第三話 ていうか、久々に会ったエイミアは、やっぱり何も変わってなかった……「みょーーーーんんん!」
「ごめんねエイミア。今引っこ抜いてあげるから」
足をバタバタ動かすエイミアに駆け寄る。今回は紫のスケスケでございます……だいたーん。
「ちょっと! 足を止めてくれないと、引っ張ることできないんだから!」
バタバタバタ! ぽかっ!
「いったいわね……ジッとしなさいっての!」
ばっちぃぃぃぃん!
むき出しの太ももに手形を付けると、ようやくおとなしくなった。
「たく……じゃあいくわよ。せーの!」
ググググ……!
あ、あれ。思った以上に……。
「ふんぬ! ふんぬ!」
グイ! グイグイィ!
「……くはあ、ぬ、抜けない……」
非力な私にはキツいなあ……そおれ!
ググッ! ビッ
「うりゃあああぁぁぁ……!」
グググ! ビビッ
「うぅぅぅおぉぉぉりゃあああああ……!」
グググググググ………すぽおん! ビリビリビリィィ!
ぬ、抜けたああ………あ。
「き……きぃあああああああああ!」
どうやら服が引っ掛かっていたらしく、抜けた瞬間にビリビリになってしまい……つまり今のエイミアはすっぽんぽんなわけで……。
「いやあああああああっ!」
急いで中へ駆け込むエイミア。クソ、やっぱりデカくなってやがったよ……。
「びええええええっ!」
相変わらずの泣き声も、久々だと懐かしさを感じる。
「ごめんごめん。とっさに避けちゃったわ」
「びえええ……よ、避ける事ないじゃないですかあああ!」
「だから謝ってるじゃない」
避けただけじゃなく、実は足払いもしちゃった……とは言えない。
「それより何か着なさいよ。ドラゴンローブは残ってるんでしょ」
「あ、はい。あります」
エイミアは自分の手荷物が入ってるらしい籠を引っ張り出し、そこから新しい下着とドラゴンローブを取り出した。
「……エイミア。一つ聞きたいことがあるんだけどさ」
カーテン越しに着替え中のエイミアに声をかける。
「はい?」
「ヴィーの話だと、あんた言われるがまま付いていったそうじゃない。一体何があったの?」
「……それは……長い話になっちゃいますよ?」
「構わないわよ。時間はあるから」
「そうですか。でしたら………………騙されたんです」
「そう」
「…………」
「…………って、続きは?」
「え? 以上ですよ?」
短!? めっちゃ短いな!!
「長くなりますよっていう前置きの割に、説明文は『騙された』だけかよ!」
「ひぇ!? す、すいませええん!」
……ぷっ。
「フフ……久々にあんたにつっこんで、何だか安心したわ」
「サーチ?」
「ヴィーの話を聞いてから、あんたが自らの意志で付いていったってわかってから……不安だったのよ」
「……サーチ?」
「あんたがあんたじゃなくなったんじゃないかって……もう、パーティに戻る気がないんじゃないかって……」
「……サーチ……」
「エイミア、改めて聞くわ。パーティに戻る意思はある? この城から抜け出すつもりでいる?」
「…………サーチ、勝手にパーティを抜けちゃって、本当にすいませんでした………こんな私ですけど……また戻っていいんですよね? サーチと並んで歩いてもいいんですよね?」
「当たり前じゃない。もしここに残るとか言っても、ムリヤリ引っ張って帰るつもりだったわよ」
「……ぐす……サーチ……」
「だから……戻ってきなさい!」
カシャアア!
着替え終わったエイミアが勢いよくカーテンを開く。大きな目にいっぱいの涙を溜めて。
「……ぐす……えぐ……びええええええ! ざあ゛ぢぃぃぃ!」
ゆっさゆっさ
……イラッ。
「ていっ」
「うわっ!? ま、またですかあああぁぁぁ……」
ずだあああん!
今回は自らの意志で足払いしました。
「酷い! 酷いですサーチ!」
「うっさいわね。自慢気にゆっさゆっさと揺らして走ってくるからいけないのよ!」
「り、理不尽です!」
「理不尽なのはあんたの胸よ!」
全く、忌々しい……!
「……サーチの傍若無人さも相変わらずなんですね……にゅ」
「……何ですって?」
「い、いひゃいひぇひゅ」
「そういえばこれもしばらく振りね! たっっぷり引っ張ってあげるわ!」
「いひゃいいひゃいいひゃい!」
「ほぅら、記録を塗り替えるわよ!」
「いひゃいいひゃいいひゃみょーーーーんんん!!」
「来たあああああ! やっぱりこれなのよ、これ! エイミアじゃなくちゃダメなのよ!」
「みょーーーーんんん! みょみょーーーーんんん!」
十分ほど堪能してから、私は手を離した。
ぱちんっ!
「にゅ!? ……び、びえええええええええっ!!」
「……記録更新とはならなかったか。残念だったわね」
バチィ……!
「……へ?」
「サーチ……再会して早々に黒焦げにされたいんですね……!」
な、何かエイミアの身体が発光してるんですけど!?
「そういえば再会してから電撃はまだでしたよね……?」
「エ、エイミア? ちょっと深呼吸しようね? 六秒間待とうね?」
「待つ必要はありません。というより……もう待てません」
エイミアは静かに私の前に立ち、顔を掴むと……。
「……え、ちょっとむぐぅ!?」
な、何を……。
「……≪蓄電池≫」
バリバリバリバリィ!
ぎああああああああああああ!!
「あ、あんたは何してくれるのよ……けほ」
まだ口から煙が出てくるわよ……。
「フンだっ!」
あーあ、むくれちゃった。でも割と機嫌が良さげなのは何でだろう?
「それより……早く脱出しないとマズいわね。今の電撃は目立ちすぎたわ」
今までも十分騒ぎすぎだったけど、そこは割合する。
「エイミア、釘こん棒は?」
「ありますよ……よいしょっと」
ベッドの下に隠してたのか。エロ本かよ。
「……ていうか、あんた美徳装備はどうしたの?」
「あ、それです。それなんです!」
「……どれ?」
「じゃなくて! 私を拐った目的です!」
「……それって……あんたから美徳装備を奪うために拐ったっていうの?」
「はい。あの時現れたアナステさんに騙されたんです!」
「ア、アナステさん? 誰?」
「確か……暗殺組織のNo.2だって……」
……アントワナの部下か。
「で、何て言われたの?」
「はい。暗黒大陸に危機が迫ってる、それを回避するにはグレートエイミアの力が必要だって……」
「……ふーん……それで?」
「大陸の危機だと聞いて、黙っているわけにはいきません! だから付いていく事にしました」
「……あんた……そんな見え見えのウソに引っ掛かったわけ……? で、具体的にどういう危機か聞いたの?」
「いえ。暗黒大陸に向かう途中で意識を失って、目が覚めたらここに幽閉されてて」
……バカだ。
「騙されたあんたもあんただけど、そんな手で引っ掛けようとした敵も敵よね……」
「それは違うな。引っ掛けようとしたのではなく、稚拙な手で引っ掛けてみせたのだよ」
!!
「誰!?」
私の背後に立っていたのは、男装の麗人だった。こいつ、私に気がつかせることなく、背後に……!
「お初にお目にかかる。私がアントワナ様の片腕、アナステである」
……自分で片腕とか言うなよ。
みょーーーーんんん!




