第七話 ていうか、マーシャンぶっ殺す。
ちょこっとガールズラブ要素あります。
注意! 大変聞き苦しい悲鳴が連発されます。
……なんて考えていられる分、私は余裕があるらしい。
「リル、余裕出てきたー!?」
「に゛ゃーーーー!!」
「……そんだけニャ〜ニャ〜言ってるんなら、余裕あるわけないわね」
するとリルが私のビキニアーマーのストラップを掴んで、引き寄せた。
「ニャに言ってるニョよ! 私はニャーニャんて言ってニャいわよ!」
いや、思いっきりナ行がニャ行になってるじゃない。
「……それが素の喋り方なんだ」
リルは肩をビクッと揺らして黙り込んだ。
「……すぅー、はあ〜……」
リルは深呼吸してから、バツの悪い顔をして振り向く。
「……言わニャいでよ」
とポツリと呟いて。
「悪かったな。もう大丈夫だよ!」
半分ヤケクソ気味で叫んだ。うん、まだ手が震えてるみたいだけど、大丈夫そうね。
「マッパーの出番よ。パンドラーネの方角お願い!」
リルは両頬をパチンと叩いてから。
「わかった! 任せろ!」
そう言って地図を取り出した。
「サーチ、やや30°右!」
「OK! うりゃあ!」
角を持って首を捻る。
ンギャアア!
よーし、いい角度。
「エイミア、スピード緩んでるから、釘こん棒でお尻ど突いて!」
「きゃああああっ!」
「エイミア!」
「ぎゃああ! いやあああ!」
「えいっ」
「きゃああはあああああんっ!!」
「落ち着いた?」
「ど、どこ触ってるんですかああ!」
触られた場所を両手で覆って叫ぶ。よし、落ち着いたわね。
「少しはマシな落ち着かせ方を考えて下さい!」
いいじゃない、役得だし。
「……サーチがマーシャン化してきてまいったああい!」
「くだらないこと言ってると、もっと打つからね!」
「わ、わかりましたよぅ」
エイミアは釘こん棒を振り上げて。
「ごめんなさあい!」
と叫んで振り下ろした。謝ってるわりには力入ってるわね。
ずぎゃああんっ!
ギャン! イギャアアア! ギャアアアアア!
よーし、大幅にスピードアップ!
……なんか涙流してるけど……無視無視。
「もう少しスピード欲しいわねえ……エイミア、もう一発」
「いくら何でも可哀想すぎますよ!」
……確かに。
じゃあ……そろそろマーシャンに起きてもらいますか。操縦をリルに任せて、アンギャの足を伝って泡吹いてるマーシャンのところへいく。
「よく怖くないよな……」
「高い所が好きなのって確か馬もがもが」
リルに口を塞がれる。何を言おうとしていたかは、あとからエイミアの身体に直接聞きましょう。
「マーシャン、起きて」
「ブクブクブク……」
「ちょっとマーシャン! 起きろ!」
「ブクブクブク……」
……ダメか。仕方ないから、マーシャンの耳を掴んで。
「ふーっ」
「ひゃはっふう!?」
マーシャン起きた。今度からこの手で起こそう。
「マーシャン、ちょっと頼める?」
何だろう? 頬をピンクに染めて目をトロンとさせてる。少し心配になってマーシャンの顔を覗き込んだ瞬間。
「マーシャ……むぐっ!?」
マーシャンは私の唇を自分の唇で塞いだ。
「きゃー! マーシャンが暴走してます!」
「うわあ……! 長いな……!」
「ちょ、大胆ですよ……サーチのトップに……手を……」
「と、止めたほうが……あ、サーチが殴ったな」
「はあ、はあ、はあ!」
な、な、な、何を……!
「何してくれるのよ! この変態ロリババアアアア!!」
ギリギリギリメキメキメキッ!
「んいぎゃああああ! 痛いのじゃ! 痛いのじゃあああああ!」
小一時間マーシャンは私の空中腕ひしぎ逆十字で絶叫し続けた。
殺す! 絶対殺す!
舌まで入れてきやがって! ずぇっったい許さないんだからああ!
「……サーチ……落ち着いたか?」
……取り乱しました……ズレてたトップを戻しながら頷いた。
ていうか、危なかったわ……! 危うくマーシャンに違う世界に持っていかれそうになったわ……何なの、あのテクニシャン。
「エイミア……あれは危険ね……」
エイミアとリディアが激しく頷いた。
「でもエイミアはもっとイクとこまでででででででしびしびしびぃ!」
「それ以上は禁止です!」
え、エイミア……最近あんたのツッコミで命の危険を感じるわよ……!
「う、腕が! 腕が痛いのじゃー!」
泣き叫ぶマーシャンの顔を容赦無くをガシッと掴む。
「変態ロリババア! 私の言うことを聞きなさいよ?」
「ワ、ワシが何をしたと言うんじゃ!」
ナニをしてくれたのよ!
「ね、寝起きに可愛い女子を襲った夢をみていただけじゃー!」
はあああ!?
あんた、寝惚けて私の初めてを奪ったわけ!?
うーん、脅迫する前に手に力が入っちゃうわ……♪
ギリギリミシミシ
「いだだだだ! ワシが悪かったワシが悪かった顔が顔が顔がー!」
「マーシャン? 離してほしければこのワイバーンを風魔法でスピードアップさせてくれる?」
「わかったわかったわかったから離して〜!」
離すとマーシャンはすぐに魔法を放った。
「≪風撃弾≫……痛い〜……」
顔を押さえながら風の弾を放つマーシャン。
ごどおぅん!
「え? ちょっと着弾音が大きくない?」
特大の≪風撃弾≫がアンギャのお尻に当たり。
ギャッ……
……失神した。
……ていうか、やり過ぎよおお!
「落ちる! 落ちる! 落ちてるぞ!」
「リル、今回の場合は落ちるじゃなくて墜ちるです」
「エイミア!現実逃避して冷静なツッコミいれてる場合じゃないわよ!」
「もう痛いのは嫌じゃ〜…………ブクブクブク」
「もうコイツらといるの嫌だったああああ!」
そして。
落下していった……。
ヒュウウウ……
どっかああああん!
「うわ! 何だ!?」
「ギルドマスター! 大変です!」
「……何事だ?」
「空から女の子が……」
「どこかで聞いたシチュエーションだな!」
「あとついでにワイバーンが堕ちてきて……」
「はあ!? ワイバーン!?」
「……ギルドマスターの御自宅が全壊しました」
「…………のぉぉぉぉっ!?」