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第五話 ていうか、ピラミッドがあるのは深い深い砂の中。

「とりあえず整列!」


「え? あ、はい」

「らじゃあ」

『『『へい、姉御!』』』


 ザザッ


「よーし、番号!」


「え、い、一ですわ」

「二と思われ」

『三!』

『『四!』』

『……ってちょっと待て! 四は俺だ!』

『いや、俺だ!』

『いーや、俺が先だった!』

『何言ってやがる、俺が先だっただろうが!』


 ケンカを始めたイタチーズに、羽扇を振り下ろす。


 すぱーん! すぱーん!


『『ぶぎゃっ!』』


「些細なことでケンカしない! 並んでる順番で番号を言うんだから、争う必要性はないはずでしょ?」


『『す、すいやせん……』』


「はい、それじゃ最初から!」


「え、ええ!? い、一!」

「二と思われ」

『三!』

『四!』

『五!』

『六!』


 ……中略。


『三十二!』


「……はい! 全員揃ってるわね、ご苦労さん」


『あ、あの〜……』


「ん、何かしら?」


『い、今の番号のは、何か意味があったので……?』


「私達はともかく、あんた達が全員ちゃんといるか確認したかったのよ」


『は、はあ……そんなの見ればわかりそうな「何か言ったかしら?」な、何でもありやせん!』


「……よろしい。イタチーズの三から十二はこっちへ集まって」


『『『へいっ!』』』


「あんた達はここからあの岩山までを探索。こーんな感じで岩が配列してる場所がないか探して」


 実際に地面に岩の配列を書いて見せる。


『……わかりやした。綺麗に揃ってる五角形でやすね……いくぞ! 俺に続きやがれ!』

『『『へいっ!』』』


 びゅうん! びゅんびゅん!


 イタチーズは風を呼んで、私が指し示した場所へとんでいった。


「次、十三から二十二番!」


『『『へいっ!』』』


「あんた達は反対側をシラミ潰しに探して」


『わかりやした! 全員出発!』

『『『へいっ!』』』


 びゅうん! びゅんびゅん!


「……よし、次は二十三から三十二!」


『『『へいっ!』』』


「あんた達は向こう。あのサボテン辺りまでを徹底的に探してきて」


『わかりやした! 俺に付いてきやがれ!』

『『『へいっ!』』』


 びゅうん! びゅんびゅん!


「……よし、私達はっと」


 魔法の袋(アイテムバッグ)からビーチパラソルを取り出し、地面に突き立てる。ついでにビーチチェアも三つ並べて。


「果報は寝て待て、とシャレ込みましょうか」


「……へ?」


「サーチ姉、その五角形の岩の配列がどうかしたの?」


「ん? ああ、目印よ」


「目印?」


「そ。前にピラミッドから出たときに、真上にあたる場所に岩を並べておいたのよ」


「あ、成程。真下に進めばピラミッドに着けるわけですわね」


「そういうこと。だから果報は寝て待てって言ったのよ」


 そう言って私はビーチチェアに寝転んだ。



『……姉御! 姉御ぉ!』


 ちょっとウトウトしだしたころ、イタチーズの一匹が私のとこへすっ飛んできた。


「あったの?」


『へぇ! こっちでさあ!』


「距離は?」


『飛んで三分くらいでさあ!』


 飛んで三分か……歩いて十五分くらいかな?


「わかったわ、案内して」


『へいっ!』


「ナイア、リジー、行くわよ」


「スー……」

「ZZZ……」


「…………」


 二人の鼻を摘まむ。


「…………」

「…………」


 …………。


「…………く…………ぶはあああっ!?」

「…………ぅぅ…………ふはあああっっ!」


「起きた? ならさっさと準備しなさい。行くわよ」


 ビーチパラソルとビーチチェアを片づけると、イタチーズを伴ってさっさと歩き出す。後ろでは焦って準備する様子が窺えた。



『ここでやす!』


 ……あーあー、そういえば向こうにあの岩山が見えてたっけ。


「だいぶ埋もれてるけど間違いないわね……。よし、イタチーズ、全員を集めて」


『わかりやした! ……おい!』

『『『へいっ!』』』


 二匹ずつペアで飛び立っていった。


「あれ、念話で呼ばないの?」


『へえ。どうもこの辺りは念話が不安定でやして』


 念話が不安定……?


 ……ィィィイイイン


『あ、戻ってきやした』


 群れを為して飛んでくるイタチ。なかなか絵にならない光景だ。


 ぐおっ! スタスタスタ!


『『『姉御、お呼びでやすか!?』』』


「ん〜、まあね。あんた達さあ、穴掘りって苦手?」


『いえいえ、その逆でさあ。あっしらは元来地面に穴を掘って暮らしてやしたから、穴掘りは得意中の得意でさあ』


『そうでやす。トカゲを捕まえる為に穴で待ち伏せしたりもしまさあ』


 なるほどなるほど。


「よし、言質はとったわよ」


『げ、言質?』


「あなた達にまた仕事を頼みたいんだけど」


『お安い御用でさあ! 何でも言ってくだせえ!』


 よしよし、うまくいった。


「なら悪いんだけどさ、この下に埋まってるピラミッドまでの道を掘ってもらえない?」


『道でやすね? わかりやした……よぉし、一気に掘り出すぜぇ!』

『『『おおおおおっ!』』』


「ちょっと、ホントに道だけでいいわよ?」


『大丈夫でさあ。ピラミッドってヤツを全部掘り出してみせまさあ!』


 ため息をついて、タブレットでピラミッドの画像を出す。


「……こういうのよ。で、これが人間。比較対象にはなるでしょ?」


『…………に、人間の何倍でやすかね…………』


「だから悪いこと言わないから、入口まで掘ってくれればいいわよ」


『い、いえいえいえ! 男に二言はねえ! 一度言った以上、絶対に全部掘り出してみせまさあ!』


 え、ちょっと。


『よぉぉし、隊を三班にわけろ! 三交代で二十四時間掘るぜ! 二日でピラミッドを全部掘り出すぞぉ!』

『『『ええええええええっ!?』』』


 お、流石に従順なイタチーズも反抗した。


『何が「ええええええええっ!?」だ! 姉御からの頼み事だ、絶対にやりきるぞ!』


「ちょっと待てちょっと待て。私は入口だけ掘ってくれ、と言ったでしょ。ピラミッド全部とは言ってないわよ」


『な、なあんだ、ビックリした』

『入口掘るくらいなら二日も要りませんぜ』


「あ、そうなの? ならそれでお願い」


『待あああてえええ! 待て待て待て待て待て! 姉御、これは烈風鼬(トルネードダンス)にとっての意地でやす! 口出しは無用に願いやす!』


『ちょっと待ってくだせえ! そんな意地はあっしらにはありやせんぜ!』


『何言ってやがる! お前らには男の意地ってのがねえのか!』


『ありやせん!』

『楽な方がいいでやす!』

『私は女だし』


『て、てめえらあああ! 姉御に恥かかす気かあああ! 全員まとめてシメてやぶごふぇ!?』


 あ、しまった。つい足が出ちゃったわ。


「……さて、うるさい誰かさんは寝ちゃったから、入口だけ掘る工事でお願いします」


『『『ガッテンだ!』』』



 小うるさいイタチはしばらくトカゲの尻尾抜きを宣告したら、泣いて謝ってきた。

パワハラ許すまじ。

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