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第十八話 ていうか…………。

 みんなにしてもらってたマッサージが終わってから、少しエイミア抜きで話をしていた。


「リル、お主はなんでユタカの紐をそんなにギュウギュウに縛っておるのじゃ?」


 ユタカじゃなくて浴衣ね。紐じゃなくて帯ね。


「う、うるせえ!」


 ……たぶんマーシャン対策かと。


「それよりも。マーシャン、女王に代わって」


「妾は二重人格ではないわ!」


 あ、代わった。


「ていうかマーシャンでしょ? 話があるって言い出したの」


「おお、そうじゃったな……まあこれでも食べながら……≪氷結弾≫(アイスバレット)


 そういうと氷で器が出来上がり、その上にダイヤモンドダストみたいなのが降り積もる。すごい、魔法でアイスシャーベットって……!


「マーシャンて実は凄い魔術士……?」


「いや、本業は回復魔術士じゃ」


 ウッソだああ!


「ギルドじゃ攻撃魔術士だって紹介されたよ!」


「ハイエルフで回復魔術士となると、妾ぐらいしかおらんのでな……身元を隠す為じゃよ」


 い、意外……ハイエルフって回復魔術士少ないんだ……イメージ的には逆に多いように思ってた。


「あれ? でも攻撃魔術使ってなかった?」


「回復魔術士はスキルで≪初級魔術≫があってな。それには≪弾≫(バレット)も含まれてる」


 ≪弾≫(バレット)は攻撃魔術の初級のこと。だんだん級があがると……確か球? とか波? とかついたりするみたい。


「初級であれだけの威力って……」


 普通に初級を飛び抜けてない?


「初級じゃから威力が出せぬわけではない、という事じゃな。妾には時間は腐る程にある故、このような道楽に近い魔術鍛練もできる」


 確かに初級を練習しまくってマーシャン並みの威力を出せるようにするより、中級を修得した方が早い。


「そうか……回復魔術士も攻撃魔術は覚えられるけど、威力的にも殴ったほうが効率がいいわよね……」


「そういう事じゃな。妾の場合は道楽と“賢者の杖”(マスターロッド)による魔力の底上げの賜物じゃ」


 ……ん?


「……めちゃくちゃ話逸れてるわよね」


「……そうな」


「……何時もの事じゃ」


 さて、話を戻しますか。



「……で? なんの用なのよ、妾マーシャン」


「何じゃその呼び名は! 無礼じゃぞ!」


 しまった。心の中での呼び名で言っちゃった。


「ごめんごめんごめん。で、お話どーぞー」


「全っ然真心の欠片も無いな! まあよいわ。あとでじっっくり身体に聞くとしよう」


 全力で抵抗します。


「話というのは他でもない、エイミアの事じゃ」


 だと思った。


「私もそのことを話し合おうとは思ってたわ……リル、頭痛くなってるのはわかるけどじっとしてて」


 アイスシャーベットを一気に食べたらしく、こめかみを押さえて膝を揺らすリルに一言言う。


「〜っ! わ、わりぃ」


「まあいいけど……で? マーシャンはエイミアをどうしたいの?」


 エイミアに接近した理由、聞かせてもらうわよ。


「妾がエイミアに目を掛けたのは勇者の資質を確かめる為。それだけじゃよ」


「え?」


「妾はエイミアを運命(さだめ)等という下らぬ理由で縛りつけるつもりは無い。そのような輩が現れた場合は全力で排除する」


「マーシャンって話せるわね〜! 私もエイミアを勇者扱いする気ないわ」


「つーかエイミアが勇者だろうが何だろうが関係ないさ」


 たぶん、全員同じことを考えていたんだと思う。エイミアには……今のままでいてほしい、と。

 私はただ……エイミアが勇者だと……。



 勇者エイミア 『あ、あなたが魔王ですね!』


 魔王 『勇者よ! よくぞワシの前にたどり着いたな!』


 勇者エイミア 『ひえっ!』


 魔王 『なんで涙目!? めっちゃ可愛いし!』


 勇者エイミア 『そんな怖い顔をしないで……平和にいきません?』


 魔王 『はい! 魔王辞めます!』


 魔王の部下 『えーーっ!?』


 勇者エイミア 『皆さんも……平和にいきません?』


 魔王の部下達 『はい! 魔王の部下辞めます!』


 元魔王と部下達 『勇者エイミアに一生ついていきます!』


 勇者エイミア 『え、ええ!? …………サーチぃ……』



 ……めんどくさ!

