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第七話 ていうか、監獄内部を進む歩兵部隊……その前に現れた恐ろしい敵は……?

 勇ましく駆け込んでいった歩兵部隊だけど、十分ほどしてから戻ってきた。


「うわああああ! 助けてくれえええ!」

「呪いだああ! この城は呪われているんだああ!」

「もう嫌だ! 母ちゃああああん!」


 な、何? 何が起きたの?


「どうしたの。ちゃんと報告しなさい」


「あ、〝血塗れの淑女〟様! 申し上げます!」


「はいはい、なあに?」


「ゴキブリが多すぎて先に進めなぶごぉ!?」


 ……リファリスの右ストレートがキレイに決まった。


「……エカテル、殺虫剤は作れる?」


「え? は、はい。天然由来の大地に優しい殺虫剤で良ければ」


「……大地には優しくても、ゴキブリにはキビしいヤツで」


「はい、すぐに調合します」


 ……ていうか、大の男が揃いも揃って、ゴキブリ見て逃げてこないでよ。全く……。


 ゴリゴリゴリ


「はい、この薬を撒けばゴキブリは近寄ってきませんよ」


 早っ!


「お、おおお! ありがたい!」

「女神だ、女神様だあああ!」


 女神って……い、いくら何でも極端じゃない?


「よし、それじゃあ先に進むぞ!」

「「おおーっ!!」」


 男達は再び監獄内へ駆け込んでいった。ま、これで陥落も時間の問題でしょ。



 しかし。


「うぎゃああああ! へるぷみぃぃぃ!」

「呪いだああ! 呪われてるとしか思えねええ!」

「マジで嫌だああ! お父ちゃあああん!!」


 ま、また戻ってきた!?


「ちょっとちょっと! 今度は何があったの?」


「あ、〝血塗れの淑女〟様、申し上げます!」


「はいはい、またゴキブリだったらブッ飛ばすからね?」


「ゴ、ゴキブリではありません!」


「だからなあに?」


「今度はネズミがんぎゃひぃ!?」


 ……今度は右からのブーメランフックがめり込んだ。


「エ、エカテル。今度は猫いらずを大量に」


「は、はあ。天然由来の大地に優しいのでいいですか?」


「優しいのでもキビしいのでもいいから」


「はい、わかりました」


 ゴリゴリゴリ

 ねりねりねり


「はい、できました」


 めっちゃ早いな! いつの間にか大量にダンゴが出来上がってるし!


