表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
615/1883

第五話 ていうか、シビシビシビシビシビシビ……「シビシビって何なのよ!?」

「シビシビシビシビ……」


「お久し振りです、エイミア…………何をしてるのですか?」


「私の放ったマヒ毒で絶賛シビれ中」


「サ、サーチの放った……??」


「あぁ、さっきのアレにはね返されたヤツがね」


「毒の息をはね返したと!? お、恐ろしい相手だったのですね……」


 その恐ろしい相手を一睨みしただけで倒したのはあんただけどね。


「それよりヴィー、エイミアを治せない?」


「あ、はい。≪痺れ治し≫(ナムケア)


「シビシビシビシビ……」


「……あ、あれ? 治らない?」


「もしかして毒の治療じゃないとダメだとか?」


「あ、成程。なら≪毒治し≫(ポイズンケア)


「シビシビシビシビ……」


「え? 何故?」


「うう〜ん? ……もしかしてヴィーの知らない毒だった?」


 確か術者の知らない毒は治せない……はず。


「わ、私が知らない毒ですか…………そうですね。暗黒大陸の毒の知識はないです」


 ……そういえばこの毒、この大陸でモンスターが使ってたヤツだったっけ。


「ならこの大陸のことをよく知るエカテルの方がいいか。一旦エイミアを連れて戻りましょ」


「エカテルさん………サーチの奴隷でしたね」


「奴隷を強調しないで。仕方なくだったんだから……一応」


「『一応』が出てくる時点で手遅れだと思いますが……わかりました。私がエイミアを背負っていきましょう」


 お願い。非力な私にはツラい作業なのだ。


「よいしょっと…………あれ、また大きくなったのですね」


 ……イラッ。


「……サーチは……変わりましたか?」


「比較しないでくれる?」


「え、比較というわけでは………ただ、おんぶすればわかりますが」


 止めれ!



 本格的に脱出に移行した私達は、城の中間地点に至っても敵兵と遭遇することはなかった。


「全然見回りがいないわね。どうしたのかしら?」


「え? サーチはどうやって忍び込んだのですか?」


「あぁ、私はバルコニーにいるエイミアを発見して……って流れだったから、城の中はあまり入ってないのよ」


「そういう事ですか……因みにですが、城内の兵士があまりいないのは、他の場所で騒動が起きているからです」


「騒動? まさかエリザが陽動を?」


「陽動……になっちゃいましたね。狙って行ったのなら大したモノなのですが……」


 ……その流れだと……エリザが一悶着起こしちゃった、って感じね。



「どんどんかかってこいや、ゴルァアアアア!!」

「こ、この盾の姉ちゃん、マジで強いぞ!」

「ど、どうすんだよ! 敵いっこないぞ!」

「うるせぇ! このままだと組織(うち)の面目は丸つぶれだ! 怖じ気づくんじゃねえぞ!」

「止めんか貴様ら! これ以上治安を乱すのなら、全員まとめて捕縛するぞ!」

「ええい、これ以上は放っておけぬ! 抜剣を許可する、力ずくで押さえ付けよ!」

「ぐはあっ!? き、貴様らぁぁ……もはや許せん! 斬り捨ててくれる!」


 ……うん、何だこれ?


「先程まではエリザと地元のチンピラの争いだったのですが……」


「……ヴィー……放置したのね?」


「だ、だって……! どうしろって言うんですか!?」


「うん、気持ちはわかる。わかるけど……放置したから警備隊まで絡んできたのは事実だしね?」


「う…………い、いいじゃないですか! それでサーチは助かりましたよね!?」


 う……それを言われるとツラい。


「で、ヴィーが私のとこに来たってことは、これの仲裁をしてほしかったわけ?」


「……はい」


「できるわけないでしょ! あんた私に死ねって言うの!?」


「いえ、この現状は把握してませんでしたので……私が離れた時よりひどくなってますね……………どうしましょう!?」


「いや、私に言われても……ここまでいろんなモノが絡んでる以上、エリザを後ろからぶん殴って抱えて逃走! くらいしか……」


「それやったら私達も共犯でお訪ね者ですよ」


「うーん……私的にはエイミアを取り返したから、この国はどうでもいいって感じなんだけど……リファリスを巻き込んじゃった手前、そういうわけにもいかないのよね……」


 さっきから考えてるけど、どう考えてもこの手以外浮かばない……。


「……私達の関与がわからなければいいのよね?」


「はい」


「多少エリザが痛い目にあってもいいわよね?」


「この騒ぎの根本はエリザですから、やむを得ないと思います」


「……よし。なら強硬手段で」



「ヴィー、準備はいい?」


「はい。皆、今回は無差別にやっちゃっていいからね?」

「「「シャシャア!」」」


 久々に頭の蛇を開放したヴィーは、蛇達に指示を出していた。


「私が炸裂弾を爆破させたら、それを合図に作戦開始で」

「わかりました」

「「「シャシャア!」」」


「……あなた達、私よりサーチに対して従順なのはどうして?」


「「「……シャ?」」」


「惚けないでください!」


 ……ヴィー……内輪揉めはホドホドにね。


「それじゃ私はいくから」


「あ、はーい」


 素早く建物の間をすり抜け、エリザの背後に周り込む。


「おらおらおらぁぁ! 今宵はウチの盾が唸るでぇぇ!」


 盾を唸らせるな。ちょうどエリザの背中が見える位置までいき……。


「ぶふぅーっ」


 さっきエイミアをシビれさせたのと同じ毒の息を、濃度千倍で吐き出す。


「おらおらおらぁぁ…………うっ………シビシビシビシビ」


「おお、あの姉ちゃんが倒れたぞ! 今だ………シビシビシビシビ」

「な、何で皆倒れ………シビシビシビシビ」


「よぉ〜し……あとはヴィーにっと……」


 空中におもいっきり炸裂弾を投げる。



 どおおおおん!



「……来ました! 合図です」

「「「シャシャア!」」」

「では……≪聖風弾≫ホーリー・ウィンドバレット!」

「「「シャー!」」」

 バボボボボボ!



 ……ぼふぅん!


 ……きた!


 ぼふぅん! ぼふぅぼふぅぼふぅん!


 いっぱい飛んできた風の固まりが破裂して、千倍濃縮のシビれ毒を拡散していく……!


「うぐぁ……シビシビシビシビ」

「ぐふぅ……シビシビシビシビ」

「み、皆が倒れてい……シビシビシビシビ」

「シビシビって何なんだよ……シビシビシビシビ」


 最後の一言、私も知りたい。


「ヴィーのヤツ、うまいこと拡散してくれてるわ。この調子でいざこざをウヤムヤにしちゃえば……」


 よし、そろそろ頃合いか。私はエリザを背負うと、この場を離脱した…………お、重いぃ。



「お疲れ様です、サーチ」


「ふぅ、ひぃ、はあ……ど、どう、現状は?」


「大混乱です。今は城の治療魔術士が出動したところです」


 なら時間の問題か。


「じゃあ私達も離脱。一旦グリムのところへ引き上げよ」


「了解!」



 どうにかエイミアを連れ出せたけど、騒ぎがスラムに波及するのは時間の問題だったらしく……。


「シビシビシビシビ……」


 ……スラムも全部シビれてた。やべぇ。


シビシビシビシビ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