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第十話 ていうか、盛大に落ち込んだリファリスを立ち直らせるには……?

 とりあえず半壊した監獄の片づけもある、ということで私達はしばらくアーランに留まることになった。

 ……何より。


「……もう三日目だけど、まだ出てこないんだな……」

「大丈夫なんだろうか、〝血塗れの淑女〟様は……」


 ……ライラの死が相当堪えたらしく、リファリスはテントに閉じ籠もったままだった……。



「リファリス様、お食事の用意ができましたが」


『…………いらない』


「そう仰らずに。もう三日間何も食べていらっしゃらないではないですか」


『…………いらないって言ってるでしょ』


「お身体の為です。少しはお食事を『いらないって言ってるだろ! さっさと下がれ!』…………リファリス様……」


 ……幾度となくエリザが食事を運んではいるが、中に入ることすら許さない状態が続いてる……らしい。



「……参ったわね……」


 まさかここまでリファリスが落ち込むとは。確かに昔からリファリスは仲間意識が人一倍強かったけど……。


「……もう少し注意して侵入してればなあ……」


「……サーチ姉、それは結果論と思われ」


「ん、わかってる。わかってるんだけどね……」


 ……ライラちゃん……何で監獄の中に……。


 バサッ


「あ、エリザさん。リファリス様は?」


 ……エリザは無言で首を左右に振った。


「そう……ですか」


 ……私以上にエリザはつらいんだろうな。自分の部下を失っただけじゃなく、リファリスもあんな状態で……。


「……あかんわ。ああなったら、ウチの言う事にも耳を貸そうとせえへん……」


「…………サーチさん。一番付き合いが古いあなたが何とかすべきでは?」


「…………私が? 大変なことになるだけよ?」


「? で、でも、このままじゃ……」


「…………サーチん、ウチからも頼むわ。悔しいけど、この状態のリファリス様を立ち直らせれるんは、サーチん以外におらへん」


 …………………はあ。


「仕方ないか……」


「……し、仕方ないかって……」


「エカテル、言いたいことはわかるけど黙ってて。私にも相応の覚悟がいることだから」


「……?」


「それよりも強力な回復薬でも調合してて。絶対に必要になるから」


「?? ……わ、わかりました……」


 私は振り返ることもなくテントを後にし、念話水晶を取り出した。



「リファリス、入るわよ」


 私は返事も待たずにテントを開く。


「…………何よ、さーちゃん……」


 声がしたほうに視線を移すと、組立式の簡易ベッドの上で踞るリファリスの姿があった。


「いい加減にご飯くらい食べなさいよ。エリザがどれだけ心配してるか、あんたにはわかってるんでしょ?」


「……わかってるよ……」


「ならさっさと食べなさい。ここであんたが倒れたりしたら軍が崩壊するわよ?」


「……わかってるって」


「わかってるんなら食べなさい。まずは食べることが立ち直る第一歩よ」


「……わかってるって言ってんのよ! 頼むから放っておいてよ!」


「放っておけないから来てんでしょうが!」


「そこを頼むって言ってんのよ!」


「頼まれたってどうしようもなんないのよ!」


「あ〜〜〜〜!! ああ言えばこう言う……! 何で口ばっか達者なのよ、さーちゃんは!?」


「達者なのは口ばっかじゃないんですけど。少なくともリファリスよりは強いつもりなんですけど」


「はん! そこまで強さに自信があるんだったら、何で爆破を止められなかったのよ!」


「不可抗力ってヤツよ。強ければ何でもできるってわけじゃないわよ!」


「はああ? 院長先生は何でもできたんですけど?」


「院長先生を持ち出すなっての………あ、でもリファリスよりはよっぽど何でもできるわよ? 料理とか、料理とか、料理とか?」


「料理料理うっさいわね。料理なんか料理人を雇って作らせりゃいいのよ!」


「自分でできないのは認めるのかしら? まあリファリスみたいな味オンチには、一生かかっても無理よね〜」


「あらあら、貧乏人の僻みってヤツ?」


「……ああ!?」

「ああん!?」


「殺るのかゴラァ!?」

「殺ったるわぃゴラァ!!」


 リファリスに飛びかかった。



 ズゴオオオオン!


