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第八話 ていうか、万里の長城は観光客やら人民軍やらモンスターやらで大騒ぎ!

 なぜだなぜなんだわたしのばすがなぜなんだああそれよりわたしたちはかえれますのどうなんですのぎゃあぎゃあぎゃあ!!


 ボロボロになったバスの前で大騒ぎする運転手さんと乗客を尻目に、万里の長城を見つめた。


 ばきゅーんばきゅーんずだだだだだだだうぎゃあああぐわあああぬぼぅぅぅぅぼぅぅぅぅとつげきとつげきとつげぐはあああたいちょおおおお!


 いやはや、バスの前の喧騒に負けない騒ぎが、長城内で起きてる模様。


「あの様子から察するに、人民軍はけちょんけちょんにされてるっぽいわね……」


 あ、長城から一人落ちてきた。


「な、何なんですの、あのばきゅーんばきゅーんというのは?」


「それにずだだだだだだだですよ? うるさい事この上ないですね」


 あ、そっか。ヴィーとナイアは銃を見たことないんだっけ。あれ? でも向こうの世界には大砲はあるのよね?

 ……ま、いっか。


「私が切り札に使ってた大砲は覚えてる? あれの超小型版よ」


「大砲の小型版!? では小砲なのですか?」


「…………ネーミングはどうでもいいんだけど……せめて銃と言ってね」


「わかりました、ジューですね」


 何か肉が焼けたみたいな……まあいいんだけどね。


「では、ずだだだだだだだはなんですの?」


「あれは自動小銃……アサルトライフルって言ったほうがいいかな? 要は銃弾を連射できるヤツね」


「れ、連射! それは強力ですわね……因みにですが、それは当たると痛いんですの?」


 痛いどころか死にます。


 ちくしょおおうがああああどっかああああん!


 あ、おそらくは手榴弾を使った模様。死んだゴブリンがいっぱい落ちてきた。


「このままだと長城が崩れかねないわね……ヴィー、もう一回眠らせてくれる?」


「わ、わかりましたが……MPが……」


「ナイア、補充を」


「わかりましたわ。≪魔力変換≫ルナティック・チャージ


 魔素を魔力に変換し、強制的にヴィーに供給する。


「……あ、ああああ……来ました来ました来ましたあああ!」


 ちょ、ヴィーがつられてハイテンションに!?


「あはははははは! 行きます、≪超聖々弾≫スーパー・ホーリー・ホーリーバレット!」


 へ? スーパー?


 ずぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅん!!

 ちゅどおおおん! どがああああん! ばごおおおおん!


 お、おいおい、何ですかこの自動大砲はああ!?


「あら、失敗しましたわ。魔力酔いですわね」


「魔力酔い!?」


「ええ。過剰に魔力が供給されますと、人によっては泥酔した時と同じ状態になりますの」


 き、聞いたことないんですけど!? ていうか、ヴィーは泥酔したときは艶っぽくなるというかエッチになるというかげふんげふん。


「と、とにかく止める方法は!?」


「ご安心なさいな、魔力酔いは魔力が減れば自動的に治ります……ほら」


「あ、あら? 私ったら何て事を!」


 あ、元に戻った。


「ヴィー、混乱するのはあとでいいから、早く眠らせちゃって」


「え? あ、あああ、はい! ≪超強制睡眠≫スーパー・ドリーミング!」


 え、えええ!? この場合のスーパーって……?


