表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
750/1883

第一話 ていうか、日本に帰国したからには、リジーに日本文化に触れてもらうんです。

「はぁ〜……ようやく渋谷に到着」


 エジプトなんて行ったあとだと、余計に日本の狭さを痛感するわ……。


「サ、サーチ姉、道の縞模様は何!?」


「ああ、それは横断歩道って言ってね……」


「サ、サーチ姉、あの赤と青の光は何!?」


「ああ、あれは信号と言ってね……」


 まだまだこの世界に慣れていないリジーは、田舎から出てきたばかり並みにキョロキョロしてる。


「……懐かしいですわね。ワタクシ達もこの世界に到着したばかりの頃は、リジーと同じでしたわね」


 ナイアは自動販売機に戦いを挑んでたわね。


「本当に。今から考えたら恥ずかしいったらありません」


 ヴィーはスマホを三つ握り潰してから、ようやく力加減を理解したわよね。


「それが今じゃ、ナイアは普通にコンビニでコーヒー買うし、ヴィーはパソコンを使いこなしてるし」


「コンビニは向こうの世界に逆輸入すべきですわ!」

「スマホ・パソコンは向こうの世界に逆輸入すべきです!」


 コンビニはともかく、スマホ・パソコンはムリです。


「……だけど念話水晶を改良して、世界中で誰でも使えるような代物にできれば……」


「な、成程! インターネットと同様の念話ネットワークが構築できますね!」


 ……ヴィーのヤツ、自分の夢を見失ってない?


「わかりました。私が大統領になった暁には、共和国内に念話による通信ネットワークを構築します!」


 ……良かった。向こうの世界で商売始めます、とか言うと思った。


「ならワタクシは向こうの世界でコンビニを開店し、世界中に商売ネットワークを構築しますわ!」


 商売始めるのはナイアか。ていうか、商売ネットワークって……。


「サ、サーチ姉、見て見て! まるで人がゴミのようだ!」


 こら、スクランブル交差点の真ん中で叫ぶな。ていうか、それを知ってて横断歩道と信号を知らないのかよ。



「こ、これがサーチ姉達の新しいアジト!?」


 アジト言うな。


「うわ、凄い。建物の前に人がいっぱい倒れてる!」


 ていうか、こいつらも懲りないな。何人かは見た覚えがあるし。


「……はあ、仕方ない。全員身ぐるみ剥いで、表通りに捨てるわよ」


 ……帰国したばかりなのに一汗かいた私達は、近くの銭湯へ繰り出すことにした。


「……サーチ姉、極悪」


「うっさい。毎回シビれさせられてるのに、懲りないあいつらが悪い」


 財布の中身は全員パンパンでした。主に紙で。ムフフ。するとスマホを弄っていたヴィーが、私達の拠点の情報を見つけだした。


「……ありました。あのビル、新たな心霊スポットに登録されてますよ」


「……ていうか、元々心霊スポットだったんだけど?」


「いえ。この記事には『怪! 近寄ると意識不明に陥る、呪われたビル!』となっています」


「……身ぐるみ剥がされる、っていうネタは載ってない?」


「それは……ありませんね」


 中途半端な情報載せて煽ってるだけか。


「とはいえ、あんまり注目されるようになっても厄介ね。違う手を考えますか」


「そうですね、後々検討しましょう」


『あの〜〜〜!!』


「「「「はい?」」」」


『私にわかる言葉で話してくれないかな!?』


 ……以上、紅美を放置しての元の世界の言葉での会話でした。


「あーはいはい。ごめんごめん」


「そ、それでも英語!? 私あんまり得意じゃないんだけど」


 いやいや、それだけしゃべれれば通訳になれるって。


「そんな事ありませんわ、コーミの英語は十分に流暢でしてよ」

「そうです。あまりご自分を卑下なさる必要はありませんよ」

「そうそう、胸を張るべし、と思われ」


「あ、あ、あんた達がいるから自信無くすんでしょうが! スペイン語を数日で覚えたヴィーとナイア、英語を半日でマスターしたリジーには言われたくないっ!!」


 ……確かに。


「気にしないで、紅美。そういうあんたも北京語と日本語と英語、それに古代エジプト語が話せるじゃない」


「十ヵ国以上喋れるサーチにも言われたくないっ!」


 いやいや、古代エジプト語しゃべれるだけでも大したもんだよ。


「℃¥$¢★☆§@*&#%♀!!」


 ……はい?


「古代エジプト語で『これ喋れて実用性ある!?』と言ってます」


「……無いわね……ていうか、何でヴィーがしゃべれるの?」


「それは……秘密です」


 ヴィーも何でそれを知ってるのよ!?



「「「「「はあ〜〜……」」」」」


 ……昔懐かしい、古き良き銭湯はまだ残っているのだ。私達が拠点ビルを探していた際に偶然発見したんだけど、それ以来私は足しげく通っている。


「いいですね、このニホンジョーチョ溢れる雰囲気」


「……ヴィー、日本情緒の意味わかってる?」


「えっと……ワフー! みたいな感じですか?」


 某ポータルサイトみたいに言うな。和風だよ。


「コーミ、何故壁画が書かれているんですの? しかも青い山を」


「あれは富士山って言って、日本の象徴的な山なのよ。青いのは気にしないで」


「ですから何故壁画が?」


「そ、それは…………検索(サーチ)してください」


「サーチに聞くんですの?」


「いや、そうじゃなくて……」


 ……何を漫才みたいなことしてるのやら。


「うお、ブクブク」


「リジー、それはジャグジーよ。泡の刺激で血行を良くするの」


「へぇ〜……がぼ」


 潜っちゃダメ!


「ぶは……サーチ姉、あれは?」


「ん? ああ、あれは電気風呂。弱い電気刺激で血行を良くするのよ」


「へぇ〜……なら試しにあばばばばばばばばばばっ!?」


「あ、あれ、どうしたのリジー?」


「しびびびびびびびびっ!」


 試しに指を……いでえっ!!


「こ、この風呂漏電してるみたいよ! 誰か従業員呼んでえええええっ!!」



「しび、しびび、しびびびびっ」


 リジーはまだシビれが残ってるみたいだけど、大事には至らなかった。


「本当にごめんなさいねぇ。ウチの風呂も老朽化しててねぇ」


「いえいえ、全然大丈夫ですよ」


「これ、お詫びに。みんなで飲んでちょうだい」


 待ってました、風呂上がりのビール!


「い、いいんですか?」


「いいよいいよ。ここももう少しで閉めるからね」

「「ええっ!?」」


 日本語のわかる私と紅美だけが反応した。


「お客さんはいるんだけどね、老朽化した設備を直せるほどじゃないんだよ」


 ……そっか。


「……要は……設備が直れば続けられるんですね?」


「? まあ……そうだね」



「ヴィー、ホントに直せるの?」


「原因さえ分かれば何とか」


「……これは、この配線全部老朽化してるわ」


「わかりました、≪修復≫(リペア)


「次はこれ、あれ、それ」


「はい、≪修復≫(リペア)≪修復≫(リペア)≪修復≫(リペア)……サーチ、約束は守ってくださいよ?」


「……はいはい」



 次の日、外観はそのままなのに設備が新品同様になってるのを見て、銭湯のおかみさんは卒倒しかかったらしい。まあこれで営業は続けられるみたいだから、良かった良かった。


「……サーチ、何で腰が痛そうなの?」


 ヴィーに聞け。

銭湯も立派な日本文化?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