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第一話 ていうか、検問所で早速騒ぎ。

 ダウロを出発して二日。乗合馬車の駅に着いたら、すぐにパンドラーネ方面行きの馬車に乗り込む。あとはひたすら揺られるだけの日々が続く。パンドラーネまで、お尻が痛いながらも気楽な旅が続くはず。

 そう、はずだったんですけどね……私達のことだから必ず何かあるとは思ってたよ。ふう……。



「はあ!? 手形が違う?」


 パンドラーネ山系の入口にある国境検問所。ここからアプタ連合国を出てパンドラーネ商国に入る。険しいパンドラーネ山系を越えてフット・ロー湖を渡れば麗しのパンドラーネ温泉なんですが……。


「はい、この手形では通すことはできません」


 いきなり躓いた。


「でもダウロのギルドマスターに発行してもらった確かな手形(もの)ですよ?」


「手形は確かだけどねえ……」


 ……この衛兵……ニヤニヤしてなんか気持ち悪い……。


「ここを通るには確かな手形だけではダメなんだよ」


 はあ!?

 手形以外に何がいるのよ?


「おい……さっきからお前とエイミアとマーシャンをチラチラ見てる奴らがいるぞ」


 リルが嫌悪感丸出しで耳打ちしてきた。確かに私のビキニアーマーの胸元やパンツの切れ込み辺りに視線を感じる。

 エイミアもマーシャンも居心地悪そうにソワソワしている。あの娘も何かを感じてるんだろう。

 ……マーシャンは違う何かを感じてそうだけど……。


「わかったわ。でもリルもお尻の辺りを見られてるわよ」


「……わかってんだけど……」


 リルは胸はないけどお尻と脚線美はピカイチだからねー。


「……誰か来たぞい。いかにもお偉方という面じゃな」


 マーシャンが嫌そうに呟いた。


「そこ小さいの。あとお前」


 一番偉いらしい役人が私達を呼んでる。


「あーイラつくなあ……」


 リルが殺気だってきた。エイミアもオロオロしてるし……仕方ない。


「私が話をまとめるから、あとはまかせて?」


「……わかった」


 リルは不承不承頷いた。


「はい、何ですか?」


「お前がこのパーティのリーダーか?」


 ……リーダー決めてなかった。

 仕方ない、仮で。


「はい。サーチといいます」


「あー、お前はどうでもいい。後ろの三人は置いていけ」


 ……は?


「どういうことですか?」


「いやな、後ろの三人にはある嫌疑がかかっている。それを晴らすためにも取り調べをしなければならないのだ」


 ……何よ、その取って付けたような理由。


「……どのような嫌疑なのでしょうか?く・わ・し・く、教えていただけますか?」


 お偉方の役人さんは少しムッとして。


「……お前に教えることはできん。極秘事項だ」


「……ずいぶんと都合のいい極秘事項ですね。同じパーティのメンバーを心配するのは当然のことですよ。もし文句があるんならギルドに」


 ギルドの名前を出した途端に、お偉方の役人は怒りだした。


「うるさい! 貴様のようなチビ女はさっさと失せろぐべっ!」


 チビ女と言われた時点で私は……キレたわあ!


「さっきから我慢してればえっらそうに! あんたみたいに権力くらいしか取り柄のない寄生虫野郎には、こんなもんいらないわねっ!」


 そういって鳩尾に極っていた拳を戻してから、思いっっっっきり蹴りあげる!


「やめてくれやめっっあっーーーっっ!!」


「貴様何をしていぐぼぉ!?」


「衛兵ー! 集まへぶぅ!!」


 なんか細かいのが出てきたので軒並み張り倒す。


「まかせろって言ってたヤツが最初にキレるなああ!」


 最近ツッコミ役が板についてきたリルも拳を振り上げる。


「たぶん誰でもこうなった気がします……二人とも離れてくださーい」


 待ってました! というくらいの勢いでエイミアも静電気を纏う。

 私達が離れるのと同時に≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)を開放する!


「「「しびびびびびびびびぃっ!」」」


 ザコ御一行様が仲良く黒焦げになってる間に、国境検問所から脱出した。



「さあて……どうしましょ?」


「一番最初にキレたお前が言うな!」


 ごめんなさい。


「でもリルだってけっこう殺気放ってたじゃない」


「ああそうだよ! 殺気だってたよ! でもなあ……まかせろって言ったヤツがあのザマかよ!」


 ……ホントにごめんなさい。


「でもどうしようもなかったと思いますよ。私だって怒ってますもん」


「……エイミアが私の代わりだったら……」

「……予告無しに放電だったな……」

「何でですか!」


 今までのあんた見てたら全員納得するでしょうよ。


「それより……もう検問所は通れませんよね……」


 そうだわ、それが一番の問題ねえ……。


「リル。他に道はありそう?」


「簡単に言ってくれるなあ……ちょっと待ってろ」


 そう言うとリルは地図を片手に森へ入っていった。


「どうするんですか?」


「あんな検問所だから……抜け道造ってる人がいてもおかしくないかなー、と思って」


 江戸時代の箱根の関所にも抜け道はあったらしいし。


「ほえ〜……そんな事もあるんですね」


 ……あんな検問所、女なら一人も通れそうにないしね。

 あ、そうだ。


「エイミア。≪妖○アンテナ≫(バッテリーチャージ)で何か感じない?」


「…………サーチ、お願いですから普通に≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)って言ってくださいね」


 ……ムダに鋭い。


「それじゃあ……いきます!」


 意識を集中させるエイミア。するとリルが戻ってきた。


「おかえり。どうだった?」


「ああ、「あっちに」あっちに……エイミア?」


 探知を始めたばかりだったエイミアと戻ってきたリルが同じ方向を指した。


「……あっちから強いせいでんきを感じます」


「エイミアが指した方角に小規模の結界があった」


 小規模の結界。


「それって……村? 盗賊のアジト?」


「規模からいって……盗賊がらみだな」



 そのころ、マーシャンは国境検問所で黒焦げになって失神していた。

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