第七話 ていうか、パーティ分割のためにサブリーダーを決めます!
グリムとの話し合いの結果、私・エリザ・ヴィーの軍への参加と、エイミアを後方部隊へ下げることが決まった。やっぱりエイミアがこの場にいるのは得策ではない、というのは最初からグリムと一致した意見だった。
「何故ですか! 私だってサーチと……いえ、皆と戦いたいです!」
「元皇帝の肩書き付いたあんたが、ここで戦ってたら目立つどころじゃないでしょ!」
こう言われてはさすがに言い返せなくなったエイミアは、ブツブツ言いながらも了承した。
「でも後方に下がったからって、何もしないわけじゃないからね。大王炎亀の脅威もあるし、敵もあちこちに点在してるから」
遊撃隊みたいな感じで、しつこくしつこく攻撃してくる連中もいるらしいし。
「だから私達始まりの団も二手に分かれる」
「「……ふぁーすとおーだー?」」
……あ、パーティ名変更したの知らなかったっけ。
「いろいろあってね、パーティ名変更しました」
「……まあいいんじゃないですか」
「……船の底抜きよりは、まあ……」
そうね。けど前のパーティ名、エイミア、あんたが原因だったのよ。
「とにかく。エイミアは後方いるリジー・エカテル・ドナタ組に合流してもらうから」
「え!? リジーも来ているんですか………あ、あれ? リルは?」
「あ、知らなかったっけ。リルはパーティを離脱したわよ」
「え!? な、何故ですか!?」
「結婚妊娠出産のため」
「……………………へ?」
「あんたのお兄さんと結婚したのよ。で、少し前に妊娠の報告もあったわ」
「え………えええええええええ!?」
さて、しばらく大混乱に陥るエイミアは放っておいて。
「それでさ、今回はサブリーダーを決めようと思うのよ」
「サブリーダーかぁ。そやな、バラバラに行動するさかい、必要やろな」
「私も異論はありません」
「で、問題は人選なのよ」
「……人選ねぇ……」
「……それは確かに問題ですね」
本来ならエリザかヴィーにお願いすべき役割なんだけど、そういうわけにもいかない。
まずは人を纏めるのに慣れてるエリザなんだけど、今回はリファリスの特命を受けている身でもあり、前線を離れることができない。よって却下。
次に博識で思慮深いヴィー。これはエカテルやドナタとの交流がないこと、そして種族的理由から目立つわけにはいかないこと。この二つの理由で却下。
「私はぜっっったいにサーチから離れるつもりはないです」
……何よりヴィーを説得できる自信がない。
「……となると、残りのメンバーからよね。だったら」
「「「リジー」ですよね」やな」
あ、全員一致。
「……そうね。リジーならエカテル達も納得だろうし……じゃあリジーに決まりね」
「「異議無ーし」」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「何よ、エイミア」
「わ、私では駄目ですか!?」
………………はい?
「「「…………」」」
じ、自覚がなかったのか……。
「な、何で皆黙っちゃうんですか!?」
「「「何でって……」」」
「向いてない」
「無理でしょう」
「素質ないでぇ」
「ひ………酷い! 酷いですぅぅぅ!」
……灰皿で頭を叩く人が過った。
「どうしてですか!? 何故なんですかああ!」
「なぜって……」
過去の実例、一。
「おいサーチ、ホントにこのルートで合ってるんだろうな?」
「エイミアが調べてくれたんだから、大丈夫だと思うよ?」
「何で疑問系なんですか!?」
「……あ、見えてきたぞ」
「ほらあああ! サーチ、リル、恐れ入りましたか!?」
「……海が」
「え゛」
「……私達は山へ向かってたはずじゃ……」
過去の実例、二。
「エイミア、スキルだろうが聖術だろうが、放って当てる事には変わりありません。大事な事はイメージする事です」
「……イメージ……ですね」
「そうです。私の場合は聖術を放つ前に、敵が逃げる可能性や防がれる可能性も考慮します。逃げられたらどうするか、防がれたらどう対処するか。全てイメージするのです」
「イメージ…………イメージ……………………」
「? ……エイミア?」
「…………えへ、えへへ……サーチぃ……」
「何をイメージしてるのですか!?」
「うひゃい!?」
バリ! バリバリバリ!
「「あ」」
『ぴぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!? だ、誰よ、私に電撃かましたのは!?』
「げっ! サーチ!?」
「……イメージに忠実にヒットしましたね……」
過去の実例、三。
コンコン
「エイミア様、おはようございます」
『……んん……エカテルですか……?』
「はい、朝でございます」
『……んん……あと五分……』
「……そう言われてから二時間経過しておりますが……」
『……へ?』
「私も六十一回起こしに来ておりまして……」
『え!? すすすすいませええん!!』
『……という事がありました』
「エカテル!? 何故急に話に参加してるんですか!?」
『サーチさんに促されまして。それよりエイミア様………よくぞ、よくぞご無事で……!』
「……エカテル……」
『それはさておき、エイミア様はリーダーには向いていないのは既成事実です』
「切り替え早いな!」
『ですがご安心下さい。このエカテル、不肖の身なれど、エイミア様に誠心誠意お仕え致します』
「エ、エカテル! 私はもう皇帝でも何でもないから! 仕える必要はないから!」
『そうですか? でしたら友達から始めましょう。よろしくお願いします、エイミア様』
「マジで切り替え早いな!」
『ではサーチさん、失礼します』
…………エカテルも壊れ始めた?
「というわけでエイミア、多数決なら決定よ」
「い、いえ! まだです! リジーが引き受けるかはわかりませんよ!」
「……だって。ヴィー、リジーに念話」
「もうしてます。リジー聞こえます?」
『え? ヴィー姉?』
「久しぶりですね。またしばらくパーティに加わる事になりましたので」
『そうなんだ。感激感謝雨霰』
「……?」
困った顔して私を見ないで、ヴィー。
「と、とにかく、一つ話があるのですが……」
ヴィーがパーティ分割の下りを説明する。
「で、リジーがサブリーダーになって、そちらのパーティを仕切ってほしいのですが」
『え、やだ』
エイミアが『そら見たことか!』という顔をしてウザい。
『ヴィー姉かエリザの方が適任』
「いろいろ事情があって、リジーかエイミアのどちらかなんです」
『エイミア姉が!? なら私がいいと思われ』
「いいのですか?」
『エイミア姉がパーティを仕切ったら、三日で空中分解確実』
……エイミアの『リジー!? あなたもですか!?』という悲愴な顔がウザい。
「ちょっとごめん……リジー、ドナタいる?」
『いる』
「ドナタにさ、リジーとエカテルの数倍危なっかしい人と、どっちがリーダーがいいか聞いて」
『ドナタ、ゴニョゴニョ』
『……りじー!』
『……だって』
あ、エイミア泣いちゃった。
「サーチ、わざわざ止めを刺さなくても……」
数週間後、エイミアは迎えにきたリジー達に引き取られていった。その間エイミアは、魂が抜けてどっか逝ってました……合掌。
エイミア、ふぁいと。




