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第二十四話 ていうか、紅美がクイズで苦戦してるころの私達。

 そのころ、私達はというと……。


「ヴィー、何かあった?」


『いえ、あるのは骨ばかりで、生物は一切見当たりません』


『……サーチ、空からも何も見つかりませんね』


 ナイアから届くのも残念なお知らせばかり。

 そのとき。


「サーチ姉! サーチ姉ぇぇぇ!」


 あの声は……!


『サーチ、今リジーの声が聞こえた気がしましたが!?』


『ワタクシにも聞こえましたわ』


 まさか、敵襲!?


「全員リジーの元へ急行! 同時に戦闘準備!」


『了解!』『了解ですわ!』


 私も『素早さ』を最大に活用して木々の間をすり抜けていく!

 やがて空中に捕らわれているリジーが見えてきた。


「リジー! 助けに来……た……あれ?」


「サーチ姉、たーすーけーてー……」


 ぶらーんぶらーん


 ……リジーはくくり罠で足を持ってかれ、逆さ吊りで揺られていた。


「…………あんたって娘は…………」


「サーチ、敵は何処に…………あれ?」

「リジー、今助けますわ…………あら?」


 同時に駆けつけたヴィーとナイアも、私と同じように呆気にとられている。


「サ、サーチ姉、何モノかが仕掛けた罠と思われ」


「…………リジー、昨日の夜にちゃんと説明しといたわよね……?」


「な、何を?」


 大きくため息をついた私が説明をめんどくさがっているのを感じたのか、代わってヴィーが話し始めた。


「リジー、昨日の夜にサーチが『この場所に罠を仕掛けておくから気をつけて』と説明があったでしょう?」


「…………へ?」


 やっぱり聞いてなかった。呪われアイテム磨いてたから、聞いてるのか不安ではあったんだけど。


「あのね、逆さ吊りになる程度の(トラップ)だったから良かったモノの、もしも即死タイプのだったらどうなってたでしょうね〜?」


 リジーは逆さ吊りになってる割に、顔がだんだん真っ青になっていく。


「あ、あうあうあう……」


「しまったなぁ〜……落とし穴の底に竹槍バージョンにすれば良かったかな」

「上から大岩どすんっ! でも良かったのでは?」

「魔術的罠で燃えて凍って痺れての三コンボも良いですわね」


「い、いやああああああああっ!!」



 罰としてリジーにはしばらくぶら下がっててもらうことにした。



 辺りが暗くなってきたころ、ベースキャンプにしてる拓けた場所に戻った。


「は〜あ……この場所に落ちてから、モンスターどころか虫にすら会わないわね……」


 まだまだ食料に余裕はあるが、長丁場になりそうなら食べ物を調達できるようにしないといけないんだけど……。


「木や草ですらも固くて食えないのよね……」


 オリハルタイトのナイフでも斬れない草って何なのよ!?


「サーチ、もうコーミには繋がりませんの?」


「全くダメ。ウンともスンとも言わない」


 何だったのかしら、あれ。何であんなローカルクソゲーのことを聞いてきたのかな?


「……サーチ、コーミは念話水晶の存在は知らないのですね?」


「知るわけないじゃない。ていうか、魔力の扱いを知らない紅美じゃ使えないわよ」


「問題はそこです。何故コーミは私達に連絡ができたのでしょうか?」


 …………あ、そうだわ。紅美にはスマホしか連絡手段がないんだった。


「当然この中は……圏外よね」


 スマホを出してみるけど……アンテナ三本立ってるわけがない。


「……何かしら……紅美が念話を送れるような状況になったということよね」


「ワタクシ達同様に魔力操作ができる存在が関わった……と?」


 ってことは……!


「まさか紅美が人質にとられた!?」


「な、ならあの念話は私達へのSOSですか!?」


 ……もしかして……私達に連絡しろと言われて?


