表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
719/1883

第十八話 ていうか、行方不明のヴィー達を探してチチェン・イッツァへ!

「……遅い!」


 別行動になってから三日目。いくら何でも遅すぎる。


「これは……何かあったと見るべきね」


 ヴィーとナイアのことだから、モンスターに殺られたとは考えにくい。あり得るとしたら、(トラップ)に引っ掛かった可能性か。


「……どちらにしても、これ以上待てない。私もチチェン・イッツァへ行くしかない!」


 準備をしていると、シャワーを浴びていた紅美がタオル一枚で出てきた。な、なかなか艶っぽいじゃない。


「あれ、サーチ。どっか行くの?」


「あまりにもヴィー達の帰りが遅いから、チチェン・イッツァへ行ってみるわ」


「へ!? な、なら私も「ダメよ!」……え?」


「今回はお遊びじゃない。ヴィー達は何かしらの……そう、事件に巻き込まれた可能性がある。そんな場所に行くのは、あんたじゃ危険よ」


「そ、そんな! ならサーチも危険じゃない!」


「あら、私は大丈夫よ。だって」


 私は近くにあった果物ナイフを手にして、紅美に近づく。


「サ、サーチ? 何を」


 果物ナイフを上段に構えると、紅美に向かって振り下ろした。


 シャキン! パラ……


 紅美を包んでいたタオルは、真っ二つになって落ちた。肌を一切傷つけることなく。


「私、強いから。あんた、これくらいのこと(・・・・・・・・)はできないと、マジで死ぬわよ?」


 止まっていた紅美はもう一本の果物ナイフを手に取り……へ?


「いぃぃぃ〜……やっ!!」


 ざくんっ!


 壁にかけてあった絵画を真っ二つにする。壁に傷つけることなく。


「……ふう。どうかしら。それくらいできる(・・・・・・・・)けど?」


 ウ、ウッソだぁぁ!


「私、護身術として、義母から散々仕込まれてるから」


 ホンニャああああン! 何てことしてくれてるのよ!? ていうか、護身術でアサシンの技を教えないでくれるかな!?


「…………はぁぁ。銃も扱える?」


「人並みには」


「じゅ、銃を人並みにはって……まあいいわ。付いてくるって言うけど、ホントに命の危険があるのよ? それでも来るの?」


「うん。サーチが危険に晒されるって言うなら、私も行かないわけにはいかない」


 ……ち。誰に似たか知らないけど、一度言い出したら聞きそうにないわね。


「…………わかったわ。だけど約束して。命の危険を感じたら、あんたはすぐに引き返して。私にはあんたをホンニャンの元へ無事に帰さなきゃならない業務があるんだから」


「……わかった。サーチの手は煩わせないわ」


「OK。ちなみにだけど、あんたって車の運転は?」


 聞かれた紅美の顔がひきつる。


「め、免許持ってるけど……三台車潰した」


 ……マジで大丈夫かな……。



「っっぎゃああああああ!!」


「うるさい! 黙ってなさい!」


 もうレンタカーだなんて言ってられなかったので、近くの中古車屋で手頃なピックアップを言い値で買った。何しろ時間がない。


 ガタガタガタガタガタガタ!


「サ、サーチ! ここって道じゃないんじゃない!?」


「そうね! 道は道でも獣道だと思う!」


「だ、大丈夫なの!?」


「大丈……」

 めりっ ごきっ

「サ、サーチ! 何かヤバい音したわよ!」


「だ、大丈夫よ! ただ左のサイドミラーが吹っ飛んだだけ」


「それってヤバいじゃん!」


「心配しないで! 大丈……」

 ごりごりごり!

