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第三話 ていうか、本命のマチュピチュへ!

 結局展望台からいくつかの地上絵を眺めることができた。うん、それで良しとしておこう。


「うぅ〜、飛行機から見たかったよ〜!」


「いいわよ、あの飛行機でよければ」


「あれはもういい」


 さすがの紅美も、あのアクロバット遊覧飛行はもう御免なようだった。



 これは余談だけど、この日を境になぜか地上絵が濃くなったり修復されてたりしたらしい。別に紅美が寝てる間に私とヴィーとナイアで悪巧みしたわけじゃない。ないったらない。



「……というわけで、再びマチュピチュに向けてしゅっぱーつ!」

「「「おー!」」」


 再びバスに乗り込み、マチュピチュを目指す……が、乗り込んだとたん。


 ムアアアアン……


「「「「うっ!」」」」


 暑い。どうやらこのバス、エアコンが故障しているらしく、乗客がそろって汗だくである。


「……次のバスにしましょうか」

「「「そうしようそうしよう」」」


 別に私達には簡易護符(シンプルアミュレット)があるから暑さ対策は万全なんだけど、周りの汗の匂いが……。


 ブッブーッ


 どちらにしても今のバスは行ってしまったので、次のバスを待つしかない。


「うぅ〜……あっつ〜……」


 あ、そうだった。紅美は付けてないんだったわ。


「……前から思ってたんだけどさ、サーチって全然暑そうにしてないよね?」


 ぎくっ。


「そ、そりゃ私は格好が格好だし」


 ちなみに今の私の格好は、ビキニアーマーと大差ないくらいの露出だ。


「……その割には日焼けしてないわね」


 ぎくっっ。じ、実はこれも簡易護符(シンプルアミュレット)の効能だったりする。


「……それよりヴィーさん」


「はい?」


「サーチよりは露出は控えめですよね? 暑くないの?」


「そりゃ暑いですよ。しかし気の持ちようでどうとでもなりますよ」


 …………あ、そっか。蛇は変温動物だっけ。


 がぶっ

「いったあああい! な、何するのよ!」


「……サーチ? 私は日向ぼっこする必要はありませんからね?」


 あ、あははは、何で私の考えてることがわかるかなぁ……。


「どうしたのサーチ!? 何が痛いの?」


「「な、何でもないです……」」


 ヴィーは急いで私のお尻に噛みつかせていた蛇を引っ込めた。


「……? ま、まあいいけどさ……ナイアは……暑くなさそうね」


「それはそうとコーミ、貴女はワタクシ達に『さん』付けしたりしなかったりですが、どうしたいんですの?」


「え? そうだっけ?」


「ええ。現にワタクシは呼び捨て、ヴィーさんには『さん』付けでしたわよ?」


「うーん……あまり意識してなかったなあ……」


「どちらかに統一しなさいな。端から見たから滑稽ですわよ?」


「こ、滑稽!? そこまで言われるような事かな…………まあいいや。気を付けるわ」


「ええ、そうなさいまし」


 …………。


「……で、暑くないの?」


 あ、ナイアのヤツ「誤魔化せませんでしたわ」って呟いた。


「……ワタクシは基本的にワンピース一択ですから、そこまで暑くありませんわ」


 そうなのだ。ナイアは何故か異様にワンピースにこだわっていてる。確かに暑い場所でワンピースは、風通しも良くて快適だろう。


「それに下着の風通しもいいしね!」

 バサッ!

「見よ、元祖ワンピース縛り!」


 頭上までワンピースをめくり上げ、縛って固定する。


「ちょっ、サーチ!?」


「ほ、本当に風通し良さそう」

異世界(こっち)に来てから下着にも拘ってますからね」


「ほ、ほどいてくださいな!」


 まあいいじゃん。私達以外誰もいないんだし。


 ブォォォォン! ボボボボボボボボ……!


 あ、でっかいトラックだ。


『……ひゅ〜! いい眺めだねぇ!』

『姉ちゃん達何してんだい?』


 ん? 後ろの荷台はがら空きね。


『ねえ、後ろには何か積む予定があるの?』


『ん、ああ。今からクスコへ行って荷物を受け取ってくるんだよ』


 やりぃ!


『ね、後ろ乗っけて。私達もクスコまで行きたいのよ』


 男は笑って荷台を親指で差した。OKみたい。


『ありがとー!』


 紅美とヴィーに乗るよう促し、ナイアは縛ったまま荷台に放り込んだ。


『よっし、行くぜぇ。風に飛ばされないように気を付けな!』


 ブォォンォォン! ボボボボボボ!


 ふう、良かった。これなら風のおかげで暑い思いしなくて済むわ。

 ん? 急に寒気が……?


「……さあああああちいいいいい……!」


「げっ! ナ、ナイア、いつの間に……!?」


 ナイアの隣には複雑そうな顔をした紅美が……ってまさか!?


「サーチ、やっぱりこういう事はマズいと思うわ」


「つ、つまりナイアを解放したのは紅美なわけね……うひゃあ!」

 どがぁん!


 私のいた場所にハンマー型ホウキが振り下ろされる。


『こらあ! 荷台で暴れてるんじゃねえ!』


『す、すいませんん! 「ナイア、さすがにそれはマズいって!」』


「ぬぅ……! な、ならば仕方ありませんわ! とりゃあああ!」

「え……ぐふぅぅ!」


 私の腹にタックルが決まる。な、なかなかいい当たりね……!


「さあ、マウントポジションは取りましたわ! たっぷりと仕返しして差し上げます?」


 な、何をする気……?


「えい!」


 ナイアは私のシャツを脱がせ……ってえぇ!?


「下着姿をトラックの荷台から晒してあげますわ!」


「な……!」


「「……あ、サーチはユニ○ロの」」


 み、見るなぁぁ! 私はシンプルなヤツが好きなのよ!


「よ、よくも……! なら全部剥いてやるぅ!」


 マウントポジションから逃れて背後に回った私は、ナイアのブラのホックを外す。


「きゃ!? や、やりましたわね!」


 ぐいっ! ぶちぶち!


「ちょちょちょちょっと!? さすがに破くのはどうなのかし……ら!」


「ぎゃあああ! ショ、ショーツは! ショーツはあああ!」


 キャットファイトに発展した私達を見て、紅美が焦り出す。


「い、いいんですか!? 早く止めないと!」


「今の二人を止めたところで、とばっちりを受けるだけですよ?」


「そ、それでも……私、止めてくる!」


 互いにボコりあう私達に駆け寄り、必死に制止する。


「止めてよ、二人とも! まずは平和に話し合おう!」


「うっさい! 元はあんたがナイアを解放するからいけないんじゃない!」

「もう少し早く解放してくだされば、こんな事にはなりませんでしたわ!」


「え? え? わ、私が悪いの?」


「「紅美が悪い」んですわ!」


「そ、そんなぁ!」


「というわけで、紅美も剥いちゃえ!」

「協力致しますわ!」


「え? え? ちょ、待っ……きゃあああああああ! 助けて、助けてええ!」


 紅美の視界にヴィーが入る。


「ヴィーさん、助けてえええ!」


「………………南無」


「ヴィーさあああん!?」



『……おい、見てるか?』

『ああ……これは神からの思し召しか?』


 この日、一番得をしたのは……このトラックの運転手だろう。



 四時間後、私達はクスコに到着した。

運転手、役得。

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