「……私達に人質の存在を知らせる念話だった?」


 だとしたら、何故あんなクソゲーの話題を出すわけ? そんな必要性は全くないわけだし……。


「……ん? あのゲームが何かしらのメッセージになってる?」


 あのゲームは確か……一番最初のステージ自体が無限回廊の難解ステージで……。


「……石や木に何かのアイテムをかざして情報を得る…………ま、まさか、この森自体がダンジョンの無限回廊ってこと!?」


 なら脱出方法は……どこかに隠されている!?


「そうよ! あのゲームの話題は、私達に対するメッセージだったんだわ!」


「……と言いますと?」


 伝説のクソゲーにまつわる話を語った。


「……成程。もしかしたらゲームの謎解きに誂えて、私達に脱出方法を教えていると?」


「コーミは聡明ですから、あり得る話ですわね」


 話は急速にクソゲーの脱出方法の話に傾いていく。あとから考えれば、そんなわけはないことぐらい、わかりそうなもんだったんだけど。


「……サーチ姉、勘弁……むにゃむにゃ」


 唯一こういう話につっこめるであろうリジーがダウンしていたことが、次の日の悲劇を生むことになった。



 頭に昇っていた血が全身を巡る。暖かい光が私に朝の訪れを告げる。


「…………うぅ、寝すぎた」


 まだ足に残ってる紐の痕を擦ると、お腹が空腹を知らせる。


「……ご飯……朝ご飯……」


 日課である呪われアイテム磨きも大事だけど、栄養はもっと重要だ。一日の活力を得る為に、テントを出て簡易テーブルに向かう。


「……あれ、朝ご飯がない」


 サーチ姉は何だかんだ言って優しい。何があっても三食は準備してくれてる。だけど今日は……ない。


「どうしたんだろ……」


 眠気眼のまま、辺りを探す。するとベースキャンプのすぐそばでしゃがみ込んでいるナイア姉を見つけた。


「おはよう、ナイア姉。何をしてるの?」



「お願いですから教えてくださいな石さん草さん土さん達よ」



 ザザザッ


 思わず後退してしまった。ま、まさかナイア姉が壊れた!?


「サ、サーチ姉! ヴィー姉! ナイア姉が変だと思われぇぇぇ!」


 必死になって二人を探す。すると木にもたれ掛かるヴィー姉を見つけた。


「ヴィ、ヴィー姉! ナイア姉、ナイア姉があああああ!」


 するとヴィー姉はおでこを木にくっつけて、目を閉じ。



「届け届けこの思いよ種の壁を乗り越えて私に応えて木よ風よ大地よ」



「うわあああああっ! ヴィー姉までぇぇぇ!!」


 必死に探す。サーチ姉だけでもマトモである事を願う。


「サーチ姉! サーチ姉ぇぇぇ!」


 するとサーチ姉は、森の真ん中で佇んでいた。そして両手を広げ。



「大空よ! 大地よ! 水流よ! 我が言葉に応えたまへ!」



「うわあああああっ! サーチ姉ぇぇぇ!」


 私は無意識にサーチ姉の背中にタックルする。


 ずどむっ!

「ぐはあっ!」


「サーチ姉! 正気に戻ってぇぇぇ!」


 ゴスゴスゴスゴス!


「い、痛い! いたたたたたっ!」

「サーチ姉サーチ姉サーチ姉ぇぇぇぇぇぇうぼぐっへえ!?」

「痛いって言ってるでしょうが! このボケナスビ!」



 その後、私はリジーにことの詳細を話す。


「……………………そんな事、あるはずないと思われ」


 ……このとき、私は正気に戻った。



 一時間後、無事に紅美の前に転移した。

 あの世界で起きたことは…………二度と話題になることはないだろう。



 余談だけど、ヴィーとナイアの精神的ダメージはハンパなかったらしく、しばらく夢にうなされることになった。

これを黒歴史と呼ぶ。

閑話はさんで新章です。

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