表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
632/1883

第一話 ていうか、進め〜リングナイへ♪

 カッポカッポカッポカッポ

 ガラガラガラガラ


 ……久々にこのセキト音を堪能しながら、後ろの姦しい会話を聞いていた。


「そ、それではサーチ姉は昔から露出好きだったの?」


「そうよ〜。いくら十歳とはいえ、やんちゃな男の子達に混じって水浴びって、なかなか出来ないわよ」


「うふふ、サーチらしいですね」


 ビュビュ! ダン! ダン! ダン!


「きゃ!」「ひゃ!?」「うひょい!?」


「……全部聞こえてるっつーの。今度私の昔の話を始めたら、その三本のナイフがリファリスの頭にいくからね?」

「「「すいませんでした!」」」


 ……たく。大体何でリファリスが私達の馬車に乗ってんのよ。


「サーチ、そんなに気にする事でもないのでは?」


 自分達の前に突き立ったナイフをわざわざ回収してくれたヴィーが、私が座ってる馭者席の後ろに腰掛けた。


「気にするわよ。誰だって自分の恥ずかしい過去を、暴露されたいわけないじゃない」


「そうですか? 少なくとも私はサーチの過去には興味津々ですよ?」


 ナイフを受け取りながら、ヴィーを半目で睨む。


「私もヴィーの実年齢には興味津々なのよ」

「っ! ひ、人には知られたくない事がありますよね! 私はいつでもサーチの味方ですよ!」


 ……見事な掌返しだこと。


「エリザ、次の町までどれくらい?」


「そうですね、このままですと半日程で到着致します」


 久々にメイドフォルムと化しているエリザを、ドナタがまじまじと見つめて。


「さーちん! えりざがへんだよ!?」


 ……どっちもエリザの標準だから大丈夫よ。


「それにしてもエイミアは大丈夫でしょうか?」


「エカテルも付いてるからね。よっぽど大丈夫でしょうよ」


 私はセキトの手綱を操作しながら、ヴィーの疑問に答えた。



 首都を占領したことによって、私達は反乱軍ではなく帝国の正規軍となった。アントワナが皇帝印章を置いていってくれたので、帝国の公式文書が作り放題だ。

 なので。


「この書類に判子押せばいいんですか?」


「そう」


 勢いよくエイミアがババンと捺した書類には。


『帝国を裏切り、他国へと侵攻せんと企てたアントワナを朝敵と認定し、これを討つ。その際には皇帝自ら指揮するであろう』


 朝敵アントワナ討伐のために軍を興す、ということが書かれていた。その日のうちに皇帝エイミアの詔として発表され、アントワナとその一党は公式に敵と認定されたのである。これで堂々と進軍できるし、帝国配下の貴族達もエイミア側に味方するだろう。

 ただし。


「わ、私が軍を率いなくちゃならないんですかぁ!?」


 エイミアが軍の先頭に立って行動することになり、私達から離れることになった。


「嫌です、嫌ですぅぅぅ! またサーチと離れるなんてぇぇぇ!」


 嫌がるエイミアをどうにか宥め。で。


「流石にエイミア様お一人では気の毒ですので、私は残ってお供致します」


 エカテルが側にいることとなって、ようやくエイミアは納得した。


「この戦いが終わったら、ずぇぇぇぇっっったいに、サーチと旅しますからね!」


「わかった、わかったわよ」


 未練たらたらで連行されていくエイミアに手を振りながら、私達は帝国軍と別行動をとることになった。


「詔で大半の貴族はエイミアに味方するでしょうけど、不安な有力貴族がいるのよ。それを味方に引き込むために、あたし達は裏工作に回るわよ」


 ……で、私達のパーティに潜り込んできたリファリスと共に、私達の新たな旅が始まったのだ。

 今回は私とヴィーとリジー、それにリファリスとエリザ、おまけにドナタと今までで一番の大所帯となっている。この大陸に来たときが三人だったから、一気に戦力は倍増したわけだ。

 これにエイミアとエカテル、離脱中のリルとマーシャンが加われば、一個大隊相手でも完封できるだろう。

 え? ルーデルとフリドリ? 野郎は戦力に数えないよ。


「リファリス、その有力貴族ってのはアントワナ派なの?」


「いや、中立になるわね。今までの戦争にも全く関わってなかったから」


 中立って……。


「いくら有力貴族だからって、戦争に参加しないってありなの?」


「ありよ。だって公爵家だもん」


「……また公爵家かよ……」


 この世界の公爵って、ろくなヤツがいないのかしら。


「今の公爵が統一王国の王家の血を引いているんだって」


「へ!? エ、エイミアの親戚!?」


「微妙みたい。大体公爵には鬼人族の特徴である角がないみたいだから」


「……偽物?」


「何とも言えないわね。古人族の血が強く出てるのかもしれないし」


 ……ん〜……古人族の血が……。


「……ってことは、平和的に話が進むことはなさそうね」


「……確かに。でも万が一味方にできれば、アントワナには強力な牽制ができるよ」


 ……まあ……買わない宝くじは当たらない、とも言うし。


「やるだけやっておきましょうか」


「そーだよ。味方はしてもらえなくても、敵にならないっていう確約が貰えるだけでも儲けモノだよ」


 ……確かに。証拠になる文書がもらえればさらに良しだし。


「じゃあ交渉のメンツはどうするの? リファリスに任せちゃっていいのかな?」


「勿の論。その為にあたしは来たんだし」


 ……となると、エリザは補佐官として同伴するから……。


「ヴィー、あなたもリファリスと一緒に行きなさいよ」


「私がですか?」


「あ、いいかも。交渉の場を体験する機会ってなかなか無いし」


「あ、そうですね。ではリファリス様、勉強させていただきます」


 あとはリジーとドナタか……ま、何とかなるでしょ。


「残った二人は私を手伝ってくれる?」


「いーよ。さーちん、なにをすればいいの?」


「ドナタ、このパターンの場合は忍び込んで工作活動と思われ」


「ビンゴー! よくわかってるじゃない」


「大体サーチ姉の行動パターンは理解している」


「ていうかね、これは定石。向こうだってこっちに潜り込んでたんだから……あ、リファリス。二人ほど始末しといたけど……良かった?」


「……何かしゃべった?」


「軽ーく拷問しといたけど、ただ金で雇われてただけだったから殺ったよ」


「そう……目的は?」


「ズバリ、エイミアの動向」


「……わっかりやっす〜……」


「……ねえ、サーチ姉。ならエイミア姉危なくない?」


「大丈夫よ。エイミアには四六時中≪電糸網≫(スタンネット)張っとけって言ってあるから」


 あれを張られたら、私でもエイミアに接近するのは難しいだろう。


「それにエカテルもいますから。彼女は元アサシンだそうですし」


 ……ほぼ最低クラスの腕前だったそうだけどね。


「それじゃリファリス、私達は次の町から別行動するから、この馬車使ってくれていいからね」


「いいの〜? ありがと」


「ヴィー、エリザ、リファリスを頼んだわよ」


「お任せください」

「元よりそれが私の使命です」


「ドナタ、少し歩くことになるけど大丈夫?」


「え、あるくの?」


「? そうだけど……」


「ともだちにのせてもらうようたのんだよ?」


「「へ?」」



 アンギャアアアアア!

 ズシィィィン! ズシィィィン!



 うん、絶対にヤバいヤツだ!


「ドナタ、丁重に帰ってもらいなさい」


「え〜」


題名の元ネタがわかったあなたはマニア。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