考えてることがわかるのよ?」
「顔に書いてある」
ま、またあ!? 気をつけよ。
「サーチは顔にすぐ出ますからね……クスクス」
悪かったわねっ。
「……ねえ、サーチ姉。この異様に美化された勇者みたいなのって……」
「悪かったわねっ。どうせ美化されてるわよ!」
「あいひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「サーチ、リジーの頬っぺたは伸びませんわよ……にゅ」
「あ、忘れてた。ナイアの頬っぺたって、エイミア並みに伸びるんだっけ!」
「にょーーーーーんんん!!」
うっわ、久々にやると快感だわ。
「ほーれほれ!」
「にょんにょんにょーん! にょにょーーんん!」
「サ、サーチ姉! ここの壁画……!」
「何よ、今楽しいんだからジャマしないで!」
「こ、これってエイミア姉じゃ!?」
「何がよ!? …………って、あれ?」
リジーが示す壁画には、メチャクチャ巨乳な頬っぺたがよく伸びた女の子が描かれていた。
「ていうか、これってどう見てもエイミアよね?」
「頬っぺたを引っ張ってるの……このビキニアーマー、間違いなくサーチ姉と思われ」
た、確かに。これは大王炎亀のビキニアーマーだわ。
「あ、ここにいるのはリルだ……」
その近くで頭を抱えているのはリルだろう。
「……ていうか、どうしてイタチーズが顔を知らないリルとエイミアが壁画になってるわけ?」
「……さあ……」
リジーも首を捻るしかない。
「いひゃひゃひゃひゃひゃ!」
あ、ナイアのことを忘れてた。
「ごめんごめん、離すわ」
ぴちぃぃん!
「痛! な、何をなさるんですのぉぉぉぉ!」
ナイアがホウキをハンマー型にし、おもいっきり降り下ろす!
「ちょっ!?」
「危な……」
ぶおんっ
どがああああああああん!
ハズレたハンマーは壁画にヒットし、粉々に…………って、あれ?
「ちょっ、ちょっと。壁の向こうに空間があるわよ?」
「へ? 本当ですの?」
「……暗くて見えないけど、間違いなく空間があるわ。空気が流れてる」
「…………本当ですわね。風を感じますわ。ならば!」
ナイアは再びハンマー型ホウキを振り上げ。
どがああああああああん! どがどがどがどがどががああああああああん!
……パラパラ……
「……ケホ……ど、どうですの!?」
ホ、ホコリが……ケホケホ。羽扇をパタパタして散らす。
「サーチ姉、違う通路が」
ケホケホ……ち、違う通路? 暗くてよく見えないのでホタルんの光を照らす。
「……あ、この通路は……間違いない、ピラミッドの内部だわ」
「そ、それじゃあこの壁画は……ピラミッドの外壁ですの!?」
そういうことみたいね。
「まあ壁画の話はいいわ。とりあえず内部に入れたんだから、ここから進んでみましょ」
入口まで掘ってくれたイタチーズ、ごめんなさい。私達は違う道を行きます。
「……おっかしぃなあ……」
「どうしたの、サーチ姉」
「ん、ん〜……前に侵入したときは、こんなに暗くなかったんだけどな〜……」
どっちかって言うと、もっと明るかったような……。
「サーチ姉、もしかしたらこの通路、マーシャンのプライベート空間では?」
「プライベート空間って……あ、ゴミが落ちてる」
しかも超有名なジャガイモを揚げたお菓子の袋。オマケに赤いパッケージのシュワシュワジュースのペットボトルもある。
「……誰かここで暮らしてるみたいね……」
あ、天井近くに洗濯物を発見。いきなり生活感が出てきたな。
「……ふんふんふふん、ふんふーん♪」
鼻唄?
「今日も洗濯はよく乾きそうじゃな」
あ、あの声は……! その場で≪早足≫と≪気配遮断≫を発動させ、一気に距離を詰め。
「ふんふーんふんふん♪ のじゃのじゃ〜♪ ……のわあ!?」
いきなり膝カックンして尻餅をつかせる。
「だ、誰じゃあ…………って、あ」
「あ、じゃないわよ! こんなとこで何してんのよ、マーシャン!」
女王陛下が洗濯?