「ちょ、ちょっとサーチ! エンジンルームから煙が出だしたけど、ホントに大丈夫なの!?」


「だ、だいじょばない……かも……」


 そのまま一時間ほど走ったところで、ピックアップは天寿を全うした。チーン。


「ま、あと少しでチチェン・イッツァに着くから、歩くしかないわね」


「……歩きって最高だと思う……」


「ちなみにだけど、紅美はジャングルを歩いた経験は?」


「流石にない!」


「そう、なら気をつけて。足元」

「ひぁーっ!!」

「底なし沼だから……って遅かったか」


「サ、サーチ! へるぷみぃぃぃ!」


 ……たく、先がおもいやられる……。



 そのあとも。


「わぁ、カラフルなカエル」

「紅美、それはヤドクガエル。めっちゃ猛毒」

「ぎゃあ!」



 紅美のトラブルメイカーぶりは発揮されまくり。



「きゃあああ! タランチュラタランチュラタランチュラあああ!」

「大丈夫よ、タランチュラってそんなに毒性強くないから」

「な、何でサーチが一目散に逃げてるわけ!?」



 距離的には一時間くらいで着けるはずだったんだけど。



「うっわ、すごいアリ。めちゃくちゃいるわ」

「紅美逃げるわよ!」

「え、何で? たかがアリだよ?」

「それはグンタイアリ! 猛獣だって避けて通るわよ! ヘタしたら人間だって噛み殺されるわよ!」

「え゛!? て、痛い痛い痛い! 噛まれたぁぁぁぁ!」

「は、早く逃げるわよ!」



 ……三時間半もかかってしまった。



「……ぜえ、ぜえ、ぜえ……」


「サ、サーチ、大丈夫?」


「ぜえ、ぜえ……だ、だいじょばない……」


 ムダに体力を使ってしまった。ていうか、大半はあんたの騒ぎが原因だからね?


「……あ、見えてきた。あれがチチェン・イッツァ?」


 テレビでよく見た景色。間違いない。


「あれがチチェン・イッツァのククルカン神殿よ……ふう、ちょっと一休みしましょ」


 朝早く出てきた甲斐もあり、まだ日は高い。少しくらい休憩してもいいだろう。


「え、でもヴィーさん達が!」


「落ち着きなさい。今私達が焦ったって、何もいいことはないわ。まずは体力を回復してから行動したほうが、絶対に後々のためになるわよ」


「…………っ……わ、わかった。サーチの言う通りにする」


「よしよし。年長者の言うことは聞くモノよ」


「年長者って……サーチ、一体何歳なのよ? それだけの落ち着きぶり、絶対に見た目通りの年齢じゃないわよね?」


「あら、レディに年齢の話はご法度よ……はい、紅茶」


「ありがと……ズズッ」


 …………。


「ふう、美味し…………あれ? 何か身体が……くぅ」


「……効くの早。薬に耐性無さすぎでしょ」


 眠った紅美の周りに聖杭を刺し、モンスターや猛獣が近寄れないようにしておく。


「さてと、何て瘴気なのよ……相当なモンスターがいるわね」


 これだけの瘴気となると……ゾンビ系かな? ミスリルの短剣を作り出し、チチェン・イッツァ内へと入っていった。


 ……ザザッ

 ざくんっ!


 背後からの襲撃を避けて、そのまま短剣を振り下ろす。手応えあり!


 キシャアア!


「蛇!? しかもこいつはアナコンダのゾンビじゃない!」


 周りを見ると、ジャングル内に生息する動物がポツポツと動き回ってる。ただ、明らかにゾンビ化してるけど。


「ゾンビってことは……死霊魔術士(ネクロマンサー)?」


 この世界にもゾンビの伝説はあるけど、ここまで本格的なヤツじゃない。なら、異世界の?


「……≪聖々弾≫ホーリー・ホーリーバレット!」


「今の声は……! ヴィー! ヴィー、どこにいるの!?」


「え!? サ、サーチ?」


 ああ、いた! 良かった、ボロボロだけど元気みたい!


「ナイアは?」


「ワタクシも無事ですわ!」


 あ、向こうにいた。ナイアも元気そうだ。


「一体何があったの?」


「そ、それが……最悪なモンスターに遭遇しまして」


 最悪なモンスター?


「何? ドラゴン?」


「それが……どうやら『穢れを撒く者』がいるみたいなのです」

穢れを撒く者?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