第二話 ていうか、飛行機が大ピンチ! いつかマーシャンぶっ殺してやる!
すう……。
くう……。
くかーっ。
……バチ……バチバチ……
すう……。
くう……。
くかーっ。
バヂバヂ……バチィ!
ひゅ〜……ずどぅん!
「きゃ!?」
「わっ!?」
「ひえっ!?」
がくんっ ガタガタ!
「な、何!?」
『ぎゃあああああ!』
『ひ、飛行機が! 墜ちる! 墜ちるぞおおっ!』
「サ、サーチ! 底に大きな穴が空いたようですよ!」
ウ、ウソでしょおお!?
「……よし、無事に届いたようじゃ」
「ほ、本当に送ったんですか!? リジーの呪いの剣」
「ただただ重くなるだけの呪いの剣。流石にいらないと思われ」
「あのクッッサイ缶の仕返しじゃ!」
「「お、墜ちるぅぅぅっ!!」」
い、いくら私達でも、飛行機が墜ちれば一溜まりもないわよ!
『めいでい! めいでい!』
『えすおーえす! えすおーえす!』
『つつつー、つつつー、つつ!』
いい感じにパニクってる人ばっかだけど、最後のは口でモールス信号?
「何て感心してる場合じゃなかった! ヴィー、聖術で風を起こして機体を安定させられない?」
「や、やってみますが……間違いなく魔力が足りません!」
「ナイア、ヴィーに≪魔力変換≫で魔力供給をお願い!」
「任されましたわ!」
「私は穴が空いた場所を≪偽物≫で塞いでみる!」
どんだけ穴がデカいかによるけど、ミスリル辺りなら十分に耐えられるはず。席を立って、下層へ下がる方法を探した。
乗務員は教えてくれなかったので、適当な場所に穴を空けて潜っていく。しばらくすると急速に酸素濃度が下がっていくのを感じた。
「くっ!」
前世では高所での耐久訓練もしたことがあるので、低酸素でもある程度は動ける。機体に空いた穴を確認すると、機体の金属が広がるイメージをした。
「イ、≪偽物≫!」
メキメキメキ……バキキ!
……よし、閉じた。これで機体も安定するはず。私はこの場から離れ……。
「……られないんだった! しまった、≪偽物≫には有効範囲があるんだったああああ!」
羽扇のおかげでかなり広くできるけど、ヴィー達の元に戻るのはムリ!
「……仕方ない。着陸するまで我慢するか。寒いのは簡易護符で何とかなるし……」
早めに着陸しますように……と心の中で祈った。
しかし皮肉なカタチで、私の願いは叶えられることとなる。私が穴を塞いだときには、飛行機は絶望的な状況に陥っていたのだ。
ポーン……
『お客様にお知らせ致します。当機は機体の異常により、これ以上飛行する事が不可能な状態です。幸い近くに空港がありましたので、緊急着陸致します』
機内は絶望的な雰囲気に覆われる。
「……サーチは穴を塞げたのでしょうか」
「間に合わなかったようですわね」
サーチが無事なのは魔力反応で確認できます。こうなっては仕方ありません。
「風を止めて、機体全体に抗物理結界を張ります。湯水のように魔力を消費しますので、ナイアお願いします」
「わかりましたわ、お任せくださいませ」
詠唱しながら飛行機を膜で被うイメージをします。
「……≪聖なる聖盾≫!」
サーチなら≪聖なる聖盾≫とか縮めるのでしょうね……。そんな事を考えながら、全力で機体をガードします。
ポーン
『ど、胴体着陸します! 衝撃に備えてください! か、神の御加護を!』
パイロットさんがそれ言っちゃ駄目ですよ!
「違いますわ! ヴィーの努力に感謝を、が正解ですわ!」
こ、答える暇はありません! 魔力最大開放!!
「たああああああっ!!」
ズズズズズゥゥゥン!!
「…………ふはぁ」
『……おい、無事だ』
『や、やった……やったぞ!』
『無事に着陸した! 着陸成功だぞおおお!』
わああああああっ!
……つ、疲れました……。
「ヴィーさん、御苦労様ですわ」
ナイアが差し出したオシボリを受け取り、苦笑いしつつ頷きます。こんな責任重大な聖術の行使、二度と御免です……。
「……ヴィーがうまくやってくれたみたいね」
何とか≪偽物≫をコントロールして、壊れてたタイヤを動かすことはできたけど……。
「はは……胴体着陸されてたら、私が危なかったわ……」
よくよく考えたら、私のいる場所って……飛行機の一番底なのよね。
「はぁ〜……疲れた」
ゴロンっと横になる。すると。
「……んん?」
視線の先に、いかにも呪われたような剣が見えた。
「フフフ……さぞサーチは慌てたじゃろ」
バチ……バチバチ……
「む、来おったな」
バヂバヂ……バチィ!
ひゅ〜……さくっ
「む? 単なるナイフ?」
「サーチからですか? 私が読みます」
カサッ ガサガサ
「……ふむ……ふむ……えええっ!?」
「どうしたのじゃ、エイミア?」
「…………マーシャン!」
「な、何じゃ、釘こん棒を構えて!」
「マーシャンが送った剣のせいで、サーチ達は死にかかったそうですよ!?」
「ええっ!?」
「たっっっぷり仕返ししてくれ、とのサーチからの指示です!」
「待て! 待つのじゃ! 話せばわかる!」
「問答無用! ≪鬼殺≫ぅぅぅぅぅっ!!」
ずどがぁぁぁぁん!
「ぎぃあああああああああああ!!」
「……愛してるわよ〜、エイミア」
「? 何か仰いまして?」
いえ、何でもありません。
「無事に到着しましたけど……ここはどの辺りでしょうか?」
めんどくさかったんで、着陸してから脱走したけど……はは……見覚えがあると思ってたわ。
「ここは中国……たぶん上海の近くね」
「しゃ、しゃんはい?」
「そう……私がアサシンになってから、拠点にしていた町よ」
「……と、いう事は……」
「そう……私が反逆して、組織を道連れに……死んだ町」
上海近郊の町は、私が死んだときと何も変わってなかった。元々私が住んでいたビルの近くの店もそのままだ。
「この角を曲がった場所が私の拠点だったビルよ………ってまだあるし!?」
外観はまるで変わっていない。
「あれがサーチの塔ですの?」
塔って……。
「……んん、まあ、間違ってないわ」
今は何になってるのやら……。
ガチャアアアン!
『もう知らないわよ! バーカ!』
『おい、ちょっと待てよ!』
ん?
『待てと言われて待つバカはいないわよ、バーカ!』
……え?
「う、嘘!」
「ほ、本当ですの!?」
『え……えええ!?』
「え……えええ!?」
わ、私が……もう一人!?
そっくりさん?




