第十九話 ていうか、バレちゃった! 仕方ないので、ある程度のことは話す……しかないか。
な、何で紅美がいるのよ!? まだお風呂のはずじゃ……!
「まだ入る振りをして、サーチ達が出たらすぐに後を追った」
そ、そんな!? ちゃんと気配は探って………………あ!
「まさかホンニャンのヤツ、気配を消す訓練まで!?」
「しっかり教わりました」
よ、余計なこと教えてくれちゃって……!
「で、どういう事なのか、ちゃんと教えてもらえる? いつもみたいに私を眠らせたりするのは、無しでお願いします」
眠らせてたの気づかれてたーー!!
「眠らせてたと言うより、サーチ姉が殴り倒しぅごほぅ!」
「殴り倒してないわ! 軽く手刀を当てて気絶させてただけよ!」
「「あ……」」
「? 何よ、二人とも」
「やっぱり……たまに首筋にアザができてるから、おかしいとは思ってたのよ……」
……ヤ、ヤベ。これも気づかれてたのか……。な、何とかして誤魔化さないと……え、ええっと……。
「……はあ、サーチ。これは正直に話した方がいいですよ」
ヴィ、ヴィー!?
「確かに。これ以上誤魔化し続ければ逆にコーミに失礼ですわ」
ナイアぁ!?
「……仕方ないと思われ。今までも強引に誤魔化しすぎた。そろそろ限界と思われ」
……リジーまで……。
「……サーチ、私はあんたと何かしらの繋がりがあることは信じてる。じゃなきゃここまで似る事はないでしょうから」
「……紅美……」
「そんな繋がりを信じてる私に、これ以上嘘はつかないで。お願いだから本当の事を言って」
「………………」
これも……母親の務め……なのかな。
「……わかったわ。ホントのことの一部だけ言う」
「一部だけ!? 何で……」
「これは譲れない。全てを知るということは、あんたをホントに危険な目に会わせることになっちゃう。それはホンニャンにも申し訳ないし、私自身もできない」
「…………」
「お願い、それはわかって。じゃなければ、何も話さない」
「…………わかった。母さんの名前を出されちゃ、従うしかないし」
「……ありがと。私があんたに話せること自体がかなり突拍子もないから、それだけでも十分だろうし」
さて……まずは。
「私達の正体からね。まず私はサーチ。冒険者パーティ始まりの団のリーダーで、職業は重装戦士」
「パ、パーティ? 戦士? 何を言ってるの?」
「で、これが私が唯一使える魔術、≪偽物≫」
剣やナイフを次々に作っては消してみせる。
「……!!」
「ホンニャンに訓練されたあんたなら、これが手品じゃないってわかるわよね?」
さて、次は……。
「ならばワタクシが。ナイア・ルナティクスです。職業は月の魔女」
「ま、魔女!?」
ナイアは簡単だわね。
「ナイア、ホウキで飛んでみせてよ」
「わかりましたわ」
ナイアはホウキで空中を飛び回り、紅美の前に降り立つ。
「ま、ままま魔女だぁ。本物の魔女だぁ! サインしてサイン!」
「え? え? あ、あの?」
「サインサイんぐふっ!?」
とりあえずアルミ製のハリセンで叩いて黙らせる。
「い、いったあ……! な、何でハリセンが金属なのよ!?」
「しょうがないじゃない、金属でしか作れないんだから。一応アルミにしといてあげたんだからね」
「アルミでも金属なら痛いわぁ!」
そりゃそうか。
「さて、それはさておいて「さておくなぁ!」次はリジーね」
ぎゃーぎゃー騒ぐ紅美は放置プレイで。
「えー、私リジーは呪剣士であります! 呪われアイテム何でもござれ!」
「の、呪われアイテム……?」
……これは説明しづらいので……これで終わり。
「はい、次はヴィー」
「サーチ姉、私の説明は!?」
「あとでするわよ。あんたの場合は呪われアイテムの説明から始めないといけないから……はい、次はヴィー!」
「あ、はい。私はへヴィーナ、通称ヴィー。聖術士です」
「せいじゅつしって…………もしかして」
「如何わしい職業ではありませんからね!? 聖なるの聖です!」
「あ、そっかそっか。私はてっきり……あはは」
よかったわね、紅美。そこから先を話してたら、おそらく石にされてたわよ。
「それで私は……普通の人間ではありません」
ヴィーは私をチラ見してくる。たぶん「正体を見せていいか?」ということなので、私は頷いてみせた。
「……私は……サーチの正妻うごぅほぉ!?」
「そういうことを了解したんじゃない! さっさと正体を表しなさい!」
「ごほごほ……わ、わかりました」
ぞわわっ
ヴィーの頭の蛇達が元の太さに集束していき……。
「……!!!」
「私は……メドゥーサです」
それと同時に、ナイアとリジーも≪化かし騙し≫で消していた耳を出す。
「ワタクシは古人族と獣人との混血ですわ」
「私は狐の獣人」
紅美はアゴが外れそうな勢いで口を開けっ放しにしている。
「ついでに私も鳥獣人。もっともダチョウ系だから、空は飛べないけどね」
「そ、そそそれじゃあ、サーチ達は……」
「はっきり言っちゃえば……異世界人です」
……紅美はそのまま崩れ落ちた。
「どう、落ち着いた?」
「う、う〜ん……まだ信じられない感じ」
隠す必要がなくなって気が緩んだのか、ヴィーの頭の蛇はあちこちに伸びてリラックスしていた。
「……ヴィー……この蛇達、何とかならない?」
「少し休ませてください。極細をキープって何かと疲労が溜まるんです」
ナイアもホウキに跨がってフヨフヨしてるし、リジーは呪われアイテムを嬉々として広げている。
「……私が今まで見ていたヴィー達は一体……」
「ほぼ素だったわよ。四六時中演技なんて肩凝るだけじゃない」
「だから自然だったのね〜……ああ、全く気付かなかった」
いやいや、友人がメドゥーサだなんて疑うヤツの方がどうかしてるって……普通は。
「……それで? サーチ達は何でこの世界に来たの?」
「巻き込みたくないから詳細は言えないけど、要は私達の世界からこっちの世界に逃げ込んだモンスターや犯罪者を倒すためよ」
大体合ってるはず。
「……そういう事なら私は関わらないわ。関わったところで戦力にならないし、モンスターなんて会いたくないし」
賢明なご判断、感謝致します。
「但し、一つだけ教えて」
「何?」
「私と……サーチとの繋がりって何?」
うわあ……そう来たか。
これに関しては「母親です」とは絶対に言えない。どうしようかな……。
「ある意味同一人物ですわ」
……ナイア?
「コーミは並行世界という概念をご存知で?」
「並行世界? うん、知ってるわよ」
「始まりの世界から幾つも分岐し、各々に違う世界へと変化しましたの。その中の世界の一つで成長した貴女がサーチなのですわ」
「つまり……私が他の世界でなり得た姿が……サーチ?」
「逆も然り、ですわね」
「あ、そっか。サーチからしたら、自分のもう一つのなり得た姿が私なんだもんね」
「そうですわ」
ナイア、ナーイス!
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