表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
596/1883

第九話 ていうか、私の目の前に現れたアントワナ。その真の姿は、私の前世からの因縁だった。

『わかるかな? わっかんねえだろうなあ………いひゃひゃひゃひゃひゃ!』


 ………ま、まさか。


「……あんた…………ハゲロバートじゃ……」


『元上司をハゲ呼ばわりの上に呼び捨てかい。相変わらず酷い対応だねぇ、(シャア)ちゃんよおお!!』


 まさか……こいつまで転生してたって言うの!?


「……ど、どういうことよ。あんたは私が殺したはず」


『同時にお前を殺したのはオレだよなぁ、ああ?』


 そう、こいつは。

 私が前世で最後に殺した相手であり、私に致命傷を負わせた男……。

 私の教官であり、私の育ての親………暗殺組織のNo.1、ロバートソン・ブラッド。


「何で……何でまた私の前に現れたんだよ!」


『何でだって? そんなの簡単だ』


 アントワナ……いや、ロバートは私を指差し。


『オレが作り上げた組織(モノ)を潰したお前に、復讐する為に決まってんだろが………あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!』


 ふ、ふざけんな……!


「前世で……前世で私から全てを奪ったのはあんただろうが!」


 相棒も、大切な(ひと)も、友達も、そして、私の……!


『何でお前のモノを奪っちゃいけないんだ? 前世でも言ったはずだ、お前はオレの手駒に(・・・・・・・・・)過ぎないんだよ(・・・・・・・)


 ……!


「……まだ……そんな寝ぼけたこと言ってるわけ……」


『何度でも言ってやるさ、使い捨て! お前はあの時、オレに大人しく殺されているべきだったんだよおおお!』


「……そんなんだから、組織を私に潰されたって、まだわかんないのかな……?」


『わからねえわからねえわからねえええ! 使い捨ての手駒の事なんざ、考えたくもねえなあ……いひゃひゃひゃひゃひゃ!』


 ……狂ってるわね……。前世だと、もう少し理性的に話せたヤツだったけど……。


「……まあいいわ。ここで前世の思い出話(・・・・)に花を咲かせたって時間のムダだし」


『ああ? 別にいいじゃねえか。こっちにおいでよ、(シャア)ちゃん。懐かしいだろお……いひ、いひひ』


「お生憎様。その鉄格子、電撃と超振動が働いてるわよね? 触った人間を一瞬で死なせる程度のヤツが」


『! ……へぇぇ。よくわかったね』


 当たり前よ。それだけ空気を震わせていれば、今の私にわからないわけがない。


「私を激発させて鉄格子に触れさせる。そのヘタクソな挑発も、目論見にさえ気づいちゃえば白々しいことこの上ないからね」


『……たく、相変わらずムカつく女だな、お前は』


「相変わらずアサシンとしては三流以下ね」


『へぇぇ……言ってくれるねぇ。けどよ、経営者としては超一流だったろ?』


「経営者としてはね。ただ指導者としては最低だったけどね」


『違いない。部下を使い捨てする指導者なんざ、最低としか言いようがねえよな? あひゃひゃひゃ!』


 ……前世では人を動かすのに、金の力を使っていた。けど今回は……。


「……ロバート。あんたはいつから≪女王の憂鬱≫メランコリー・オブ・クイーンを使えるようになったの?」


 私の言葉を聞いた途端、ロバートのイヤらしい笑いが消える。


『……お前、何でそれを知ってる』


「私だってムダにこの世界で生きてないわ。知識として持ってたって不思議じゃないでしょ?」


『……相当珍しいスキルのはずなんだが……まあいい。そうだよ、オレが使うスキルは≪女王の憂鬱≫メランコリー・オブ・クイーンだよ』


「あら、そんなに簡単に認めちゃってよかったの? 手の内を明かすことになっちゃうわよ?」


『なああんの問題もないさ。だってオレのスキルは……最強なんだからなああ! あひゃひゃひゃ!!』


「……じゃあ前にアントワナって名乗ってた女は……」


『オレの駒にすぎねぇよ。この大陸にゃ「私はアントワナだ」って思い込んでるヤツが何人もいるんだぜ? オレに操られてる事も知らずにな………あひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃ!!』


 …………。


 ビシッ!

