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第十三話 ていうか、マーシャンが冷静沈着な凄腕冒険者なわけがない。

 “八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトの一つ、樹木の迷宮闇深き森(ディープフォレスト)

 世界各地にあるダンジョンの中でも、比較的新しくできたダンジョンだ。普通時間をかけて成長するダンジョンではあるが、闇深き森(ディープフォレスト)は異質だ。この森はある日突然(・・・・・)ダンジョン化したのだ。

 元々は緑深き森(ディープフォレスト)と呼ばれる豊かな森林地帯で、エルフの王族と称されるハイエルフの都があったことで知られていた。どうして豊かな恵みをもたらしていた緑深き森(ディープフォレスト)が、瘴気を吐き出しモンスターを生み出す闇深き森(ディープフォレスト)へと変貌したのか? 生まれたばかりのダンジョンがなぜ“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトの一つとなり得るほど大規模なのか? 未だに謎とされている。



「……ていうのが闇深き森(ディープフォレスト)のあらましかな」


「……よく知ってますね」


「ああ……ビキニアーマーと巨乳と温泉しか頭にないと思っておぐぼおっ!」


「……あんた人を何だと思ってんのよ……」


 私の膝を鳩尾に受けて、リルはのたうち回っている。


「サーチの一撃も酷い気がします」


「……この間マーシャン相手にスキル≪撲殺≫を発動したのはどこの誰だっけ?」


 こらエイミア。吹けない口笛吹いて誤魔化すな。



 私達はマーシャンを追って闇深き森(ディープフォレスト)へと向かっている。ギリギリで乗れた乗合馬車で近くまで来て……あとは歩いて三日ほど。

 周りもだんだんと木が増えてきたから……あと半日くらいだと思う。

 正直ねぇ……普通の森と闇深き森(ディープフォレスト)との境目(・・)がわかんないのよねぇ……。


「リル……変なこと聞くけど……」


「聞きたいことはわかるけど……ムリだって、わかるわけないだろ……」


 ……ですよね。


「ここから4㎞ほど先に、結界に似たせいでんきを感じます。これって違いますか?」


 意外な伏兵がいたあ! 妖○アンテナがピコピコと指し示していて、けっこう強力な反応らしい。


「この辺りに村はないはずだな……距離的に間違いないだろ」


 良かった……これで準備もしやすい。

 ……ん?


「ちょっと待って。エイミア、何で一回目にきたときは気がつかなかったの?」

「……そう言えばそうだな」


 エイミアは少し困った顔をしながら。


「たぶんですけど……マーシャンが影響してるかと……」


「でも一回目のときもマーシャンもいたわよね?」


「……あのときから……様子がおかしかったです……」


 ……そうだ。

 なぜか急に単独行動しだしたり……妙にテンションのアップダウンが激しかったり……。


「あの時に私達をわざと闇深き森(ディープフォレスト)へ誘導した……?」

「そうだな……マーシャンが何をしたいのかはわかんねえが……」


 ……マーシャンが何をしていたのか……。


「……そうだ。そうでした。マーシャンは何か拾い集めてました!」


 拾い集めてた?


「えっと……」


 エイミアは地面を探って石を拾いあげた。


「確かこれと同じものを」


「何これ?」


「ちょっと見せてみろ……クンクン」


 リルが匂いを嗅ぐとものすごく嫌な顔をした。


「うわっ! これ魔瘴石だぞ!?」


 魔瘴石?


「簡単に言えば瘴気を発する石ですね」


 瘴気を……?


「ねえ……もしマーシャンが闇深き森(ディープフォレスト)に入れば……存在からして目立つよね?」


「そうだな。あれだけ瘴気が漂っている森だ。ハイエルフの聖なる気は目立つさ……あっ!」


「もしかして魔瘴石を集めてた理由がそれなら……」

「ああ。私達と一回目にここに来た理由はそれだな」


「あ、あの〜……?」


 一人わかってない子がいた!


「いい? マーシャンはたぶん闇深き森(ディープフォレスト)を一人で攻略しようとしてる。ここまではいい?」


 エイミアが頷く。


「だけど森のモンスターは強敵揃いなうえ、ハイエルフの聖なる気は瘴気だらけの闇深き森(ディープフォレスト)では目立つ。ヘタすればダンジョンコアへたどり着く前に力尽きてしまいかねない」


 ……まだわかんないかな?


「……だったらどうすればいいか? 出来るだけ力を温存すればいい。つまりはモンスターと遭遇しにくくなればいいのよ」


 エイミアの頭上に電球が灯る。やっとわかったか。


「なるほど! 魔瘴石を集めて自分の周りに瘴気を発生させて……」


「森の中を目立たずに移動する……ていうわけよ」


 まさに「木を隠すには森の中」てやつね。


「でも……私達もマーシャンを見つけにくいってことですよね?」


 あー……。


「そうか……そうよね。どうしよう……」


 ……まさかここで詰むとは……。


「心配すんな。まったく問題ない」


 またもや意外な伏兵がいたあ!


「マーシャンの匂いは完全に判別できる」


「さすがニャンコ獣人はみゃっ!」

「ニャンコ言うな!」


 ……ごめんなさい。


「どちらにせよ……問題は解決! 頑張ってマーシャン追うわよ!」

「「おー!」」



 こうして。

 マーシャンを追跡すること二日。

 ついに、マーシャンを発見し、行動を開始した。



 あとで露見することではあるが。

 当然、マーシャンがそんな小難しいことを考えて行動するわけがない。

 ……お互いの盛大な勘違いが後の悲劇へと繋がる……。



 ほとんどマーシャンの悲劇だけど。

明日からいよいよダンジョン攻略?

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