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第八話 ていうか、モンスターを蹴散らし、ほぼ制圧が完了したアーラン監獄。でも内部には……。

 パチパチパチパチ


 五分ほどで戻ってきたエカテルと人形軍団を、私は拍手で出迎えた。


「おめでとう、エカテル。これであなたも最強狩り(Sリミッター)ね………エ、エカテル?」


 や、やべえ。目が据わってる。


「エカテル、命令。一切仕返し禁止」


「うぐ……!」


 トゲ無し棍棒を取り出したエカテルに先手を打つ。


「サ、サーチさん! あれはあまりにも酷くありませんか!?」


「え〜。そんなこと言われたって〜、何があったかなんて〜、全然わかんないし〜」


「ム、ムカつきます……! 私、ゴキブリに食べられて死ぬとこだったんですよ!?」


 ……何?


「……ホントに?」


「はい! 咄嗟に毒薬を撒いたら、何とか脱出できましたけど!」


 …………。


「……絶対命令。命の危険を感じたら、すぐに逃げなさい」


「え? どういう……?」


「逃・げ・な・さ・い! わかった!?」


「は、はいい!」


 ……たく、命懸けで戦ってもらったら、私の心臓がいくつあっても足りないわよ。


「…………」


「……何よ、ニヤニヤして」


「いえ。心配してくださってありがとうございます」


 ……私もやってることがツンデレ混じりなのかな……。



 ジャイアントダイオウゴキブリを撃退後、再び人形軍団が監獄内へ攻め入った。モンスターは大体狩ったから、今度は大丈夫だろう。


「……申し上げます、リファリス様。監獄に収容されていた囚人達を解き放ち、全員保護致しました」


「ご苦労様。囚人達の様子はどう?」


「かなり衰弱している者もおりますが、命に別状はないそうです。今は女神(エカテル)様が治療に当たってみえます」


「そう……あなた達は引き続き監獄の制圧を続けなさい」


「……御意」


 虚ろな目をした兵士は報告を終えると、再び監獄内へ駆け込んでいった。


「ここまで来たら陥落するのも時間の問題ね。さーちゃん、疲れたんだったら休んでてもいいよ?」


「へ? 別に疲れてないけど?」


「そう? さっきからボーッとしてるからさ、疲れてるのかと思ったんだけど?」


「ん〜……疲れてるんじゃなくて、ちょっと気になることがあったのよ」


「気になる事?」


「ええ。あのモンスター達のことがね」


 イクサネズミはいざ知らず、人食い蜂(マンイーター)やジャイアントダイオウゴキブリなんて危険なモンスターが、そうそう簡単に同じ場所に生息することがあるだろうか。


人食い蜂(マンイーター)が危険なことは折り紙付きだし、ジャイアントダイオウゴキブリは基本的に何もしないけど、一応S級モンスターだし……」


 逃げ回る印象しかないジャイアントダイオウゴキブリだけど、S級にランクされてるのは伊達じゃない。並の冒険者なら瞬殺できるくらいのステータスは持っているのだ。


「そうね、明らかに密集しすぎだよね」


 ……モンスターが密集してる……ていうか、集められてる(・・・・・・)!?


「ま、まさか……統率者(ガバメンター)!?」


統率者(ガバメンター)? 確か暗黒大陸限定の職業よね?」


「そう。モンスターを操ることができるのよ」


「へええ。あたしの≪女王の憂鬱≫メランコリー・オブ・クイーンの劣化版ね」


 ……劣化版?