『痛!? な、何だ?』

 コロンッ


『……石?』


「なかなかでしょ。この世界で覚えたスキルの一つ、≪指弾≫よ。とはいえ、あんたにダメージを与えることもできないけど」


『…………ふ……ふふふ……いひ、いひひひひひ! 流石の(シャア)も、この鉄格子越しには手も足も出ないか? あひゃひゃひゃひゃ!』


「だから石を出してるのよ。ほらほらほら!」

 ビシッ! ビシビシバシィ!

『や、止めろ……痛い痛い痛い痛いいい!』


「死ぬことはないでしょうけど、これだけでもかなりの苦痛になるはずよ。石は相当持ってるから、とことん苦しめてやれるわよ!」


 ビシビシビシ!

『や、止めろおおお!』

 グチャ!


『ぎゃあ! 目、目があああ!』


 ありゃ、目に当たっちゃった。潰れちゃったかな?


『き、貴様ああああ! よくも』

 ガゴッ!

『あぎゃあ!』


「おお、眉間に命中。銃だったら死んでたわね?」


『……ぁぁぁぁああああ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! チクショオオオ!! 手駒ぁ、全員出てこおい!』


 狂ったように叫びだしたロバートの周りに、虚ろな目をした女性達が歩み出てくる。


『お前達、肉壁となってオレを守れ!』


「「「……はい」」」


 ちぃ、人形達か!


(シャア)……オレはお前を殺す為にこの世界に転生したんだ。その為の準備も今までしてきた』


「その準備ってのが……この操られた女の子達だっての!?」


『そうだよ。生まれ持ったこのスキル、使わないなんて勿体ないだろ? だからコツコツと手駒を増やしてきたのさ』


「ちぃ……!」


『だからさ、(シャア)……お前への手向けだ。……こいつらと一緒に逝け(・・・・・・・・・・)


 ま、まさか!?


『じゃあな………あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!』


 ロバートの気配が……消えた。


「「「……爆破準備に入ります……」」」


 やっぱり人間爆弾か! 私は踵を返して窓に突進する!


 がちゃあああん!


「総員、退避! 退避ぃぃぃ!」


 私の叫びに反応できたか、できなかったか。それが生死の境目となった。



 ……カッ!

 ズゴオオオオオオオオオオンッ!!



 ……パラパラ……


「……ぅ……」

「た、助け……」


「ち、治療班は急いで怪我人の治療を!」


 リファリスの叫びに反応して、止まっていた現場が再び動き出した。


「エリザ、被害状況は!?」


「ま、まだ確認しきれてませんので推定です。収容されていた囚人はほぼ外に出ていたので無事ですが………内部の警備を担当していた兵士は……」


「……生存者がいるかもしれない。早く救出してあげなさい」


「わかりました。それと……………ライラが」


「ライラがどうかしたの?」


「……中に……」


「!? ……捜索を急ぎなさい! 早く!」


「はい」


「…………お願い、無事でいて。ライラ……」



 ……ガラッ


「ごほ、げほ……や、やってくれたわね……」


 どうにか脱出できたか。


「あ、サーチさん! 無事でしたか?」


「……あ、エカテル。私はかすり傷くらいよ」


「そうですか。良かったです……ただ……」


 ……?


「……ただ? どうかしたの?」


 エカテルは視線を本陣に向けた。誰かが泣き叫ぶ声が聞こえる。


「……エリザと一緒にリファリス様のお世話をしてた……」


「ああ、ライラちゃんだっけ。どうかした?」


「……ちょうど……中に入ってたらしくて……」


 ………!


「さっき……発見(・・)されました」


 ……何て……ことを……。



 この日。

 ロバート……いや、アントワナの運命が決まった。酷く血生臭い、惨めな最後が。

サーチの前世が、少しずつ明らかに?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