第六話 ていうか『ごーごーれっつごー、れっつごー、リファリス!』 「……あれ、うるさいだけなんだけど!?」
今日、いよいよ攻略を開始する。するんだけど……。
どんどんどん、パフパフパフ!
『リファリス軍の皆様、頑張ってくださああい!』
『フレー、フレー、リ・ファ・リ・ス! 頑張れ頑張れリ・ファ・リ・ス! わああああ!』
「…………衛兵、地元商工会の皆さんに静かにしてもらって、ある程度離れるようにお願いしてきて」
「りょ、了解しました!」
こうして新たに警備員として数十名の兵を動員することになった。ああ、少ない兵がさらに少なく……。
「それじゃさーちゃん、壁を登って内側から門を開いてきて」
……またまたムチャ振りを……まあいいけど。
ブンブンブン……ビュ! ……ガッ!
鉤付きのロープは見事に引っ掛かる。確認で引っ張ってみたけど外れる気配もないし、一気に登りますか……!
『頑張れ頑張れビキニのねーちゃん!』
『頑張れ頑張れビキニのねーちゃん!』
『登れ!』『登れ!』『登れ!』『登れ!』
『わああああああ!』
お、お願いだから静かにしてくんないかな!?
「何だ、この騒ぎは?」
げええっ、敵に見つかった! 全速力で壁を登り切る。
「な、何だ貴様は!? 出合ええ、出合ええ、曲者だあああ!」
あーもう! めんどくさいことになっちゃったじゃない! 急いで短剣を作り出すと、叫んでる敵兵を背後から斬り裂いた。
「がふっ! は、背後からとは……卑怯な……」
「……ていうか、背後から斬られるような隙を見せるほうが問題なんじゃ……」
倒れた男につっこんでると、中からわらわらと敵兵が出てきた。人数は八人。
「こ、こいつを叩き斬れ……がくっ」
「き、貴様! よくも仲間を……! 斬れぃ、斬り捨てぃ!」
全員が剣を抜く……前に。
「遅いっ」
私は敵兵に肉薄していた。
ずばっどしゅ!
「「ぐあああああっ」」
……まずは二人。
「な、いつの間に!?」
「動揺するなら敵を斬れ!」
とあるドラマの有名なセリフをモジって叫ぶ。
ズブリ!
「ぐふぅ!?」
ついでに刺しとく。これで三人目。
「ちっくしょおお!」
「おらあああ!」
「ほいさっ」
けんっ ずざざっ
「ぃでえ!」
がむしゃらに斬りかかってきたうちの一人を、足払いで地面に転がす。
「よいさっ」
ぼきぃ!
素早く飛び上がって、転んだ敵兵の首に着地し、骨を砕く。これで四人目。
「こりゃさっ」
べきぃ!
ついでに隣の敵兵の首に蹴りを叩き込み、骨を折っておく。これで五人目。
「う、うわあああ! こいつ、化け物だああ!」
「失礼ね。私がバケモノじゃなくて……」
ザンッ!
「……あんた達が弱いのよ」
六人目っと。
「ひ、ひぃぃ!」
「助けてくれええ!」
「あ、逃げた! ちょっと待ちなさいよ!」
ヒュヒュン! ドスドス!
「ぐっ!」「ぎゃ!」
ドサアッ
「……矢ってことは……リジーか」
遠くでリジーが手を振ってるのが見える。私も振り返すと、一旦引き上げるためにロープに手を掛けた。
「あれぇ? さーちゃん、何で門を開けてこなかったの?」
「あんだけドンチャン騒ぎしてくれれば、敵だって警戒するでしょ!?」
「……そりゃそうか。衛兵、なるべく刺激しないように、商工会の皆さんを黙らせて」
「りょ、了解しました」
……リファリスが無理難題を押しつけるのは、私達だけじゃなかったか。
「……刺激せずに黙らせろって……私でもムリよ?」
「そうね。あたしでも遠慮するわ」
「……ヒドいヤツ」
「あら、じゃあさーちゃんに頼もうかしら」
全力で遠慮させていただきます。
結局敵を刺激するだけの結果になってしまい、警戒レベルが段違いにあがってしまった。
「ん〜……こうなったら力攻めでいくしかないか」
……強硬突破。門をぶち破るのね。
「さーちゃん、いつもの大砲「あいにく弾切れ」……そっか」
こうなったら丸太でドンッ! しかないわね。
……ん? 待てよ?
「これでいいじゃん」
私は炸裂弾を取り出すと、門に向かって投げた。
ひゅ〜〜ん………どっかああああああん!
「む、無茶するわね〜、さーちゃん」
「いいじゃない、これで門は破壊できたはず」
……煙が風で流されていき………お、おおお!?
「び、びくともしてない……?」
「うわっはっはっは! 恐れ入ったか、愚民ども!」
丈夫な扉にあ然としていると、門の上でハデな服装をした小デブが威張って叫んだ。
「この扉には古人族直伝の強化魔術がかけてある! 例え大砲を持ってしても、傷一つ付けられぬわ! はーっはっはっは!」
……何かイラつくわね、あのデブ。
「この魔術を破るのは下賤なお前達には絶対に無理なのだ! 木材をオリハルタイト並みに強化しているのだからな!」
……木材を、か。
「みんなー、ちょっと耳塞いでー」
もう一回炸裂弾を投げる。
どっかああああああん!
「……げほごほ! な、何度やっても同じなのだ! うわっはっはっは!」
……よし、こんなもんだろな。
「リジー、エカテル。門の蝶番をピンポイントで攻撃できる?」
「ちょ、蝶番をですか? 多分大丈夫ですけど……」
「以下同文」
「それじゃお願い。同じ箇所を狙って」
まずはエカテルが石を打ち込む。
かきーん! ……がつん!
「おー、キレイに当たったわね」
「次は私が」
キリキリキリ……ピシュン! ……ガッ!
「お、当たーりー♪」
「何がしたいかはわからぬが、無駄だ無駄だ! わははははは!」
かきーん! がつん!
キリキリキリ……ピシュン! ……ガッ!
……三発ほど当たったところで、少し門が傾いた。
「よーし! もう一回耳塞いでー!」
再度炸裂弾を投げる。
どっかああああああん!
ごとっ! ばたあああんん!
「ぃよっし、破れた!」
門は片方だけではあるが、見事に外すことに成功した。
「な!? 何故だ! 我々の強化魔術を炸裂弾ごときで破れるはずがない!」
「だって、あんた言ったじゃん。『木材を強化した』って。だったら強化されてない金属製の蝶番を集中して狙えば、そのうちに破壊できると思ったのよ」
「し、しまったああああ!」
「エカテル、あのバカにも一発お願い」
「はーい」
かきーん! ばごん!
「ぎゃ!」
よし、スッキリした!
「今よ! さーちゃんが破った扉から内部に攻めこみなさい!」
「「「おー! わああああああ!」」」
リファリスの号令に合わせて、歩兵部隊が監獄内になだれ込んでいった。
「門を破ったんだから、陥落するのも時間の問題ね」
『おー、すげーぞ! ビキニの姉ちゃん!』
『バカ、聞いてなかったのかよ。あの姉ちゃんはさーちゃんって言うんだぜ!』
『お、そうか。なら………皆、せーの!』
『『『レッツゴー、レッツゴー、あいらぶさーちゃん!』』』
『『『それいけ、それいけ、みんなのさーちゃん!』』』
止めんかいっ!
アーラン監獄、ついに陥落?