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第二十話 ていうか、イタチと一緒に水中散歩。で、シュモクザメやイタチザメが私達を見守り……。

 紅美は納得したのか、あっさり引き下がった。


「サーチ、私はホテルに戻ってた方がいいよね?」


「そう……ね、ちょっと待って。イタチーズの誰か、紅美の護衛をお願いできない?」


『え、コーミ姉ちゃんの!? ならボクがやる!』

『アタシがやるわ!』

『ボクがやるんだい!』


 おおう、イタキッズに大人気だ紅美!


「わかったわかった、なら全員で私を守ってちょうだい……いいわよね、サーチ?」


「え、ええ。構わないけど……」


『やったあ! コーミ姉ちゃん、ボクと遊んでー』

『アタシが先よ!』

『ボクが一番最初だい!』


「はいはい、皆一緒に遊べばいいでしょ。守れた子にはホットケーキ作ってあげよかな〜」


『え!? は、はい! 仲良くします!』

『アタシも仲良くするー!』

『ボ、ボクも!』


 ……イタキッズを引き連れて去る紅美の背中は、もはやベテラン保育士の空気が漂っていた。


「……まあいいか。よし、それじゃ海底遺跡へ向かいましょう。イタエモン、お願いね!」


『イタノスケでさあ』


 どっちでもいいわよ!



 ざばあああん! がぼぼぼ……


 風の膜に包まれた私達はイタノスケの先導で海に入った。とはいえ私達は丸い膜の内部に浮いているような状態なので、ほとんどすることがない。だからヴィーとナイアは周りの景色に見入っているし、リジーに至っては膜をムリヤリ広げさせ、呪われアイテム磨きに精を出していた。ごめんね、イタチーズ。


『このまままっすぐ行けば遺跡でさあ』


「……妙に海底に詳しくね?」


『あっしらはこの辺りで遊び……おほん、調査していたんでさあ』


 別に遊んでたって言えばいいのに。


『但し、あれは遺跡じゃなく……』


「単なる地形じゃないか、って言いたいんでしょ? 諸説ありってパターンだけど、今は地形説が一般的だって聞いてるし」


『あ、いえ。地形でもありやせんね』


「……? じゃあ何だっていうのよ?」


『おそらくでやすが、あれはダンジョンの跡地でやすね』


「そっか、ダンジョンの………………は?」


『? どうかしやしたか?』


「……この世界にはダンジョンなんて存在しないのよ? 今までのだって、異世界のダンジョンに繋がってたパターンばかりだから」


「サーチ、埋まってたピラミッドはもろにダンジョンでしたよ?」


「あ、そっか。そうだったわね…………ていうか、何でこの世界にダンジョンがあるのよ!? 今さらだけど」


「サーチ姉、そんなの簡単。≪万有法則≫(コトノハ)を使えば、ダンジョンの創造なんて思いのまま」


 ……魔王や神にしか許されないダンジョン創造を、そんな気軽にやられちゃあね……。


「となると、この世界にダンジョンが他にもある可能性がありますわね。不味いですわよ、ダンジョンからモンスターが溢れ出したりしたら……!」


 た、確かに。この世界でモンスターに対抗できる人なんていないわ。軍が出れば対抗できるだろうけど、それまでの被害は計り知れない……!


『大丈夫でさあ。そんなモノがありやしたら、あっしらでぶっ潰しまさあ』


 へ?


『あっしらはこの世界で生きると決めやした。ですから、世界を脅かしかねない存在には容赦しやせん』


 あ、ああ、なるほど。なら大丈夫か。モンスターとしての強さもなかなかみたいだし。


「なら任せるわ」


『わかりやした。あっしらの命に替えても、この世界とコーミさん(むすめさん)は守ってみせやす!』


 ……こんな可愛い外見で啖呵切られても、迫力も説得力も無いわね。


『見えてきやしたぜ。あれがヨナグニシマの海底遺跡でさあ』


「……ホタルん、ライトお願い」


 しばらくご無沙汰だったホタルんがお尻のライトを照らす。その先にはたくさんサンゴが付着した階段らしき地形が見えた。



 とりあえず危険がないことを確認してから、各自バラバラに探索することにした。ていうか、範囲広すぎる。


「……サンゴと岩と時々魚ね」


『海藻もありやすね』


 そうねそうね、海藻もあるわね!


「……ていうか、それ以外に何もないような…………あ、ジョーズだ」


 とはいえシュモクザメだから種類は違う。


『あのヘンテコリンな魚はじょーずと言うんですかい?』


「いや、違うわ。あれはシュモクザメって言うの。結構狂暴なサメよ」


『そうですかい。なら始末しときやす』


 は?


『舞えや真空!』

 キン! キキン!


 イタノスケから白い閃光みたいなのが放たれ。


 スパッ!


 何の罪も無いシュモクザメは真っ二つになって海底に沈んでいった。あああ、ごめんなさいいい。


『あっちにも居やすぜ』

『あっちもでやんす』


 死んだシュモクザメの匂いを嗅ぎつけて集まってきてるし!


『抹殺だ』『抹殺でやすね』『抹殺でやんす』


 キン! キキイン!

 スパパパッ! スパアッ!


「ああ、虐殺が! ジェノサイドがあああ!」


『何かマズかったでやすか?』


 そ、そりゃマズいでしょ!? あ、でも。


「悪いんだけどさ、今真っ二つにしたヤツのヒレを全部集めといてくれない?」


『ヒレでやすね、わかりやした』


 よーし、高級食材フカヒレげーっと!


「……ん? また何か来た…………今度はイタチザメか」


『うぬ!? あっしらと同じ名前ですかい!?』


「あれも狂暴なんだっけ」


『うぬぬ!? あっしらと同じ名前を冠しながら、周りに迷惑をかけるなど不届き千万! 野郎ども、あいつも逃がすな〜!』


『『よっしゃあ、タマとったるー!!』』


 こらこら、弱いモノイジメをするでない。


「あ、だけどヒレは集めといてね〜」


『『『わかりやした!』』』


 ……サメさん達、ごめんなさい。



 それから二時間ほどしてから、念話水晶に連絡が入った。これはヴィーだ。


『サーチ、空間の扉らしきモノを発見しました』


「マジで? どの辺り?」


『そう……ですね。少しお待ちください』


『ちょっと待ってくだせえ、ヴィーさん。仲間の位置なら大体掴んでやすから、こちらから向かいやす』


『そうですか、ならお任せします。ではサーチ、一旦切ります』


 念話水晶を片づけつつ、イタノスケに確認する。


「お互いに位置がわかるのね?」


『へえ。あっしらは普段の声以外にも、サーチさん達の音域からは外れた音が出せやす。その音の反響で、大体の位置はわかりやす』


 イルカと同じ原理ってことか。


『それじゃちょいと失礼して……』


 キュイ! キュキュキュキュ〜…………ィィィィィィィィ!


 うわ、耳にキーンってくる!


 ィィィィィィィィ! ィィィィ!


 …………ィィィィィィィィ!


 あ、たぶん返事だ。


『サーチさん、ちょいと離れた場所ですので、今すぐ出発しや……!?』


 イタノスケは途中で言葉を切って、再び超音波を発し始めた。


 ィィィィィィィィ! ィィィィィィィィ!


「な、何かあったの!?」


『……仲間の声が……突然途切れやした』

フカヒレほしい。

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