表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
779/1883

第四話 ていうか、まずはマーシャン本人に会ってみないと。

「……再びエジプトへ、ですか?」


 夜。私はヴィーの部屋を訪ね、考えていたことを話した。


「ええ。当然っていえば当然なんだけど、念話水晶で直接問い質してもムダだろうし」


「切られれば終わり、しかも陛下を警戒させるだけですしね」


「だからピラミッドを再調査して、マーシャンに直接問い質すわ」


「……陛下がピラミッドに残っている可能性は少ないと思いますけど?」


「…………一応、万が一だけどね、もう一つ可能性があるから」


「と、言いますと?」


「……あの棺から出られてない可能性」


「………………そ、それは考えてませんでした」


 もしそうならとっくに干からびてるだろうけど。まあ水をぶっかければ元に戻るでしょ。


「もし干からびてなかったとしても、あのピラミッドを拠点にしてる可能性は高いし」


「もしも……ピラミッドそのモノが向こうの世界から持ち込まれたとしたら、陛下の拠点として使われている可能性は大ですね」


 そういうこと。



「……というわけで、私とナイアとリジーでもう一度エジプトへ飛びます」


「な、何が『というわけで』なんですの!?」

「話が突然すぎて理解不能」


 次の日の朝ご飯の席で、私の突然の宣言に戸惑う二人。


「今回は紅美にもやってもらいたいことがあるの。詳しいことはヴィーに話してあるから、協力してもらえない?」


「私に出来る事なら何でもやるよ。じゃんじゃん頼んで」


 力こぶを作って応じる紅美に、笑顔で応える。


「詳しくは現地で。ナイアとリジーはさっさと朝ご飯食べて、すぐに準備して」


「「へ!? 今から?」」


「当たり前でしょ、マーシャンが動き出す前に対処しないと」

「「だ、だけど……」」

「だけどもヘチマもない! 早くしないと鳩尾に膝をぶち込むわよ!」

「「ひ、ひええっ!」」


 急いでご飯を掻き込むと、二人は脱兎の勢いで部屋へ飛んでいった。


「……よし。それじゃ食器洗うか」


「サーチ、私がやっとくよ。準備してきたら?」


「ありがと。私は準備できてるから大丈夫。それより紅美、イタチーズ半分借りてくわね」


「わかった。イタノスケ班とイタチロー班を出すわ」


 イタノスケ班!? イタチロー班!?


「あ、あんたイタチの見分けできるの!?」


「へ? 当たり前じゃない?」


 ……わ、私には全員同じ顔にしか見えないんだけど……。


「ヴィ、ヴィー、あんたは見分けつく?」


「いや、考えた事もありませんでした」


 うん、それが普通の見解よね。


「そ、そういうもんなんだ。だからイタチローが『何でガキ共は毎回名前を間違えやがんだ!』って怒ってたのね」


「…………名札でも付けときなさいよ」


「名札って……あれ、待てよ? 首輪を巻いてネームプレート付けておけばいいのかな?」


「首輪……ね。イタチーズがイヤがらなきゃいいんじゃない?」



『コ、コーミの姐さんの贈りモノ、拒むはずがありやせん!』


 いつから紅美は「姐さん」になったんだよ。


『おおお、これは姐さんからの兄弟杯と一緒でやすね!?』


 いやいや、違うから。


『おい、皆の衆! ここに「紅美組」を立ち上げるぞおおお!』

『『『うおおお! 全国制覇上等ぅぅ!』』』


 おい、何か暴走族も混ざってないか?


「サ、サーチ……どうすればいいのよ!?」


「……がんばってね、初代姐さん!」


「ちょっとおおおおおおお!?」


 ま、元々はあんたが首輪を付けるなんて言い出したのが原因なんだから、ちゃんと姐さんしてあげなさいよ。



 夕方。


「じゃ、行ってくるわ」


「気を付けてください。頼まれた調べモノは、サーチ達が戻ってくるまでには済ませておきます」


「お願いね。紅美もヴィーのサポートと店を頼んだわよ?」


「わ、わかった……」


『安心してくだせえ、若頭。あっしらが必ず店を盛り上げやすから!』


「誰が若頭よ!」


『う、うぉう。サーチさんは若頭はお気に召さなかったみたいだぜ』

『なら副総長?』

『いや、特攻隊長で』

『親衛隊長の方が』


「どれも却下! 普通に名前で呼びなさい!」


『『『へい、サーチの姉御!』』』


 だ〜か〜ら〜……もういいや、めんどくさいし。


「それじゃ行くわよ。イタチーズ、出動!」


『『『へい、姉御!』』』


 イタチーズが空中を走り出すと同時に、私達の身体が引っ張られて宙に浮く。


「サーチ、ご武運を!」

「気を付けてね〜!」

『『『お気を付けて!』』』


 段々とヴィーや紅美、そして店が小さくなっていく。屋上ではイタキッズ達が手を振っていた。


「場所は大丈夫ね?」


『バッチリでさあ! 姉御はゆっくりと休んでてくだせえ!』


 そう? ならお言葉に甘えて、一眠りさせてもらおうかな……。


「ちょ、ちょっと! スピード速すぎますわよ!」


 ナイアが文句言ってるけど、気にしない、気にしない。一休み、一休みぃ…………。



 …………んあ?


「あ、あれ? 急に暖かくなってきた?」


『おはようございやす。もうすぐエジプトでさあ』


 ……あ、そっか。簡易護符(シンプルアミュレット)で暖房最強にしてたんだったわ。エジプト近くじゃ逆に暑いわね。


「イタノシン、このまま砂漠に降りてくれない?」


『わかりやした。何度もいいやすが、あっしはイタノスケでさあ』


 わかったわかった。


「あ、ちょっと着替えるから」


 このまま砂漠に行くんならビキニアーマーでもいいか、と思って着替え始める。ブラを外してビキニアーマーのトップを着け始めたとき、集中する視線に気がついた。


 じーっ


「……あんた達ね、その習性、何とかしなさいよ」


 じーっ


 ……さっさとトップ着けたほうが早いか。そう思ったとき。


「サ、サーチ姉、前! 前!」


 リジーが突然切羽詰まった声を出す。何かと思って視線を前へ……げぇ!?


「イタチーズ! 前々々! 地面がああ!」


 私がトップを着けたとたん、落胆して前を向くイタチーズは……。


『『『う、うわあああああああっ!』』』



 ぼふぅぅぅぅん!



 ……砂漠に頭から突っ込み、モノスゴい砂ぼこりを舞い上げた。


「……ケホケホ! み、みんな無事!?」


『…………ぶわっぷ! へ、へい! あっしは大丈夫で…………おい、他の連中は!?』


『へ、へい! 全員無事でやす!』


「あ、あれ? リジーは?」


 周りを探すと……あ、いた。少し先でスケキヨってる。


「今助けるわよ〜……よっと!」


 すぽんっ!


「ゲホゲホゲホ! す、砂が口に……!」


「……たく! イタチーズ! あんた達がよそ見なんかするから!」


「それを言うなら余所見する原因を作ったサーチ姉が悪いっ!」


 ご、ごめんなさい。


「み、皆さん大丈夫ですの?」


「な、何とかね〜」


 結局イタチーズから遅れたナイアだけが被害0だった。

砂漠に謎のクレーターが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