第十七話 ていうか「ウチの活躍、今回はたっぷり見てや!」
今回はエリザ視点。
ちょうどサーチん達が首都のオキロを落とした時、ウチらは苦戦しとる最中やった。
「うおりゃあああ!」
バギィン! ぼごっ!
「へむぅ!」
正面から斬りかかってきた兵士を、剣ごと打ち折る。変な声出して吹っ飛んでった。
「何や何や、ウチの防衛線を突破できる猛者はおらんのかいな!」
「な、何だよ、あの三盾女! メチャクチャ強いじゃねえか!」
「ゆ、弓だ! 一斉に放て!」
お、ちぃとは考えてるんやな。歩兵部隊を一旦下げて、弓兵を前に出したわ。ウチに集中的に矢を射ち込むつもりなんやろうけど……。
「今がチャンスや! 一気に敵を蹴散らしたり!」
「「「おおっ!」」」
弓の準備ができる前の無防備な弓兵に、ウチらの歩兵部隊が襲いかかる!
「うぎゃあ!」
「ぐああ!」
「ええでええで! ガンガンいったりぃや!」
弓兵部隊に打ち込まれた杭は一気に深く刺さっていき、敵に深い亀裂を作っていった。
「よっしゃあ! このまま中央突破や! 敵を分断するで!」
「「「おおおお!」」」
勢いに乗ったらウチらのもんや! 分断した敵を各個撃破するで!
「も、申し上げまあす! 味方の前線が崩壊! 徐々に後退を始めました!」
「ゆ、弓兵が壊滅! 歩兵部隊も圧されています!」
「おのれええ! 騎兵隊を投入して一気に形勢を逆転するのだああ!」
「も、申し上げまああああす! 味方騎兵隊、敵の奇襲を受け、敗走いたしました!」
「な………何だとぉ!?」
「だ、第二次防衛線も突破されました! 至急退却を!」
「な、何故だ! 先程まで優位に立っていた我々が、何故!?」
「あーあ、みっともないったらありゃしない」
「な、何だと!? 誰だ、今ほざいた輩は!」
「私ですけど、何か?」
「ん……お前は……」
「閣下、アントワナ殿からの……」
「ああ、A級冒険者の」
「何でしたら私が戦況を一変させましょうか?」
「何を言うか! 冒険者一人で何ができる!」
「何ができるか、と聞かれれば、敵を皆殺しにできる、と答えておきましょうか」
「デ、デカい口を叩きおって!」
「ほら、あなたも危険ですよ?」
……シュンシュンシュン! ザクッ!
「ぐぼあ!」
ドサッ
「か、閣下ーーー!」
シュンシュンシュンシュンシュン!! ドスッ! ズブッ! ザス!
「ぎゃ!」「がっ!」「ぐぶ!」
ドサドサ!
「あらら、司令官を始め幕僚の皆さんも戦死……ならば私の自由にしても、誰にも文句は言われませんね?」
ばがん! ばごん!
「「ぐああ!」」
「ふぅ……リジーの奇襲もうまくいったみたいやな」
流石はリファリス様。ギリギリまで引き付けての逆撃、軍勢が伸びきっていた敵には致命的やで!
「エリザ様、リジー様は戦線を離脱し、本陣へ帰還されたそうです!」
「よっしゃ、予定通りや! このまま掃討戦に突入……」
シュンシュンシュンシュン!
!!?
ギィン!
「な、何や!?」
シュンシュンシュン!
ドスドスドスッ!
「うわああ!」「ぎゃあ!」「ぐはあ!」
「な……ブ、ブーメランやて!? ま、まさか!」
「はーい、そのまさかでございますよ〜。A級冒険者〝飛剣〟のヒルダ、ここに参上でございます〜」
ま、まさか……! ここに来とったんか……!
「……総員退避。下がれや」
「エ、エリザ様は……」
「ええから下がれ言うてんねん!」
「そうよ〜、この子は『私が足止めするから、お前達は逃げろ』って言ってくれてるのよ〜。尊い犠牲者に敬意を払いつつ、早く退散なさいな〜」
尊い犠牲者って……ウチの事かいな!
