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第十六話 ていうか、いよいよ人狼と戦闘開始なんだけど、ナイアに葛藤がないのか気になります!

「あらあら。相変わらず真っ直ぐに突っ込んできますわね」


「相変わらずって……他の戦法は使わなかったの?」


「何度も試しましたけど、言う事を聞いた例はほぼありませんわ」


「つまり……」


「真正面から突撃しかしません」


 く……! 何でこんなときに大砲の弾も火薬も切れてるかな……! ここで数発ぶち込めれば、かなりのダメージになったろうに……!


「……近々ヴィーに取り寄せてもらわないと……」


「取り寄せなら完了してますよ」


 うひゃい!? ビ、ビックリした! いつの間に背後に……!?


「渡すのを忘れていましたので。全てを渡すには時間がかかりますから、取り敢えずは五発分くらいでいいですか?」


「え、えぇ……」


「でしたら……」


 ドスンドスン! ゴトゴト!


「はい、お納めください。では私はリファリス様の元へ行っています」


 ……音もなく私の背後に近づくとは……だんだんと蛇の特性を獲得していくわね……。


「……何て言ってる場合じゃなかったわ」


 弾と火薬を急いで魔法の袋(アイテムバッグ)に片づけると、ナイアを伴って移動を開始した。


「サーチ、どちらに?」


「鶴翼陣形の中心。人狼(ウェアウルフ)の真っ正面に」


「ええ!? 危険ですわよ!」


「じゃないとうまく砲撃できないでしょうが」


「……はあ……何をするつもりかはわかりませんが……ならワタクシも一緒に参りましょう」


 ……。


「……ねえ」


「はい?」


「今さらだけど……よかったの?」


「? 何がですの?」


「あんたさ、同族と争う立場になってるのよ?」


「……ああ、その事ですか。構いませんわ。今回はワタクシが人狼(ウェアウルフ)と心中する理由はありませんもの」


「い、意外とドライね」


「元々ワタクシは家族はおろか、部下やメイドにまで蔑ろにされてきましたから。今更あちら側に味方する理由はありませんわ」


「……そう」


「エルフだった母はもう亡くなっていますし、父にも見捨てられましたし……」


「……わかったわ。けどさ、ホントにこっちに味方していいの?」


「……はい?」


「めんどくさいからぶっちゃけて言うけど、出会ってあまり長くない私達をそこまで信用していいのか、って言ってるの。私が言うことじゃないかもしれないけど」


「ああ、そういう事ですの。心配していただいて有り難いですが、ワタクシは自身の選択に自信を持っておりますので」


「……シャレ?」


「ちち違いますわ! 人の揚げ足を取るような事を言わないでくださいまし!」


「あーごめんごめん。で、何でそこまで私達を信用できるの?」


「そうですわね……リファリス様の〝血塗れの淑女〟としての名声もありますけど……」


 ナイアは私を見てニッコリと微笑み。


「温泉好きには悪い人はいませんわよ」


 と言った。


「……へ? ………………あは……あははははは! それを言われちゃどうしようもないわ! うんそうね、確かにそうね! 温泉好きに悪い人なんているわけないわね!」


「そうですわ。ですから、早くこんな醜い戦いは終わらせて…………サッパリしたいですわ!」


「そうね! 早く終わらせて、温泉で乾杯だぁぁ!!」



 ……ドドドド……


 馬にも乗ってないのに、あの速度……やっぱり人狼(ウェアウルフ)恐るべし、よね。


「それじゃあ景気よく一発目いきますか!」


 最前線に立った私は早速≪偽物≫(イミテーション)で大砲を作り出す。今回は地面に鎮座させるタイプだから、威力は格段にあがる。


「はい、弾セット」


 がこんっ


「はい、弾薬セット」


 がこんっ


「角度よーし、風向きよーし、距離もバッチリ。みんなー、耳を塞いでー」


 私の指示に従って、周りの兵士達が耳を塞ぐ。ナイアもそれに倣う。


「三、二、一……発射(ファイア)!!」


 ズドオオオオン!


