第十三話 ていうか、ピラミッドはまだまだたくさんあります!
一応三大ピラミッドの周りの小さいのも調べてみたけど、やっぱりハズレだった。
「……どうやらギザの三大ピラミッドじゃないみたいね……」
ここだったらめちゃくちゃ楽だったんだけどな……。
「こうなるとシラミ潰しで調べていくしかありませんね……」
はああ……やっぱそうなるのか……。
それから私達は。
「まずはサッカラかな。ここに元祖ピラミッド、ジェセル王の階段ピラミッドがあるわ」
「階段ピラミッドって……メキシコの太陽のピラミッドみたいなモノですの?」
「そんな感じ。このピラミッドって、有名なイムホテプが設計したんだって」
「……誰ですか?」
……さあ。紅美に聞いて。
数あるピラミッドをホントにシラミ潰しに。
「次はダハシュールの屈折ピラミッドね。スネフェル王だったかな」
「な、何ですの、あの珍妙な形のピラミッドは?」
「諸説あるらしいわ。ピラミッド造ってる途中でスネフェル王がヤバい容態になったから、角度を変えて早く完成させたとか、重量的に耐えられなくなったから、角度を変えて崩壊を回避したとか」
「……どちらであっても間抜けな理由ですね……」
「でもこのスネフェル王のおかげで、ギザの三大ピラミッドへと続いていくのよ。屈折してる上の部分ってまさに私達が知ってるピラミッドの形でしょ」
「た、確かにそうですわね」
ピラミッドだけじゃなくマスタバと呼ばれる小さいお墓まで回り。
「さて、あれがスネフェル王の三つ目のピラミッド、赤いピラミッドね」
「……お待ちになって。三つ目のピラミッド?」
「そう。スネフェル王のピラミッドは三つあるの。さっき観た屈折ピラミッドにこの赤いピラミッド。で、メイドゥームっていうとこにあった崩壊したピラミッド」
「崩壊!?」
「ピラミッドが崩壊する事自体はよくあるのよ。どっちにしてもスネフェル王は最初のピラミッド→屈折ピラミッド→赤いピラミッドって具合に成長してったんじゃない?」
「ず、随分とお金がかかる成長ですわね」
「馬鹿にはできないわよ。そのおかげで息子は有名なピラミッドを作ったんだから」
「む、息子って?」
「クフ王よ」
「こ、ここからギザの三大ピラミッドに繋がっていくのですか……」
私達はエジプト中のピラミッドを観光……もとい調査して回った。果てにはアブシンベル神殿まで観光……いや調査をしたけど、空間の扉らしき歪みは結局見つからなかった。
ちなみにだけど、観光……調査の間にいろいろ解説していたのは、私ではなく紅美である。
で、その間に私は何をしていたかと言うと……。
『ホントに何も知らないのね?』
『し、知りません!』
エジプト内の盗掘者をシラミ潰しにあたっていた。さすがは古代エジプト文明発祥の地だけあって、盗掘者の組織まであったわ。
『わかったわ。じゃあ私が聞いた情報を知ってそうな盗掘仲間を紹介して』
世界に広げよう、盗掘仲間の輪。
『え、えええええええ!?』
『時間がないのよ、早くして』
短剣で頬っぺたをピタピタ叩く。
『は、はいい! ちょちょちょっとお待ちください!』
男はスマホを取り出して電話する。
『…………ああ、俺だ。ちょっとお客さんに代わる』
そう言って差し出してきたスマホを奪い、私自身で話す。
『もしもし、実はちょっと探してるモノがあるんだけど……』
適当に言いくるめて会うように段取り、スマホを切る。
『はい、返すわね。一応言っとくけど、今から会う男が知らなかったら……』
ザクンッ
投げたスマホを短剣で両断する。
『……あんたもこうなるわよ』
『…………あ……あ……』
ふん、恐怖のあまり何も言えないみたい。この場を離れようとすると。
『お、俺のスマホがぁぁぁ! 今まで育ててきたゲームデータがぁぁぁ!』
そっちかよ!
……だけど気持ちはわかる。ごめんなさい。
「ふう……やっぱり情報が出てこないなぁ……」
紅美に付いていきつつも、合間を縫って盗掘者を急襲する。そんなことを繰り返して五日目、ついにお目当ての情報が飛び込んできた。
『……確か……サッカラの近くで砂に埋もれたピラミッドがあったって聞いたな』
キタ――――(゜∀゜)――――!!
『そ、それ何年くらい前の話?』
『わからねぇなあ。オレも爺様から聞いた話だし、その爺様も爺様から聞いたって言ってたし』
……となると、百年以上前の話か。
『ありがと、助かったわ!』
『うぉ、こんなにチップをくれるのか? へっへっへ、毎度ありぃ』
男の言葉を半ば無視して、紅美達のあとを追った。
「……というわけで、サッカラ近くに未確認のピラミッドが埋まってるみたい」
「ならそのピラミッドも調査してみる必要がありますね」
「でもどうやって探すんですの? サッカラも広大ですわよ?」
「それはヴィーの探査聖術が頼りだけど……」
私とナイアに注目されたヴィーは、一度咳払いをする。
「そんな便利な聖術、あるはずないでしょう」
「……ですわね。ならこの方法は「まった!」……はい?」
ヴィーの手を取って顔を近づける。
「ヴィー、超音波みたいなモノを飛ばして地面の空洞を探すことはできない?」
「で、できます。地下水を探す為の聖術がありますから……か、顔が近いです!」
「その聖術でいいのよ。大変かもしれないけど、サッカラの周辺を調査してくれないかな?」
「あ、あの、でも」
「ナイアも供に付けるから」
「ワ、ワタクシもですの!?」
さりげなく巻き込んだナイアは放置。
「歩くのが大変だったらナイアと飛びながらでいいし、魔力が無くなったら≪魔力変換≫で補給してもらえばいいし」
「は、はあ……」
「だからお願い、ね。ふーっ」
「はああああああああん! だ、だから耳は駄目です……」
ヴィーの耳に唇を近づけたまま、コソッと。
「……夜は鍵を開けて待ってるわよ?」
「わかりましたああ! ヤりましょうイキましょう!」
ちょっとヴィーさんや、一部カタカナになってますよ?
「ほらナイア、今すぐにサッカラへ行きますよ!」
「え!? ちょ、ちょっとお待ちになって……! あ、あーれー!」
……ナイアは引き摺られるようにして連れていかれた。南無。
「……あ、いたいた。サーチ」
「紅美、ホテルとれた?」
「うん、言われた通り部屋は二部屋、私とサーチ、ヴィーとナイアの組み合わせでいいのよね?」
「オーケーオーケー。バッチリよ」
ま、夜中にヴィーが忍び込んできても構わないけど、同じ部屋に紅美がいるから何も起きないでしょ。
「さーて、紅美、近くにプールがあるから泳いでこようか?」
「あ、いいわね。行く行く♪」
……ヴィーとナイアが戻ってきたのは二日後だった。お疲れー。
サーチ、いつかバチが当たるぞ。