「……リファリスってモンスターも操れるの?」


「できるよ。滅多に使わないだけで」


 リファリスによると、本家女王の憂鬱メランコリー・オブ・クイーンにはモンスターという駒が存在するそうだ。


「使いどころが難しい駒でね、あたしはまず使わないかな」


 ……モンスターも操れるって……まさか。


「……リファリス。モンスターを操るにしても、やっぱクラスの高いモンスターは……難しいわよね?」


「そう……だね。S級くらいになるとほぼ不可能かな……って、どこ行くのさーちゃん!?」


 リファリスの答えを最後まで聞かず、私は監獄に向かって走り出した。



 監獄内にはもうモンスターはいなかったけど、看守がまだ何人か残っていたので、全員捕まえて問い詰めた。


「あのモンスター達を従えていたのは誰?」


「……へ、知るかよ」


「命と引き換えの情報にしては、ちょっと安すぎると思わない?」


「何と言われようと喋る気はなぐしゃ」


 こいつはしゃべらない……と判断し、≪偽物≫(イミテーション)のハンマーを振り下ろす。


「次。あんたはしゃべってくれる?」


「オ、オレは何もしらないんだ! 頼む、助けてくれ!」


「……ホントに知らないの?」


「し、知らない! ホントだ!」


「なら見せしめで」


「そ、そんなごしゃ」


 私の頬に赤い液体が散った。


「……さて、最後。あんたはどうする?」


「しゃ、喋る。喋るから許してくれええっ!!」


「そ。じゃ、知ってることは全部しゃべって」


「モ、モンスターを連れてきたのはアントワナ様だ」


「……やっぱり……」


「ア、アントワナ様はこの監獄の囚人を使って、色々な実験をしていた。その中で完成したのが≪人間爆破≫だった」


 ……あのアサシンが爆発したヤツか。


「……アントワナはどこ?」


「アントワナ様はこの監獄の最上階にいる」


「……知ってるのはそれだけ?」


「俺が知ってるのは以上だ。一番最初にお前が殺したヤツなら、更に詳しく知ってただろうけどな」


「……そう」


 私はメモ用紙を取り出すと、サラサラッと用件を書く。


「このメモを外にいるエリザって子に渡しなさい。そうすれば悪いようにはしないから……たぶん」


「た、たぶんって……」


「ほら、行きなさい。約束通り命は助けてあげるから」


「あ、ああ……」


 生き残りの看守は外へと走っていった。私は清洗タオルを取り出し、赤く汚れた身体を拭いていく。


「……いよいよ追い詰めたわよ、アントワナ……! 仲間を傷つけた報い、キッチリと受けてもらうわよ……」



 最上階へと駆け上がり、気配を探る。


「……やっぱり……あの扉ね」


 いくつかある扉の中で、一番奥の扉から異様な気配を感じる。間違いない、アントワナはあそこだ。


「アントワナ! もう逃げられないわよ! さっさと出てきなさい!」


 扉に向かって声を張り上げる。


「怖じ気づいたのかしら? さっさと出てきなさいよ!」


 ……というより、声を張り上げることしかできない。一番奥の扉へと続く廊下は、カギの付いていない鉄格子で封印されているのだから。


 ……ギィィ……


 私の声に反応したのか、扉が開かれて……髪の長い女が出てきた。それは以前に姿を見せたアントワナとは別人だった。


「あんたは……アントワナ……なの?」


 形容しがたい空気を漂わせて、女は鉄格子の前まで移動する。あまりにも長い髪によって、表情が全くわからない。


『…………ひひ……』


「ん?」


『……ひひ……ひひひ……いひひひひひひひひひひひ!!』


 ……??


『いひひひひひひひひ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!』


「……何よ。何がおかしいの?」


『ひひひひひひ……こ、これが笑えないはずがない…………いひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!』


「だから……何だってのよ! いい加減にしないと殺すわよ!」


 この笑い声、何かイラつく……!


『いひひ……相変わらず人を殺す事には躊躇いはないみたいだなぁ』


「相変わらずって……私のことを知ってるの?」


『ああ。よぉく知ってるよぉぉ? 何てったってガキの頃から知ってるからなぁ?』


「あんた……誰よ?」


『久しぶりだなぁ……(シャア)?』


 な、何でその名前を!?

次回、アントワナの正体が明かされます。

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