「……って、あなたは確か……さーちゃんのお仲間さんですか?」
「そうや、サーチんはウチの仲間や!」
「それはそれは、さーちゃんがいつもお世話になっております」
「へ? あ、どうも」
「だったら少し殺り難いですね〜……できれば退いてもらえませんか?」
「……ウチが退いたらどないするん?」
「勿の論、あなた方の一番偉い人を討ち取ります〜」
……リファリス様を……討ち取るやと……!?
「……それはできん相談やなぁ……」
「はい?」
「いくらサーチんの育ての親とはいえ、それを許すわけにはいかへんのや」
「それは……私と一戦交えると言うのですか?」
「そうや! ウチの大事な人を傷付ける言われて、のうのうと通すほどウチはアホやないで!」
「……その心意気は買うけど……止めた方がいいよ? 死んじゃうよ?」
「じゃかあしい! まだ戦ってもないんや、そんなんわからへんやろが!」
「え〜……じゃあ後ろに三歩下がってよ」
へ?
「早く〜」
「……?」
言われて三歩下がると。
ダン! ダン! ダン!
「う、うわわ!」
「ほらね〜。私が教えてあげなかったら、危なかったよ〜」
………………あ、あかん。どう考えても……ウチが敵う相手やない……!
「あらら、私との力の差がわかっちゃった〜? でもそれは君が強い証拠だよ〜。相手との力の差をきちんと判断できるっ事は、自分の実力を把握してるって事だしね〜」
ははは……誉められてるんやけど、全然嬉しゅうないわ。
「やけど……やけど! ウチが退くわけにはいかへんねん! ウチという盾がなくなったら、リファリス様を危険に晒してしまう。それだけは絶対に許されへんのや!」
「え、リファリス? あなた、リファリスの想い人?」
「想い人なんて烏滸がましいけど、ウチがお慕いしてるんは確かや」
「そう……あの子のね……」
そう言うと〝飛剣〟は笑みを消し……。
「なら話は別。全力で……潰す」
数十本のブーメランを投げ放った。
「!!」
ギギン! ギィン!
「ぐ……! ぐぅぅ……!」
ブーメランの一本一本が……重いぃ!
ギィン! ギギギン!
「くあ! うああ……!」
「あら、流石は三盾流。防御はうまいわね〜……だけど、何時まで続くかしら〜?」
ギィン! ……シュシュシュ……シュンシュンシュン!
「私のブーメランは、弾いても再びあなたを襲うわよ〜」
んな無茶苦茶な!
ドスッ!
「あう!」
か、肩に……!
「もうギブアップかしら? まだまだこれからよ〜」
く……! 痛みで集中力が……!
シュンシュンシュン!
ザクッ! ドスドスッ!
「あうううう!?」
「右腕が動いてないわよ〜」
シュンシュン!
グサ!
「あぐぅ!」
ズブッ!
「ぐふ!」
ドスドスドスッ!
「あああああぁぁ……ぁ……」
だ、駄目だ……。
ガクッ
「……あらら。もうお仕舞いなの? あなたのリファリスへの想いはその程度なの?」
む、無茶いうなや……。
「まあいいわ。だったらリファリスは私が貰います。あなたは……死になさい」
シュンシュンシュン!
こ、これまでか……!
シュゴッ!
ズドドドドドドオンッ!
「何ですって!? 私のブーメランを全て砕いた!?」
「うふふ……真のヒーローは、ヒロインが危険に晒された時に登場するのよ♪」
こ、この声は……!
「おうおう、ちょっと手痛くやられちゃったね……よしよし、アタシ自ら治してあげよう! ≪完全回復≫」
「うぐ………あ、あれ? き、傷が……!?」
「……何のつもりかしら? 何故あなたが暗黒大陸にいるの?」
「何でって? 友達に頼まれたからに決まってるじゃない、〝飛剣〟」
「……随分と甘々になったものね……魔王ソレイユ」
関西弁がエセすぎる!




