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第九話 ていうか、偽リジーの頭を辿って、アントワナ本人の記憶を呼び覚ます!

「あーあ。この娘と一緒に雪崩に巻き込んで、人間爆弾の巻き添えにしてやるつもりだったのに………あひゃ、あひゃひゃ、あひゃひゃひゃひゃぎゃう!?」


 あ、しまった。あまりに笑い声がムカついたから、顔面にケンカキックをぶち込んでしまった。


「いいいきなり何をするのよ!」

「じゃかあしい! いきなり雪崩をお見舞いしてくるヤツに、そういうことを言われたくないわ!」


 そのまま流れるように偽リジーに飛びつき、右腕を取る。両足で挟んで、右腕を引っ張れば……!


「そ、それは……あぎゃあああああああああ!」


 総合格闘技ではチョークスリーパーと決め技を二分する関節技、腕ひしぎ逆十字固めぇ!


「サ、サーチ! 人間爆弾とやらは大丈夫なのですか!?」


「人間爆弾も魔術みたいなモノ! だったら痛みで集中力を阻害してやれば、術式は組めないはずよ!」


 偽リジーの顔に悔しさが滲む。どうやら図星らしい。


「とはいえ、どうせあんたもアントワナの手駒の一つに過ぎないんでしょ?」

「いだああああ! いでえええ!」

「だったら何も吐かないだろうし、人間爆弾として爆発されるわけにはいかない。ヴィー、いまのうちに止めを刺して」


「少しお待ちください。試してみたい事があります」


 そう応じながらも詠唱を続ける。ヴィーにしては詠唱が長い気がするんだけど……?


「……偽リジーからの繋がりを辿って、アントワナ本人の記憶を引き出してみます……≪聖なる記憶≫ホーリー・メモリーダスト


 偽リジーの頭にかざされた手から、キラキラと光り輝く粉が降り注ぐ。その粉は偽リジーの頭に入っていき……。


「あ、頭が……! ぐげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 腕ひしぎ逆十字固めによる痛みではない痛みが、偽リジーの脳を蝕む。


「……まだ半分……」


「あ、が、が! ぐぇああああああああ!」


 血走って剥き出しになる眼球、止めどなく溢れる鼻血、泡を吹きヨダレを垂れ流す口……相当な苦しみらしい。


「……あと少し……もう少し……」


「あ゛! あ゛! お゛え゛え゛え゛…………ぁぁ……ぅ」


「……はい、終了しました。今から映像化します」


 え、映像化?


「この聖術は自分の記憶の一部を映像化して、空中に投影するモノです。これを応用して、相手の脳から無理矢理記憶を引き剥がし、映像化できるようにしました」


「な、なるほど……でもそれって痛いの?」


「さあ……今回は無理矢理アントワナ本人の記憶を引き寄せましたから、情報回路として代用した脳内の血管はボロボロです」


 それじゃ何、頭のあちこちで同時多発的に出血が起きたってこと!? ……そりゃ痛いなんてもんじゃないわね。


「……こういう風に死ぬのは御免だわ……」


 偽リジー……少しだけ不憫に思えた。


「ほら、もうすぐ記憶の映像が始まりますよ」


「あ、あの……このリジーそっくりな方、お亡くなりになったんですの?」


「そりゃあ……頭の中、血管が破れまくりらしいから……生きてたら奇跡よ」


「でしたら御遺体は処分した方がよろしいですわね。爆発されたら厄介ですし」


 ……確かに。


「……月よ月夜に月見頃……≪月影葬送≫ルナティック・ピュリフィ


 ナイアが魔術を発動させると、偽リジーの死体は黒い影に覆われ……やがて消失した。


「……今のは?」


「月の影を通じて、深淵の世界へ対象を送る魔術ですわ」


「……要は別世界に転移させるってこと?」


「そう考えていただいて結構ですが、生物を送る事はできませんし、一度送ったモノは二度と戻る事はありません」


「……つまり規模がハンパないゴミ箱ってことね?」


「ゴ、ゴミ箱と一緒にしないでくださいまし! 元々は対ゾンビ用の魔術ですわよ!」


 なるほど、確かにゾンビは生物じゃないしね。


「つまり害虫駆除を兼ねたゴミ箱ってわけね」


「ですから! ゴミ箱ではありませんわよ!」


「あーはいはい……ほら、映像が始まったわよ」


「っ……サーチ、もうゴミ箱呼ばわりは許しませんわよ!?」


 ナイアの一言のあと、空中に映像が浮かび上がった。


『……へヴィーナフィルム、プレゼンツ』


「ムダなとこに凝らなくていいから! 何よ、へヴィーナフィルムって!」


「ちょ、ちょっとやってみたかったんです」


 MPのムダ遣いだよ!


『……ジャジャジャーン♪』


「…………」


「で、出来心です! 出来心なんですぅ!」


「当分同部屋禁止」


「えぇーーっ!?」


 ガックリと項垂れながらも、ヴィーは淡々と映像を流していった。


「へぇー、これがアントワナの子供時代……」


 ……ていうか、これロバートの頃の記憶も混ざってるわね。前世の私がいるし。


「あ、女性と刺し違えましたね」

「……あら? 真っ暗闇になりましたわね」


 私と刺し違えて……ここから転生したのか。


「ヴィー、成長シーンなんか見たって仕方ないから、しばらく飛ばして」


「はい」


 キュルキュルキュル……フィーン


 ビデオテープかよ!


「……あ! そこでストップストップ!」


 ガチャ フィーン


「【自主規制】!【禁則事項】!【見せられないよっ】!!」


「うわぁ……だ、大胆な……」

「……まあ一応女だしねぇ……」

「あら、このような体位もありますのね」


 ……ん?


「ナイア、経験あるの?」


「ええまぁ……よ、よろしいではありませんか!?」


 ……いや、意外だっただけ。


「もういいや、飛ばして」


「はい」


 キュルキュルキュルキュル


「……! そこ! 戻して!」


「え!? は、はい!」


 ガチャ フィーン


「……この黒ずくめ……間違いない、院長先生だわ」


 アントワナと何か話してるみたいね……。


「……ねえ、サーチ。このアントワナの視線……妙に低くないですか(・・・・・・・・・)?」


「そういえば……そうですわね」


「そうか……そういうことだったのか」


「な、何がですの?」


「ううん、何でもない。だけどこれで、最大の不安材料がなくなったわ!」


「最大の不安材料……?」


「それは私に任せてもらえばいい。あとはアントワナの対策なんだけど……ヴィー、ナイア。あんた達にだけは話しておくわ」


「な、何をですの?」


「よーく聞いて……アントワナは、リングナイにはいない」


「「へ?」」


「アントワナは……私達の身近にいる(・・・・・・・・)のよ」


「身近って……まさか!?」


「そう。私達の中……つまり、パーティ内に潜り込んでる」


「そ、そんな……一体誰が!?」


「待ってください。つまり、先程のリジーのように、仲間の誰かに成り済ましていると?」


「ん〜……それは違うかな。私に見破られるくらいだから、成り済ましって可能性は低いでしょ」


「……確かに……では……裏切っていると?」


「そういうこと」


「そ、そんな!?」


「あら? あんた達は疑ってなかったんだ。私はかなり前からマークしてたわよ?」


「い、一体誰なんです!?」


「それは……」


答えはCMの後で! 的な。

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