「な、何!? 何が起きたの!?」


「あの方向は……リファリス様のテントや!」


「た、大変!」


 バタバタバタ!


「……ん?」

「……あれ?」

「……うぉ」


 ギリギリギリ……


「……前よりは腕をあげたわね、リファリス……」

「さーちゃんも間合いの取り方はうまくなったわね……」

「でも甘い!」

 ずごぉ!

「ぶふぉ!? ……何すんのよ!」

 ごがあああん!


 い、いったああああい! ひ、人の頭を鈍器で殴るなんて……!


「こんの……ヘンタイショタ女!」

 どごっ!

「ぐふぉ!? ……あんたみたいな露出狂(ヘンタイ)に変態呼ばわりされたくない!」

 ずぶぉ!

「げふぅ! ……ヘンタイはヘンタイでも両刀使い(ヘンタイ)でしょうが!」

 みしぃ!

「んぎゃふ! ……さーちゃんだって似たようなもんでしょ!」

 めきぃ!

「んぎゃ! ……リ、リファ姉と一緒にしないで!」

「がはっ! ……こ、こっちこそお断りよぉ!」

 がんごん! どかぼこどすぅ! ずどーんばがーんどどーん!


「な、何ですか、この怪獣の頂上決戦は!?」


「早く止めないと危ないと思われ!」


「い、いやいや。あんなん割って入ったら余裕で死ぬで!」


「て、ヤバイです! こっちにきたあああ!」


「……くぅぅらぁぁえぇぇ! 必殺リジーストライク!!」

「ちょ、ちょっとおおお!?」

「何の! エリザ・マイティガード!」

「リ、リファリス様ぁぁぁ!?」


 ごげんっ

「ぐぇ」「ぐぉ」


 ドサドサッ

「リ、リジー!? エリザさん!」


「おのれええ! よくもエリザををを!」

「そっちこそリジーを傷つけて……! 倍返しだあ!」


「あ、あっちで殺ってくださあああぁぁぁい!」


 ……何かエカテルの絶叫が響いた気がしたけど、たぶん気のせいよね。

 ……で、半日後。


「……はあ、はあ……」

「……ひぃ、ひぃ……」


「こ、今回は……」

「ひ、引き分けってことで……」


 リファリスが倒れるのを見届けて、私の意識も暗転した。



「イタタタ……ちょっと、エカテル! もう少し優しく」


「何言ってるんですか! 結局リファリス様と大喧嘩しただけで、何の解決にもなってないじゃないですか!」


「ふー、ふー……エカテル、ちゃんとリファリスを見たの?」


「はい?」


 そのとき、絶妙のタイミングでリファリスが治療テントに入ってきた。


「おっはよー♪ エリザはいる?」


「リ、リファリス様!?」

「エリザならリジーと一緒に肋骨を折ってベッドで唸ってるわよ」


「まだ治ってないの? だらしないわね」


「いやいや、リファリス様がそれを言ったらお仕舞いですよ?」


 ちなみにだけど、リファリスはとっくに種族スキルで完治してる。


「……あ、そうだ。エカテルちゃん」


「は、はい」


「……色々と迷惑かけちゃってゴメンね」


「へ!? い、いえいえ! そんな、恐れ多い!」


「だからさ、早くエリザを治してね……ライラ、行くわよ!」


『ちょ、ちょっとお待ちくださあああい!』


「…………………………へ?」


「何よ、どうしたの?」


「ら、らいらいらいらいららい!?」


「落ち着いてエカテル」


「ラ、ライラ!? 何故ライラちゃんが!?」


「……ああ、エカテルには言ってなかったっけ。知り合いの死霊魔術士(ネクロマンサー)に頼んで、ライラをゾンビにしてもらったのよ」


「はああああああ!?」


「腕はいいからさ、身体が腐ったりするようなことはないって」


「い、いえ。そういう事ではなくて!」



 ……今回のケンカ、実はまだマシな方だ。昔は孤児院を全壊させてしょっちゅう院長先生にシメられていたもんだ。

 ま、荒療治だったけど、リファリスが立ち直ったから……結果オーライで。

リジーとエリザが不運。

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