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幕間 偶然の再会?

「お、あれじゃないか?」


 暗黒大陸に入って半月、驚異的なスピードで前進してきた私達は、ついに目的地であるアサンリバーにたどり着きました。


「怖いくらい順調でしたね」


 旅の間にすっかり打ち解けたターニャちゃんを抱っこしながら、窓の外を伺っていました。アサシン時代に数回訪れた事があるので、懐かしく感じます。


「それで、アサンリバーのどこで待ち合わせするんですか?」


「え? 知らねえ」


 …………へ?


「ま、エイミアのことだ、街で一番目立つ場所にいりゃそのうち現れるだろ」


「ちょ、ちょっと待ってください。あれから細かな打ち合わせはしていないんですか?」


「してねえ」

「してにぇえ」


 即リジーに連絡をしました。



「……遅いですね」


 イブニハリーに着いて三日が経ちましたが、未だにリル達と合流できません。


「確かに私達の方が早く到着する日程でしたけど、あまりにも遅すぎます」


 サーチを早く救出しなければならないのに……日に日に焦りが募るばかりです。


「リジー、どうですか?」


「……駄目。誰も来ないと思われ」


 梯子を使って辺りを見回していたリジーの返答に、ため息をつくしかありません。


「……イブニハリーから出た方がいいのでしょうか」


「エイミア姉、どこで合流するか打ち合わせした?」


「え、してないです」


「…………は?」


 あ、珍しいです。リジーが呆けています。


「……エイミア姉、リル姉と細かい事を何も決めずにここに来た?」


「え? そうですけど?」


 コテンと首を傾げると、リジーが大きく大きくため息を吐きました。


「……いい。私がエカテル姉に念話する」


 ……私、何かいけなかったでしょうか?



 途中で割り込みます、サーチでーす。

 携帯を使う人には経験だろうけど、お互いに電話し合うとお互いに話し中になるじゃない? それって念話でも同じなのよねぇ。

 で、こうなるわけだ。



 ……ツーッ、ツーッ、ツーッ


「……繋がらないです」


「仕方ない、もう少し待つか」



 ……ツーッ、ツーッ、ツーッ


「……繋がらないと思われ」


「仕方ありません、もう少し待ちましょう」



「……遅い! 遅すぎる! もう一週間だぞ!」


「ま、まさかエイミア様達に何か」


「んなわけねーだろ。エカテル、まだ連絡つかねえのか?」


「え、ええ」


 何故かずっと話し中なんです。


「仕方ねえ、次の街まで行ってみるか」


「次の街という事は……イブニハリーですね」


「ああ。そこまで進んでみよう」



「……遅いですね。もう一週間経ちました」


「……まさかリル姉達に何か」


「そんな事はあり得ませんよ。それよりリジー、エカテルとは連絡できませんか?」


「……不思議。何回かけても念話中」


「……仕方ないです、次の街まで行ってみましょう」


「次の街ならアサンリバーと思われ」


「わかりました。その街まで行って聞き込みですね」



「……たく、エイミアのヤツにも困ったもんだ」


「最初に落ち合う場所を決めなかったのが、そもそもの間違いなんですよ」


「へーへー、悪かったよ」


 ……あ、川の音が。


「リルさん、ちょっと水を汲んでいきませんか?」


「ん? ああ、いいぜ」

「いいじぇ!」


 ターニャちゃんの頭を撫でながら、私達は道を外れました。



「……もうすぐアサンリバーですね。リルも意外と抜けてますからね、困ったもんです」


「…………エイミア姉だけには言われたくないと思われ。お互い様」


「はいはい、すみませんでした………………んん……」


「ん? どうしたの、エイミア姉」


「ちょ、ちょっとね………リジーごめんね、少し離れるわ」


「少し離れるって…………ああ、お花摘みあうあうあう」


「お花摘みって言わないで! 言わないで!」


「わ、わかった。わかったから首から手を離してぇ!」


「え? あ、あらら、私ったら……オホホホホ、リジー大丈夫?」


「ゲホゲホゲホ!」


「なら失礼致しますわ、オホホホホ」


「…………エイミア姉、何故『お花摘み』に反応?」


 ガサガサ


「ん? 誰かいる?」


「きゃああああああ! 毛虫が毛虫が毛虫があああああ!」


「ああ、エイミア姉だ……仕方ないと思われ」



「……ん? 今の叫び声、エイミアに似てたような……?」


「リルさーん、行きますよー」


「あーはいはい、行く行く」



 はーい、再びサーチでーす。このときにすれ違ったのが痛かったのよねー。

 で、このすれ違いが更なるすれ違いを生んでいくことになりまーす。



 カランカラン


「いらっしゃい」


「……ち。エイミアのヤツ、どこ行きやがったんだ。とっくに街を出てるなんて」


「すれ違いになっちゃったみたいですね」

「でしゅにぇ!」


「あ、お子さん連れかい。奥に個室があるが、よければどうぞ」


「ありがたいな。じゃあ使わせてもらうよ……行くニャ、ターニャ」


「うんー!」


「じゃあ注文も個室でお願いします」


「はーい、ごゆっくりー」


 ……カランカラン


「いらっしゃい」


「あーもう、リル達はどこにいったんでしょうか」


「それよりお腹すいた」


「すいません、すぐに食べられるモノあります?」


「あるよー。カウンターへどうぞー」


「「はーい」」



 ……という感じで、超々ニアミスまでしてたわけだ。



「……で、あんた達がここで合流するに至った理由を説明して」


「あ、はい。私とリジーはリル達を追って再び街を出ようとしたら、突然開いた空間の亀裂に飲み込まれ」


「違う違う、エイミア姉が覗き込んで吸い込まれた」


「リ、リジー! それは言わないでって……!」


「……エイミアらしいわ。で、リルは?」


「こっちも同じ理由だよ。エイミア達を探して街を出ようとしたら、突然空間の亀裂が……」


「それにターニャちゃんが飛び込んでしまって、やむを得ず私も」


「……なるほどね」


「で、空間の亀裂を出た先になぜか複数の冒険者がいてよ、全員で斬り合ってた」


「私達にも襲いかかってきましたので、全員眠りながら痺れる薬で黙らせました」


 ……眠るんなら、痺れる必要ないんじゃない?


「私達もです。亀裂を出た先で冒険者に襲われて」


「拙者の介錯の妖刀(ムラマサ)の錆にしたでござーる」


「殺したの?」


「峰打ちでござーる」


 錆になってないじゃん!


「……で、この通路でバッタリ出会ったら……」


「「天井からサーチが降ってきました」」


 ……女戦士を斬り殺してから、オリハルタイト製のスコップで壁を削ってたら、通気孔を発見したのよ。で、そこをズリズリ進んでたらエイミア達の真上に到達したのだ。


「……ま、全員無事に合流できたわけだし。良かった良かった」

「「よくありません!」」

「エイミア、お前らがジッとしてないから!」

「リルがジッとしてないから!」

「ちょっとちょっと、ケンカは止めなさいよ」

「「そもそも異世界に飛ばされたサーチが悪い!」」

「何で私に飛び火!?」


 ……何はともあれ。私達は無事に合流した。

会話ばかりになっちゃった。

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