「たたた大変ですわ! 全員永眠しかかってます!」

「ぎゃああああ! 起こせ起こせ起こせぇぇぇ!」



「た、大変申し訳ありませんでした!」


 平謝りのヴィー。今度こそ酔いが覚めたようだ。


「……マジでさ、流石に≪全員強制永眠≫スーパー・ドリーミングは止めてね?」


「はい、禁呪にします!」


 さらに平謝りのヴィー。半永眠状態からの回復に必死で奔走してたんだし、流石に許してやるか。


「それよりも、はい」


 魔法の袋(アイテムバッグ)からMPポーションを取り出し、ヴィーに投げ渡す。


「え? え?」


「今の≪回復≫(リカバリー)連発でMP消費したでしょ? 飲んでおきなさいよ」


「え……こ、これ、とっても高価なモノなんじゃ……」


「いいのいいの。リングナイの商店街でカート売りしてた安物だから」


 その証拠に瓶には「半額」のシールが貼ってある。


「は、半額ですか……それでも高いんじゃ」


「いいからいいから、さっさと飲む!」


「は、はい!」


 ごっきゅごっきゅごっきゅ


「……何で半額だったんですの?」


「え? 賞味期限切れ」

 ぶぴっ!

「きゃ! き、汚い!」

「げほげほげほ……ごっほごほごほ!」

「しょしょしょ賞味期限切れぇぇぇ!?」


 激しく咳き込むヴィーと「信じられない……」という表情で固まったナイア。い、一体何だってのよ?


「えええMPポーションの賞味期限切れ品を飲ませては駄目ですわ!」


「え? 何で? 消費期限じゃないんだから、飲んだって大丈夫でしょ?」


「確かにMPは回復しますし、味にも変化はありませんわ! 但し賞味期限切れのMPポーションは、リミッターが無くなるのですの!」


「リ、リミッター?」


「本来のMPポーションはとてつもない量の魔力を含有していますの。ですから特別な溶液で希釈して売っているのですわ」


「は、はあ……」


「MPポーションの賞味期限は、この希釈用の溶液の効果の期限を表していますの。つまり賞味期限が過ぎたMPポーションは、必要以上にMPを回復してしまうのですわ!」


「え…………そ、それって……」


「……魔力酔いが起きますわ。まず間違いなく」


 ……私達はゆっくりとヴィーを振り返ると。


「あは……あはは……あはははははは!」


 完全に目が据わっていた。



 ちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどおおおん!


「わあああっ!」

「ぎゃああああ!」


「あははは! |≪超究極聖々弾≫《スーパー・ウルトラ・ホーリー・ホーリーバレット》!」


 ずぎゅずぎゅずぎゅずぎゅずぎゅずぎゅぅぅん!

 ずどどどどどどどどどおおおん!


「ちょ、ちょっと! まだMP切れないの!?」

「そ、相当賞味期限切れが進行してたのですわね!」


「あっはははははは! それそれそれ〜!」


 どっかんどっかんどっかああああん!


 う、うわ……長城が跡形もなく崩れていくぅぅぅ……!


「ユネスコの皆さんごめんなさい、考古学者の皆さんごめんなさいいい!」


「そ、それよりも早く止めないと、世界が……!」


 世界は極端だけど、確かに近隣の町に被害が出かねないわね……!


「ちょっと乱暴な方法だけど、私がなんとかするわ!」


 いまだに聖術を乱発するヴィーの背後に回り、おもいっきり胸を掴む!


「はあん! あはははははは!」


 き、効かない!? けどちょっとだけ反応があった。なら先っぽを……!


 きゅっ

「はああああん! あ………あは、あはははははは!」


 くぅ、惜しい! なら最終手段!


「あはははははむぐぅ……!? む、むー! むー…………んふ……」


 口を塞がれたヴィーは、トロンとなって静止した。え? 何で口を塞いだかって? 聞くなっ。



「……はにゃあ……」


「今度はどうしたのかしら?」


「たぶんサーチ酔いですね」


 その背後で。


「あ゛あ゛あ゛! 世界遺産がぁぁぁ! 人類の宝がぁぁぁ!」


 目覚めてすぐに粉々になった長城を目にして、ひたすら涙する紅美の姿があった。マジですまんかった。



 夜のうちにヴィーが≪修復≫(リペア)で直しましたけどね。そのあとで私が大変な目に会いましたけどね!

サーチは自業自得。

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