「ほらほら、このダンゴを持ってさっさと突入しなさい!」


「め、女神様の施しだああ!」

「これでネズミも怖くないぞ!」


 ていうか、ネズミくらいで泣いて逃げてくるあんた達のほうが怖いわ。


「よーし、我ら歩兵部隊は勇ましく前進するぞー!!」

「「おおーっ!!」」


 ……こうして再び監獄へ突入してったけど……。


「……大丈夫……よね?」


「リファリス、人形化してさっさと陥落させた方が良くない?」


「…………考えとく」


 反動が痛いからあまりしたくないんだろうけど、この体たらくじゃ仕方ないんじゃないかな。



 ……そして予想通り。


「うっぎゃああああ! 命だけは! 命だけはあああ!」

「もはや呪い以外の何モノでもないいい!」

「無理無理無理ぃ! じっちゃんばっちゃあああん!」


「あーもう! 今度は何!? ムカデ? ゲジゲジ?」


「そ、そんな生易しいもんじゃありません!」


「じゃあ何なのよ!?」


「は、蜂がうぐぉっほう!?」


 右アッパーカットがアゴを捉え、兵士は昏倒した。


「蜂ぐらいで逃げてんじゃないわよ! もうあったま来た! あんた達人形化して、ゾンビアタックしてもらうからね!」


「「「そ、そんなあ……」」」


 いや、こんなの実戦でも役に立たないだろうから、今回で使い潰しても問題ないでしょ。


「……リファリス、私がこいつらを先導していこうか?」


「え、さーちゃんいいの?」


「仕方ないじゃない、このままだと埒が明かないし……人形化したとしても、こいつらじゃ不安しかないから」


「……わかったわ。今回はさーちゃんの命令を聞くように調整しとくから、せいぜいコキ使ってやって」


「わかった」


「よし、それじゃ……≪女王の憂鬱≫メランコリー・オブ・クイーン!」


 歩兵達は全員無表情になり、人間らしさが一切消えた。



「…………」


 ザッザッザッザッザッザッザッザッ


「……ねぇ」


 ザザッ


「……気味悪いんだけど」


 いくら私の言うことを聞くとはいえ、無表情で足並みを揃えて付いてこられると……。


「……ご命令をどうぞ」


 何が言っても返事はこれだし。


「なら足音立てずに付いてきて」


「……了解しました。努力します」


 ……努力……ね。ため息を吐いてから、私は再び歩き出す。


 ……………カッ……………コッ


 スゲえ。何で最初っからこれができなかったかな。


「……あの」


「うひゃい!? な、何よ。いきなり耳元で話しかけないでよ!?」


「……申し訳ありません」


「……で、何?」


「微かに音を立ててしまったお詫びを」


 いらんわ!


「そこまで気にする必要はないわ。多少の音なら気にしないから」


「……わかりました」


 ……ふう。極端なんだから。再び歩き出す。


 チャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカ


「うっさいいい! 今度は何なのよ!」


「……多少の音は立ててもいい……とのご命令でしたので」


「それが多少の音か! 全員でタップダンスしながら付いてこられたら、余計にうるさいだけじゃないの!」


「……ならばどうしろと!?」


 人形化しながら逆ギレすんなよ!


「……さっきみたいに静かに付いてきて」


「……遺憾ではありますが忖度します」


 政治家かよ!



 ブウウウンンン……


「……ねえ」


「……はい」


「蜂って……これ?」


「……はい」


「ふざけんなあああ! これ、立派なモンスターじゃないの!」


 蜂といっても体長約1m。毒々しい色をした巨大なこの蜂は人食い蜂(マンイーター)という。


「ザコだけど集団で来られたら厄介なヤツなのよね」


 ブブブブブウウウンンン……


 ……当然集団だ。


「突撃ぃ! 全部倒しちゃいなさい!」


「……了解」


 リファリスの言う通りに、存分にゾンビアタックさせて人食い蜂(マンイーター)を撃退した。



 チュウチュウチュウ!


「……で、ネズミはこれ?」


「……はい」


 ……体長1m半、どこにでもいるザコモンスター、イクサネズミだ。


「……猫いらずは?」


「……効きませんでした」


 だろうな。モンスターだし。


「……もう一度突撃ぃ! ゾンビアタックの恐ろしさ、存分に味わわせてやれ!」


「……了解」


 チュチュ!?


 あ、イクサネズミが一斉に逃げ出した。確かに怖いけどね、無表情人間の特攻って。



 ……ほとんどイクサネズミには逃げられたけど、出口はリファリスが塞いでるから……大丈夫だろう。


「さて、あとはゴキブリだっけ。まさかゴキブリもモンスターだ、とか言わないわよね?」


「……その通りです」


 ピシィ!


 ……な、何ですと?


「それって……ジャイアントダイオウゴキブリ?」


「……そうです」


 ……………。


「命令、エカテル、今すぐにここまで来なさい」


 …………タタタタダダダダ!! キキィィ!


「ふはあ、はあはあはあ……な、何ですか、急に?」


「エカテル、絶対命令。こいつらを連れてっていいから、この奥にいるモンスターを殲滅してきなさい」


「は、はい! わかりました!」


 そう言って歩兵部隊を引き連れ、暗闇へ消えていった。


「エカテル……骨は拾ってあげるからね……」


 ……しばらくして、エカテルのけたたましい悲鳴が響いた。

 ……合掌、礼拝。

エカテル、立ち直れない。

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