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第二十話 ていうか、ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ!

「あ、あれって空間の扉よね?」


「そうですね。間違いなく」


「…………穢れを撒く者を焼いた跡にあれがあるってことは……」


「……間違いなくあの扉からゴキブリ達は飛び出してきていますね」


「ああもう、面倒ですわね。要はあの空間の扉内はゴキブリがわんさか居るという事ですわね」


「……正解。で、おそらくはダンジョンというわけで……」


「も、もしかして中に入るんですの!?」


「……正解」


 ……しばらくの間、私達は沈黙に支配された。


「ま、まあこういう場合は公平に、全員でダンジョンに入れば……」


「……紅美はどうするんですの?」


 うっ!


「それに聖杭の効果が切れる頃じゃありませんか? 替えも無いんでしょう?」


 ううっ!


「「「…………」」」


 ……再び沈黙が辺りを支配した。


「……な、なら母親である私が残る」

「……な、なら聖術が使える私が残ります」

「……な、ならワタクシは……どうしましょう……」


「「はい、ナイアは決定」」


「ひ、卑怯ですわ! こういう場合こそ公平な立場で決めるべきではありませんの!?」


 ……そうね。なら。


「だったらジャンケンで決めましょう」


「「じゃ、じゃんけん?」」


 そ、そこからか。私は二人にジャンケンについて説明する。


「成程。確かにそれなら公平ですね」

「わかりましたわ。でしたら最初に勝った人が残る、という事ですわね」


 ナイアの言葉に私が頷いたところで。


「……ならいくわよ。最初はグー……ジャンケンポン!」


 全員パー。


「く……」「むぅ……」「はぁ……」


「「「……あいこでしょ!」」」


 全員グー。


「ち……」「むむ……」「はぁぁ……」


「「「あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!」」」


 ……三十分後。


「な、何でずっとあいこが続くのよ!?」

「し、知りませんよ!」

「い、いい加減疲れてきましたわ……」


 し、仕方ない。ならば。


「……ちょっと改良ね。ジャンケンをグーとパーのみにしましょう」


「ああ、それなら……」

「早く決まりそうですわね」


「ならいくよ〜……最初はグー、ジャンケンポン!」


 全員グー。


「く……」「む……」「はぁ……」


「「「あいこでしょ!」」」


 全員パー。


「「「…………あいこでしょ!」」」


 全員パー。


「……ジャンケンは止めましょう」

「「そうしましょう」」


 ……なら……くじ引きか。


「この三本の棒の中に、一本だけ当たりがある。それを引いた人の勝ちね。当たりくじの先には×印がつけてあるわ」


「わかりました」

「これなら一瞬ですね」


 私は割り箸を三本取り出し、一本だけ先に傷をつける。


「じゃあ始めるわ……はい、これヴィー」


「は、はい」


「はい、これナイア」


「ど、どうもですわ」


「はい、くじの結果……私が当選! じゃあ二人に行ってもらうということで」

「「ちょっと待ってください!」」


 紅美の元へ向かおうとしていた私を、二人が止める。


「な、何よ。一発勝負でいいでしょ?」


「そういう問題ではなく!」

「サーチ、シャツの裏を見せてください!」


 ぎくっ。


「な、何のことかしら〜……「……石化しますよ?」すんませんしたっ!!」


 私は懐から割り箸を出して渡した。


「途中ですり替えるんじゃないか、と思ってました……」

「ワタクシもですわ……」


 し、信用ないなぁ……。


「……ならヴィーがくじの管理をすればいいじゃない!」


「……いえ、辞退します」


「何でよ!?」


「サーチでしたら目の前でくじをすり替えるくらい、訳ないでしょうから」


「そうですわね。サーチに本気を出されたら、ワタクシ達では見通せませんわ」


 マジで信用ないな!


「わ、わかったわ。ならアミダくじでいきましょう」


「「あ、あみだくじ?」」


 ……やっぱり説明しなくちゃならないか。手短にすませよう。


「成程。しかしそれは、管理者がインチキできるのでは?」


「だからいい方法がある」


 私は地面に三本の縦線を書いた。


「名前を書く欄をヴィーが、横線を書くのを私が、当たりの欄をナイアが。それぞれ見えないように書けば公平でしょう?」


 私は紙を取り出して再び三本の縦線を書くと、三枚に分割する。


「離れた場所で書いて一斉に持ち寄り、この三本線に書き込めば誤魔化すことはできないでしょ?」


「……はい、これなら問題ありません」

「ワタクシも賛成ですわ」

「よし……それじゃ製作開始!」


 ……ていうか、ダンジョン入るのにどんだけ時間かかってるのよ、私達……。



 五分後、アミダくじは完成した。


「……それじゃいくわよ」


「「はい」」


「……アミダくじ〜♪ アっミダくじ〜♪」


 線は順調に私のところへ……来ないぃぃ! 隣のナイアだぁぁ!


「お〜っほっほっほ! ワタクシの日頃の行いの結果ですわ!」


「く……仕方ない、行こうか、ヴィー」

「仕方ありませんね、腹を括りましょう」


「お〜ほっほっほっほっほっほひゃあ!?」


 高笑いするナイアに膝かっくんをしてから、私達はダンジョンに潜った。



「……あれ? ずいぶんと真っ黒なダンジョンね?」


 真っ黒っていうか、これは……煤だ。


「おそらく私の≪聖火波≫ホーリー・ファイアウェーブを吸い込んだのでしょう」


「なるほどね……なら中のモンスターもある程度は倒してるかな」


「ええ、ある程度は」


 先に進めば進むほど、ある程度どころではなかった。



「……地下三階くらいか。まだ真っ黒ね」


「……まさかここまで≪聖火波≫ホーリー・ファイアウェーブが届いていたとは……」


「相当な高温だったようね。モンスターの骨すら残ってない」


 さっきは宝箱の残骸もあった。中身は当然焼失。


「……もしかして守護神(ガーディアン)まで死んでたりして……」


 その「もしかして」も現実になった。



 ……最下層、≪守護神≫(ガーディアン)の部屋。


「……これはまた、こんがりと焼けたもんね……」


 そこには真っ黒な胴体をさらに黒くして息絶えた巨大ゴキブリがいた。例のS級ゴキブリよりは小さいから、たぶんA級くらいのモンスターだろう。


「……こいつと戦わずにすんでラッキーだったわ」


「サーチ、ここに石板がありますわ」


「どう、ヴィー。本物?」


「これは……間違いありません、本物の≪万有法則≫(コトノハ)の碑文ですね」


 よし、任務完了!


「それじゃ脱出しましょ。こんなゴキブリだらけのとこ、一秒でもいたくないわ」


「あ、待ってください。宝箱が」


「どうせ黒焦げでしょ?」


「ええ……中身も焼けてますね。マントみたいですが」


「そんなの用無し。行くわよ」



 これ以降、穢れを撒く者が出現することは無くなったそうだ。

三人が三人ともジャンケンが弱い。結果、決まらない。

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