第二十二話 ていうか、私と紅美はやっぱりそっくり「うっほほーい♪」
「それでは、かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
さーて夜はお待ちかね、メキシコ原産のテキーラで乾杯であーる!
え? 未成年じゃないかって? 実質私達は二十歳を遥かに通り越してるからいいんだよ!
「……ぷはぁぁ! た、たまんない!」
「こ、これは……」
「麦芽酒とはまた違った趣ですわね」
「だよねー。何てったって原料がサボテンだもんねー」
「「ええ!? サボテンからお酒が!?」」
「ちょっとちょっと、違うわよ。テキーラの原料はサボテンじゃないわよ?」
「へ? そうなの?」
「名前は忘れたけど、確かサボテンとは全く違う種類の植物だったはず」
「そ、そうなんだぁ〜……流石サーチ、よく知ってるねぇ」
……実は私も「テキーラはサボテンからできてるの!」と言って、メキシコ人に訂正されたことがありまして……。母の威厳を守るためにも、絶対に紅美には言えないけど……。
「そ、それはそうと、サボテンが食べられるのは確かよ」
「サボテンを!? と、棘はどうするの!?」
「取ってあるに決まってるでしょ! いくら何でもトゲは食べらんないわよ!」
「あははは……ですよね〜。ビックリした」
「というわけで、早速頼んでみます。『すいませ〜ん、ノパルの卵炒めください』」
『かしこまりました』
注文を済ませると、紅美がメニューを見てウンウン唸っていた。
「? どうしたの?」
「う、うん。やっぱり全然わかんなくて」
「……これがタコス。これがカルネ・アサーダ……要はメキシコ風ステーキかな」
「あ、それそれ! 軽いね浅田を頼もうよ!」
「カルネ・アサーダだよ!」
私が珍しくつっこみを入れていると、ヴィーとナイアはクスクス笑っていた。
「……何よ」
「いえいえ」
「仲が良いですね」
「そりゃそうよ! 従姉妹だもん……チュッチュッ」
「ちょ、ちょっと、止めなさい紅美! って、あん、ど、どこ触っとるんじゃああああ!」
ごっっっ!
「ふぐゃあ!」
……あ。手加減忘れた。
「こ、紅美、大丈夫? ぎゃあ、白目剥いてる! ヴィー、回復! 今すぐ回復! お願いしますー!」
打ち上げが終わって紅美は飲み過ぎて寝てしまった。
「大半はサーチの一撃が原因ですわぐっふぅぅ!?」
余計なことは言わない!
「と、とにかく紅美が都合よく寝ちゃったところで、次の目的地を決めたいと思います!」
「サーチ、ナイアも寝てしまいましたが?」
「……ヴィー、お願い」
ヴィーの≪回復≫でナイアが飛び起きる。
「つ、月の女神様に手招きされましたわ……」
おいおい、黄色いお花畑には行かないでよね!?
「サーチ、少し≪急所攻撃≫が発動してましたよ?」
マジで? 気をつけよ。
「えー、おほん! 次の目的地なんだけど、一旦日本に戻るか、このまま次の目的地へ直行するか……」
「私達は構いませんけど、要は紅美次第ですね。大学に行かれてるようですが、そちらは大丈夫なのでしょうか?」
「大学は自由な時間が取りやすいから大丈夫だろうけど……」
休みすぎて単位を落とさないように。留年したりしたら、母さん許さないからね。
「ま、それは本人の判断に任せましょ。もし中国に戻るって言うなら、送りがてら中国へ言って、そこから中東へ行くのも手ね」
そうなれば行き先をバベルの塔に変えるだけ。
「わかりました。でしたら行き先になるであろう、マチュピチュとバベルの塔の事を教えていただけますか?」
「あ、そうですわね。バベルの塔は想像できますけど、マチュピチュは見当もつきませんわ」
……ナイア、ヴィーと一緒にパソコンで検索してたんじゃなかったの?
「……まあいいわ。まずはマチュピチュだけど、すんごい高地にある街の遺跡」
「………………で、続きは?」
「以上」
「「い、以上なんですか!?」」
ていうかね、マチュピチュってインカ帝国の遺跡なんだけど、文字が残ってないから詳しいことが一切わかんないのよね……。
「で、では現地に言って魔力反応を辿るしかありませんね……」
「では次はバベルの塔ですわね。どのような塔ですの?」
「塔っていうけどね、すでに跡形もありません」
「「はいい!?」」
「ていうかね、伝説の建物であって、実在したかも不透明です」
「「はあああっ!?」」
「……なんてね。バベルの塔自体は伝説上のモノだけど、それの元になったといわれる遺跡が他にあるわ。ウルのジッグラトよ」
「ウ、ウルのジッグラト?」
「ええ。要は高い場所っていう意味らしいんだけど、このウルのジッグラトが一番有名で、これがバベルの塔の元ネタって説があるの」
「そ、それではそこに空間の扉がある可能性があると?」
「太陽のピラミッドとククルカン神殿を間違えてたくらいだから、ウルのジッグラトをバベルの塔と混同する可能性はあるんじゃない?」
「ま、まあ、無くは無いですわね」
「これも現地に行ってみるしかないわ」
……結局は紅美の選択次第ということで落ち着き、結論は朝に持ち越しとなった。
で、翌朝。
「おっはよ〜、皆!」
「おはよ」
「おはようございます」
「お早う御座います」
「そ、それぞれに個性があるわね……」
そう?
「それよりサーチ、次はどこに行くの?」
「……ていうか、大学は大丈夫なの?」
「あー大丈夫。もう休学届け出したから」
い、いつの間に!?
「……ま、まあいいわ。次はペルーね」
「く、黒船?」
「それはペリーよ! あんたホントに大学生なの!?」
「じょ、冗談よ、冗談」
……目が泳いでるのが気になるけど……まあいいわ。
「ペルーといえばマチュピチュにナスカの地上絵、ウユニ塩湖かしら」
「ナスカの地上絵! ウユニ塩湖!」
「それにクスコもあるわね」
「わぉおおおぅ! 行きたい行きたい行きたああい!」
「わかったわかった。ならまずは飛行機でリマまで行きましょう」
「うっほほーい、ナスカにウユニにクスコだぜぇ♪」
「……こうやって見ていると、本当にサーチと紅美はそっくりですわね」
「確かに。あの喜ぶ様は、温泉に入る前のサーチとよく似ています」
「あ、そういえばサーチ。ペルーって温泉大国なんだって」
なぬっ!?
「クスコとチチカカ湖の中間地点くらいにアグアスカリエンテスっていう温泉があるんだって。地元民くらいしか来ない秘湯らしいよ」
「うっほほーい、温泉温泉アグアスカリエンテス温泉ー♪」
「……本当にそっくりですね」
「……ですわね」
明日は久々の閑話。それから新章になります。