表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
757/1883

第八話 ていうか、裸で戦う訓練をしていたら、突然の砂嵐!

「さあ、どこからでもかかってらっしゃい!」


 砂塵が舞う荒野。凶悪なモンスターを討伐せんと、今三人の美少女戦士が立ち上がる。


「早く終わらせますわよ!」


 気合一閃、ホウキを振りかざして立ちはだかるのは、伝説上の存在と言われてきた月の魔女、ナイア。白い髪に乗ったとんがり帽子と剥き出しの白い胸が風に揺れる。


「……風で揺れているのではなく、震えてるのですわよ?」


「確かに。砂漠って乾燥してるから、風が強いときって何気に寒いのよね」


 そしてもう一人は、運用が難しい職業でありながら、クセのあるスキルを見事に使いこなして敵を屠る、呪いを愛する呪剣士リジー。


「恥ずかしいよ恥ずかしいよブツブツブツ……」


 いつも使っている介錯の妖刀(ムラマサ)と、放てば必ず敵に当たる必中の弓矢を砂に刺し立てて……踞っている。


「ちょっと、前衛のあんたがそんな状態でどうするのよ」


「だ、だって、恥ずかしいし寒いし恥ずかしいし肌カサカサだし恥ずかしいし!」


 ……要は恥ずかしいわけね。


「さっきも言ったけどあんたが前衛なんだからね! 大体まだ戦ってもいないのにこんな状態じゃ、本番はどうするのよ!」



 ……はい、というわけで、私達はまだチョガ・ザンビエールにいるわけではありません。まだテヘランに滞在してます。もう出発する手筈は整ってるんだけど、飛ぶはずだった飛行機が故障した加減で予定が狂ったのだ。で、半日ほど暇ができてしまったので、レンタカーを借りて郊外に移動し、戦いのときのフォーメーションの確認をしていたのだ。

 え? 何でわざわざ郊外に移動したのかって? 誰にも見られたくないからだよ。


「……やはり半裸で戦うのは、想像していたよりも恥ずかしいですわね……」


 胸を出しっぱなしで戦うとこを。



「今回はヴィーがいないからナイアが後衛かしら」


「しかしワタクシの長距離からの攻撃手段は、ホウキを伸ばすくらいしかありませんわよ?」


 あ、そうだったわ。月の魔女って魔女の割に殴り合いが得意なんだっけ。


「……となると、ナイアが前衛か。私はいつもの通りに前衛兼遊撃でいくから……リジーは弓矢での後衛かな」


「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい」


「……とりあえず服着ていいわよ、リジー」


「はいい!」


 高速で服を着るリジー。そこまで恥ずかしいかよ。


「嘆きの皮鎧と飛び降り靴を装着完了。よし、呪いフルチャージ!」


 パンパカパンパンパーン♪ と効果音が鳴りそうな勢いでリジーが復活した。


「私が後衛を担うのね? お任せくだされ、わっはっは」


「……もちろん、素っ裸でよ」


「ガクガクブルブル」


 全く、そんなに恥ずかしいかしらね。


「でもルーデルの話だと、フォーメーションそのモノが無意味になる可能性が高いわ。烈風鼬(トルネードダンス)は好みのおっぱいを見かけると、ただただガン見するだけらしいから」


「つ、つまりワタクシ達の前にモンスターが立ち並ぶんですの? それはそれで嫌ですわね」


「でもそうなっちゃえば殺されても気づかないらしいから」


「意味不明。殺されても気付かないって意味不明」


 私もそう思うけどさ……。


「……あら? あれは……」


 リジーと同様にローブを着込んだナイアが、地平線の彼方を指差す。


「不味いですわね。砂嵐が近付いてますわよ?」


 え、砂嵐?


「……あ、ホントだ。仕方ない、引き上げね」


 砂嵐なんぞに巻き込まれたらたまったもんじゃない。すぐに車に戻り、高速で発車オーライした。


「……うわぁ、砂の壁だ」


 リジーが呟いた通り、巨大な砂の壁が段々と迫ってくる。ていうか、速いな。


「サーチ、もっとスピードを出した方がいいですわ」


「そうしたいんだけどね……砂の上の運転って難しいのよ」


 タイヤが空回ったら万事休すだ。


「……ん? 何ですの、あれは」


 ナイアが急に窓の外を指差す。


「何が……って何?」


「ほら、あそこ。何かが群れで歩いてますわ」


 群れ?


「ラクダ……じゃないわよね」


「違います。もっと小さな生き物ですわ」


 ……あ、あれか。ミーアキャットみたいな。


「確かに集団で砂嵐を見ている……と思われ」


「見てるっていうか、集団で固まって耐えるつもりなんじゃない?」


「い、いや、ちょっと待って。横一列に並んで砂嵐に突っ込んでったよ!」


 へっ!?


「……な、何なんですの、あれ!? 飛んでますわよ(・・・・・・・)!」

 あ、あれムササビ? 腕(前足?)と足の間に膜みたいなのがあって、それで凧みたいに飛んでる。


「……どう考えても、あれが……」


「うん、烈風鼬(トルネードダンス)と思われ」


 何十匹もいる烈風鼬(トルネードダンス)……ただし推測……は、砂嵐の風に乗ったかと思えば、ぐるぐると回りだし。


 ……ゴオオオオオオオオオオオオオ……


「風が渦巻いてる……」


「というより、風を渦巻かせてる、というべきですわ。あれは何かしらの力によって風の流れをねじ曲げてますの」


 ねじ曲げる……ねえ。

 砂嵐は徐々に集束し始め、やがて一本の巨大な竜巻へと変わった。


「もう間違いないですわね。あれが烈風鼬(トルネードダンス)ですわ」


「ねえ、サーチ姉。竜巻の根元に何かいない?」


「何か? あ、あれは……烈風鼬(トルネードダンス)……じゃない?」


 竜巻を囲む形で並んだ烈風鼬(トルネードダンス)達は…………あれってどう見ても。


「踊ってるわね」

「踊ってますわね」

「踊ってると思われ」


 踊りといっても激しいモノではなく、どちからかと言えば……盆踊りくらいのゆったりとした踊りだ。


「……なるほどねぇ、だから竜巻踊り(トルネードダンス)なのか」


「言い得て妙ですわね……それより、どうなさいますか? 折角向こうから現れてくれたんですから、襲撃しますか?」


「うーん……それをしたいのは山々なんだけど、あの竜巻は危険すぎるわね」


「確かに。それに砂嵐もすぐそこ」


「……仕方ない。車に乗ってやり過ごすわよ。ナイア、軽く結界を張ってくれない?」


「お安い御用ですわ。月よ月夜に月見頃。月並みに踊れや!」


 ナイアの詠唱によって車を淡い結界が覆い、風と砂を防ぐ。その間に軽く食事を済まることにした。



「……だいぶ明るくなってきたわね」


 二時間ほどすると、砂嵐も段々と弱まってきた。


「これなら時間の問題ね……よし、今のうちに……」


「……サーチ、もう脱ぐんですの?」


「違うわよ。トップの隙間に砂が入り込んだから、今のうちに取っておこうと思ってね」


 そう言ってビキニアーマーを外し、砂をかき出していると。


「……あら、急に砂嵐が収まりましたわね」


 バリィン!


「!? 結界が破られ……うあっ!?」


「ど、どうしたの……げえっ!!」


 ナイアの結界が破られると同時に、車の窓にたくさんの烈風鼬(トルネードダンス)が張りつき。


「……わ、私のをガン見してるわね……」


 目を皿のようにして、私の胸を見ていた。怖。

スケベイタチ登場。イメージ的にはミーアキャットみたいなの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