 エイミアが私に元魔王達を押し付ける様子が見え見え!

 マジめんどくさ!



 ……とか……。



 勇者エイミア 『魔王! 覚悟ー!』


 タタタ……ゆっさゆっさ

 タタタ……ゆっさゆっさ

 タタタ……


 魔王 『ちょっと待て』


 勇者エイミア 『……何で前屈みになってるんです?』


 ……そんな威厳丸潰れの魔王、見るのもイヤ……。



 ……とか。

 ……うん。エイミアは勇者には向かないわね。


「………………」

「………………」


 ……二人とも複雑な顔してる……。

 たぶん、私と同じようなこと考えてるわね……。


「……ねえな」

「……無理じゃ」


 ……私と同じ考えに至ったっぽいわね。じゃあ、私の意見を。


「このパーティは、世界を救うとか! 勇者を助けるとか! そんなめんどくさいことはしません!」


 無責任万歳。


「温泉に行きたい! うまいモノ食べたい! 綺麗な景色が見たい! 巨乳になりたい!」


 リルが一番最後のに激しく同意する。


「楽しいことをやろう! おもしろおかしく生きよう! これが竜の牙折り(我がパーティ)の行動指針! …………て感じでどうかな?」

「おーけーだ!」

「妾も賛同しよう」


 よし! 決定ね!


「じゃあ次の目的地! 白い温泉ハクボーンへ!」


「「さんせーい!」」



「……そうじゃ、思い出した。お主らに言わなければならぬ事があった」


 次の日。

 烈刀館をチェックアウトするために荷物を纏めているときだった。マーシャンが思い出したように話し始めた。


「……何? 嫌な予感しかしないんだけど」


「いやいや、朗報じゃよ。お主ら、少し自分がほっそりとした気がせぬか?」


 え?


「……そういえば二の腕が」


「そうなんですよ! 私、お腹周りが少し」


 ……まさか。


「そうじゃろそうじゃろ。闇深き森(ディープフォレスト)にはもう一つ呪いがあってな。森に立ち入った者に負荷をかけるようになっておる」


 負荷!?


「森に入った時に異様な怠さを感じなんだか?」


 ……確かに……妙に身体が重いなー? とか思ってたけど……。


「呪いとはいえダイエットには効果があっての。余分な脂肪の燃焼効果(・・・・・・・・・・)は抜群じゃ」


「本当ですか!」

「マジありがてえ!」


「……っのおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」


「わっ! びっくりした!」

「サーチどうしたん……サーチ?」


 ウ、ウ、ウ、ウッソだー!!


「な、な、何で私はバスト(・・・)に効果が出てるのよーっっ!!」


 せっかくDに合わせてたトップが……緩くなってる!?


「せっかくDにきてたのにーーっ!! これじゃCに逆戻りじゃないー!」


「……そういえばサーチって……」

「……無駄な贅肉一切ついてないもんな……胸以外は(・・・・)


「無駄な肉って言ったのはこの口か! この口か!」


「え? いっへー! いひゃいっ! ひゃへろーーーっ!!」


「やれやれ、騒がしいのう……」


「元々はあんなダンジョン作ったあんたのせいだろが!!」


「なんじゃああ! ぎいあああああああ! ギブギブギブ! ロープロープロープじゃあああ!」


「ロープなんかあるかあああああああ!」



 ……ちくしょう。

 絶対にハクボーンでDに戻ってやるんだからあああ!



 さて。

 暫しお別れじゃな。

 また逢いに来るでのう。達者でな。

 大丈夫。今回の勇者は良い仲間に恵まれておる。

 前回のような事にはならぬ。否、妾がさせぬ。

 じゃから安心して見ているがよい。



 元勇者(我が愛しき人)よ……。

明日閑話を挟んでから新章になります。

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