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第十八話 ていうか、エイミアが軍の半数をブッ飛ばしてくれた。

「半減って……一体どういうことなの!?」

「ワタクシにもさっぱり……あ、サーチ!?」


 横からナイアの念話水晶を引ったくると、エイミアに話しかけた。


「エイミア、どういうことなの!?」


『うぐっ、ひっく……ごめんなさい……びえええっ』


「あんたは大丈夫なの?」


『わ、私が悪かったんですぅ……びえええっ』


「だから。ケガはない? 無事なの?」


『無事かって……ボロボロですよぅ…………びえええっ』


「ボロボロって……まさかケガしてるの!?」


『はい………心にいっぱい』


「精神的な話をしてるんじゃないの! 肉体的なケガの話をしてるのよ!」


『ひぇ!? ……び、びええええええっっ!』


「泣くなぁぁぁぁ! 質問に答えろ!!」


『びえええっ……ぐすん、ぐすん……あ、足が。足が痛いです』


 足!?


「ど、どうなの、ケガの具合は!? 斬られた? それとも魔術?」


『うぐうぐっ、えぐ……階段で……』


 階段?


『転んで擦りむいて……痛いです』


「…………」


『ひ、ひぇ!? サ、サーチが怖いですぅぅぅ!』


「……コロス」


「サーチ、落ち着いてください! 鉈を片手に表情を消して迫られたら、誰だって怖いですよ!?」



 結局ヴィーがエイミアの元へ赴き、宥めすかして話を聞くことになった。


「……サーチ、まるで般若のようでしたわよ?」


「般若って……ナイアも十分失礼だわよ!?」


「いやいや、ナイア姉はかなりセーブした表現」


 セーブしたって……。


「……ならリジー、あんたには私の姿はどう映ったのかしら?」


「ん〜…………三日三晩飲んだくれて、涎を滴ながら寝る嘆きの竜(ローレライ)の酷い寝顔くらい」


 例えが突飛すぎて意味わかんないわよ!


『……天罰覿面』


 ……へっ?


 …………ヒュルルルル……ずどがあああん!

「あぎゃあああああぁぁぁぁぁ…………がくっ」


「リ、リジー!?」


 なぜか突然大爆発を起こし、リジーは黒焦げになって気絶していた。


「い、一体何が……?」


 気のせいかもしれないけど、〝嘆きの山〟の方から飛んできたような……?


『正解』


 !!?



「何故私が行ったり来たり!?」


 突然重傷を負ったリジーの治療のため、とんぼ返りで戻ってきたヴィー。ご苦労様です。


「うわぁ……これは酷いですね。地面に掘った穴に放り込まれて、≪聖火弾≫ホーリー・ファイアバレットを数十発炸裂されたくらいの怪我ですよ」


 えっぐ!


「それにしても、誰がこんな事を? ≪偽物≫(イミテーション)専門のサーチは違うでしょうし、月魔術(ルナマジック)でこんな事ができるのですか?」


「ワ、ワタクシじゃありませんわよ! いくら月魔術(ルナマジック)であっても、万能ではありませんわ!」


「そう……ですか。なら一体何が起きたのですか?」


 私とナイアは顔を見合わせて。


「「……天罰?」」


 と言うしかなかった。



「それで、軍の被害状況はヒドいの?」


 エイミアから事情を聞いたであろうヴィーは、めっちゃ微妙な顔をした。


「……? ヴィー、どしたの?」


「あ、いえ。何と説明したらいいのか……」


「……説明が必要なような、難しいこととは思えないんだけど?」


「そう……なんですけどね。あまりにも特殊なケースでして……」


 特殊?


「簡単に言えば、半数にまで軍勢が減った原因は……エイミア自身です」


「……はあ?」


「リファリス様やナイアが軍を離れてから、エイミアの軍の指揮に疑問を感じる人達が現れまして……」


「そうね。でもそれは想定内のことだし、ある程度エイミアに刃が向かっても、十分撃退できると思うけど」


「その通りです。要はエイミアは……撃退しすぎた(・・・・)んです」


「……はい?」


「あまりにもエイミアの軍の運用が下手すぎて、下克上と言いますか、クーデターと言いますか……が連発しまして」


 ……ま、まさか、この話の流れって……。


「そ、その失われた半数の軍勢って……全てエイミアに撃退されたっていうわけ!?」


「……その通りです」


「ウ、ウソでしょ!? 軍の半分以上に反旗を翻らせたって言うの!?」


「……その通りです」


「いくら何でもあり得ないでしょ……」


 ヴィーは真顔だ。


「……マ、マジなの?」


「……その通りです」


 ……ヴィーに聞くより……本人に直接聞いたほうが良さそうね。



「で? どういうつもりなのかしら?」


「いひゃいいひゃいいひゃい!」


 久々にエイミアと合流した私は、こめかみに血管が浮き上がるのを感じた。本陣に入ってからの兵士達の反応が、ヴィーの言っていたことが事実だと如実に表していたからだ。


「な・ん・で・こ・う・なっ・た・の?」


「いひゃいいひゃいいひゃみょーーーんんん!」


「何とか言いなさいよ! みょんみょん言われたってわかんないわよ!」


「みょーーーんんん! みょんみょんみょみょーーーんんん!」


「サーチ、流石にその状態では話せませんわよ?」


 あ……そうね。とりあえずエイミアの頬っぺたを離した。


 ぴちんっ!

「みょ!? び、びええええええっ!」


「さて……一体何をやらかしたのか、キッチリと説明してもらうからね!」


「びえええっ……は、はいぃ……」


 ……その後のエイミアの説明によると、全軍には「前進!」という指示しか出してなかったらしい。


「………………それだけ?」


「は、はい。それ以外は何も指示を出していません」


 ……前進しろ、だけの指示もヒドいっちゃーヒドいけど、半数も表立って刃向かうほどヒドくはないわね。


「……他に何かあったんじゃないの?」


「い、いえ。特別何も」


 ……となると。


「誰かが扇動したとしか思えないわね」


「扇動ですか? そんな事をしてる人はいなかったような……」


 ていうかね、エイミアに重度の過失は見られない以上、誰かが仕組んだとしか思えないっしょ。


「大丈夫よ。エイミア以外は真犯人に心当たりがあるから……ねえ?」

「そうですね。正直信じられませんでしたが……」

「この状況下では、彼女以外にあり得ませんわね」

「…………未だに信じられないと思われ」


 リジーが一番ショックよね。早い段階から疑ってたみたいだけど、一応教え子だし。


「ま、そういう意味じゃ一番ショックなのはエカテルと……同じ三つ子のカナタとソナタよね?」


 私は後ろでハクミんと戯れている小さな女の子を睨んだ。


「その辺、一切罪悪感はないのかしら? ドナタ?」


 私の声を聞いたドナタは小首を傾げて。


「……なんのことー?」


「しらばっくれるんじゃないわよ。あんたが今までしてきたこと、全てわかってるんだからね!」


「……わたしむずかしいことわかんなーい」


 そう言って去ろうとするドナタの背後に回り、短剣を叩きつける。


 ガギィ!


「……剣術は教えてないけど、よくこの不意討ちを防げたわね、ドナタ……いや、アントワナ!」


 ……ドナタの表情が消えた。

ま、まさか!?

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