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第三話 ていうか、峠は続くよどこまでも。

 壊滅させた盗賊(ブラック企業)のアジトを捜索してお宝を頂戴する。

 ちなみに「これは横取りだから違法だろ!」と言いたい人もいるだろうけど、この世界では普通だ。ていうかギルドでは、討伐証明が難しい状態の場合は、盗賊のお宝摂取は認められている。

 もし持ち主がわかるような物があったとしても、返してあげるかは当事者の良心次第だったりする。


「……正直大したものはないわね」


 とか言いつつ、根こそぎ魔法の袋(アイテムバッグ)に放り込んではいるけど。


「……正直、盗賊の討伐証明は嫌ですし」


 ちなみに盗賊の討伐証明は首から上(・・・・)です。

 最近荒事に慣れてきたエイミアもさすがにこれは嫌らしい。


「お、宝箱があるぜ……鍵かかってんな」


 宝箱が普通にあるのはやっぱファンタジーよね。


「鍵か。ワシがやろう」


 ガチャっ


「……あ」


 あ、ごめん。

 ≪偽物≫(イミテーション)で鍵作って開けちゃったよ……。


「……役に立たない魔術の代表格だと言われてた≪偽物≫(イミテーション)が、ここまで便利とはのう……」


 まあ私の場合は使える魔法が≪偽物≫(イミテーション)しかなかったからね……めっさ鍛えましたよ。


「一応聞きますけど……≪偽物≫(イミテーション)での鍵開けって普通にできません?」


「……見ていた限りじゃと、鍵穴に徐々に金属を伸ばして穴の形状を把握したのじゃろ?」


 一発で見抜かれた。


「まあ発想の問題じゃな。普通はここまで一つの魔法を突き詰めて極めようという者がおらんじゃろな」


「私、≪魔法の素質(弱)≫ですから」


「……なんと……なかなかに珍しいな」


 そんな会話をしながら中身を確かめる。


「……すげえな。こんだけあればしばらくは旅費には困らねえ」


 リルはホクホクだ。

 ただ、私は違うものに目を奪われていた。


「……これは……」


「どうしたんですか……何ですか、この輪っか」


「あ、エイミア、そこ持つと」


「いったーい!」


「切れるよ……って、遅かったか」


 それは「圏」だった。

 エイミアが言った通り形は輪っか。ただし握る場所以外は全部刃だ。

 チャクラムに近いかな。


「何だこれ。変わった武器だな」


「圏っていうんだけどね……えっと……リングブレード……で伝わる?」


「なるほど……」


 伝わった!

 ……この世界って伝わる英語がまちまちでムズい。


「こう使うのか?」


 圏……リングブレードを持って右ストレート。


「違う違う。相手に当ててから斬る感じ」


「成程な……私には無理だ」


 そうね。刃のついてない圏とは用途がまるで違うから、素手メインのリルには不向きかも。


「じゃあ私が使うわね」


 結局私が使うことになった。



 今晩は盗賊のアジトでそのまま一泊。死体の転がってない部屋で就寝した。



 翌朝。

 盗賊達をまとめてマーシャンが焼却してから出発した。

 ……そのままにしとくとゾンビ化するのよ。リアルなバ○オ○ザードは御免です。


「まあこれで安心して山越えできるな」


 ……そうだった……。

 これからが大変だったんだ……。



 何事もなく半日ほど歩く。


「はあ……はあ……」


 何事かあったら……大変だったわ。


「はひー……はひー……」


 私同様エイミアも息があがってる。虫の息直前ね。


「たく、だらしない」


 ……面目ない。


「まったくじゃ」


「あんたはずっと浮いてたでしょ!?」


 マーシャンには言われたくない!

 ……とりあえずここでお昼を食べることにする。座る場所を探していると……。


「ちぃ! 飯前の襲撃ってのはイラッとするな!」


 岩石蟻の群れが襲ってきた。こいつら硬いから厄介なのよ!


「せいでんきよ!」

 バリバリバリ!

 ぎぎぎぎっ!


 まずはエイミアが先制攻撃。五六匹の足を止める。


「うりゃあ!」

 バギィ!

 ぎぎぃ!?


 リルの右ストレートが綺麗に入り、一匹沈黙する。


「……≪草花弾≫(プラントバレット)

 スパスパスパスパ!

 ぎしゃあっ!


 マーシャンの魔法が岩石蟻を斬り裂く。いわゆる葉っぱ○ッターね。


「それじゃあ……試し斬りさせてもらうわよ!」


 さっきゲットした圏……リングブレードを取り出して斬りつける!


 バギン


 手応えあり! リングブレードが粉々に……。


「ってもう壊れたの!? 使えない……!」


 せっかく久々に使ってみようと思ってたのに……! でも困った。コイツらに通用しそうな武器がない。

 “不殺の黒剣”(アンチキル)だと斬れないし“逆撃の刃”(ストークウィング)この場(乱戦)では不向きだし……。

 仕方ない、≪偽物≫(イミテーション)で針を作ってチクチクいきますか…………あ! 作ればいいんだ!


≪偽物≫(イミテーション)!」


 砕けたリングブレードと同じ形状のものを、もっと強い金属をイメージする。


「……できた!」


 両手にリングブレードが出現する。重さも感触も申し分なし!


「てりゃああああ!」

 ザンザンザン!


 次々と岩石蟻の足を斬り刻んでいく。


 ぐぎぃぃぃっ!


 バランスを崩した岩石蟻が地面に転がる。


「「とどめ!」です!」


 私が蟻の首を落としていく。

 と同時にエイミアの静電気が炸裂する!

 ……え? 炸裂って……。


 バリバリバリ!


「なんで私までえええええ!?」


 しまった。ハモった時点で気づくべきだったあああしびびびびびぃ!



「ごめんなさい、サーチ!」


 もういいわよ……いつものことだし。


「サーチ、リングブレードの使い手だったのか」


 リルに聞かれる。

 前世でよく使ってました……なんて言えないし。


「院長先生に……“飛剣”に習ったのよ」


 ……ごめん、院長先生。


「“飛剣”!? Aクラスのか!? ……生きてたんだな」


 ……あんた何気に失礼よ。



 こうして。

 私のスキルに≪リングブレード≫が加わった。

 ……ホントにリングブレードって名前だったんだ……。

孫尚香の影響かな?

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