 …………どどおおん…………

 ……ギャイイン……


 ……当た〜り〜。


「き、効いたみたいですわね」


「それじゃあ第二射から第四射まで、まとめて発射(ファイア)!!」


 ズドドドドドオオオオン!


 …………どがああん! ちゅどおおん! ずががあああん!

 ギャインギャイン!

 キャーーン!


「ああ、先鋒部隊は総崩れですね。生き残った者も尻尾が垂れ下がってますわ」


 犬かよ!


「まあいいわ。これで出鼻は挫いた……」


「今だあああ! 一気に殲滅せよ!」

「「「おおおおっ!」」」


「え!? ちょ、ちょっと!」


 前線の部隊が勝手に……!


「待ちなさい! あんた達が敵う相手じゃないわ!」


「いつまでも〝血塗れの淑女〟の指図は受けん! 皇帝陛下を戴いている以上、我々が正義なのだああ!!」


「っ……ああもう、勝手にしなさい」


 権力争いを戦いに持ち込むヤツには、何を言ってもムダだ。


「サ、サーチ! いいのですか!?」


「いいのよ。最近リファリスに歯向かう連中も出てきてたからね」


 アイツは反リファリスの筆頭だった。それをわかった上で、リファリスは前線に送り込んだのだろう。


「それよりもナイアは月魔術の準備してて。あの部隊が時間を稼いでくれるかもしれないし」


 リファリス達も作戦の最終確認をしてから、ここへ駆けつけてくれるはず……。


「あの、サーチ」


「何?」


「何故司令官であるリファリス様が前線に出てくるのですか? 戦いは兵士に任せ、自分は本陣で指揮すれば良いのでは?」


「リファリスは根っからの戦士だから、何かと前線に出たがるのよ。だから盾役のエリザがいるんだし」


 ガガアアアン!


「「「ぎゃああああああああ!」」」


「……ってあれ? もう蹴散らされちゃった?」


「おそらく人狼(ウェアウルフ)が一斉に変身したのでしょう。ほら、味方の兵士が宙に舞っております」


 ……ホントだ。噴火してるみたいに兵士が……あ、今飛んだのはさっき偉そうにリファリスを批判してたヤツだ。


「……もう向かってくるわね。ナイア、そろそろじゃない?」


「……そうですわね。距離的にも限界ですが……よろしいんですの? まだエリザさんがいらしてませんわよ?」


「仕方ないわ。ある程度は私が防ぐから、ナイアは魔術に集中して」


「……わかりました。御武運をお祈りします…………月よ月夜に月見頃、月並みに踊れや。水平リーベン月の船! ≪真月≫(ルナティック・ムーン)!」


 ……ィィィイイイン!


 ナイアの月魔術によって三つの満月が現れ。


 ア゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォォォォン!!


「うわ、人狼(ウェアウルフ)達が暴走し始めた! ナイア急いで!」


「わかってますわ! 月よ月夜に月見頃……」


 グオオオ!!


 き、来たぁ!


「はあああっ!」

 ザシュザシュ!

 ギャイイン!


 短剣二刀流でまずは二匹を斬り捨てる。

 が。


 アォォォン!

「うわっと!」


 は、早い! 私が避けた場を、人狼(ウェアウルフ)が通りすぎる。


「ふぅ!」

 ビィィン! グシュ!


 すれ違った瞬間に首に巻いておいたワイヤーが絞まり、人狼(ウェアウルフ)の首が飛んだ。うん、一匹一匹なら何とかなる。


 アォォォン! アォォォン!!


「い、一匹一匹ならね! 流石に集団はムリィ!」


 逃げるだけで精一杯! ナイアを抱えて駆け出そうとしたとき!


≪鉄壁の守り≫(マイティガード)!」


 バシィィン!

 ガッ! ガガガ!


 突然現れた結界が、私達への追撃を防ぐ。


「いいタイミングでしたね!」


 エリザ、遅いぃ!

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