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第四話 ていうか「リファリス様はー、私達だけを見なさい!」「「「私達だけを見なさい!」」」 「浮気ー、反対!」「「「浮気ー、反対!」」」

 老衰ダメンズから獲れたてイケメンズへと幕僚が入れ替わったことで、平均年齢も忠誠度も大幅に改善された。当然ながら指揮系統もずいぶんと改善されることになり、リファリスにとっては最高の一手となった。


「もうっ! リファリス様の事なんか知りません! ふんっ!」


 ……盛大にご機嫌を損ねたエリザ達メイドーズが、ハンストを起こした以外は。



「……で、何で私達に白羽の矢を立てるわけ?」


 突然リファリスに呼び出されて行ってみると、そこにはゴミの山に埋もれかかったリファリスがいた。ていうか、昨日までキレイに整理整頓されてたわよね?


「さーちゃん、助けて。エリザがヘソ曲げちゃってさ」


「ヘソ曲げたって……まさか、もうイケメンズを食べちゃったわけ!?」


「え、えへへへへ〜……」


 朝からエリザが抗議活動の具体的な方法を聞きに来たけど、これが原因だったのか。そのエリザは他のメイドを引き連れて、私が教えた通りに『浮気反対!』『私達だけを見て!』というプラカードを掲げて、本陣の周りをデモ行進している。


「やっぱさ、エリザがいないと色々と滞っちゃって……」


 滞るにも程があるだろ。ゴミをゴミ箱に入れる、くらいの基本的なことは自分でやれ。


「……で、何をしろと……ていうか、想像はつくけど」


「うん、臨時メイド」


 ……私は大きく大きくため息をついた。


「……礼儀作法なんか知らないから、しゃべり方はこのままよ。それでもいいの?」


「構わない」


「いつまで?」


「一週間。それまでに話はつける」


「……報酬は?」


「……これくらい」


 ……私はリファリスが金額を示した紙に、0をもう一つ付け加えた。


「ふえ!? ちょ、ちょっと高くないかな!?」


「いいわよー、他の人に頼んでくれても?」


「うぐ………わ、わかったわよ! 払うわよ、払えばいいんでしょ!」


 ……よし、交渉成立っと。



「……それでは一週間だけ、よろしくお願いいたします」


「「お願いいたします」」

「しまーす♪」


「……リジーとエカテルはわかるけど……ドナタちゃんまで?」


 何言ってんのよ。ドナタは貴重な戦力よ。


「それじゃあ役割分担。リジーは洗濯、エカテルは掃除。私は食事関連を引き受けるわ」


「うぃ!」

「わかりました」


「で、ドナタは……リファリスの仕事の補佐ね」


「りょうかいです!」


「ちょ、ちょっと。あたしの補佐って……」


「まあいいから、三十分くらい付き合わせなさいよ。そうすれば理解できるから」


「??」


 ……三十分後、リファリスのテント内がキレイに片づきだした頃には。


「りふぁりすさま、このあんけんはこうしたほうが」


「そ、そうね。そうするわ」


「りふぁりすさま、けいさんちがう」


「ご、ごめんなさい」


「りふぁりすさま、いろいろだめだめ」


「あうううう!! ドナタちゃん、厳しいよおおお!!」


 ……立場は完全に逆転していた。



 臨時メイド二日目。


「さーちゃん、悪いんだけどさ」


「……何?」


「一応仕事着だからさ、全員メイド服を着てくれないかな?」


 ……別にメイド服を着る必要性は……。


「給料三割アップ」


「全員着替えて〜」


 ……三十分後。


「こ、こんなモノでしょうか」


 エカテル、さすがによく似合ってる。将来の就職予定先の制服は、エカテルの体型に意外とマッチしていた。


「うん、悪くない」


「……って、リジーが着れるヤツあったの?」


「うん。呪いのメイド服があった」


 ……若干メイド服の端っこが赤いのは……血だと思う。ていうか、そんなメイド服、何でリファリスが持ってるのよ?


「さーちん、どうかな〜」


 ドナタは伊達メガネをクイッと引き上げ……へ?


「な、何でドナタは秘書風なの?」


「だってさ、似合うじゃん」


 ……リファリス、趣味に走らないでよね。


「それよりさーちゃん、よくそれを着たわね」


「それって……これ?」


 私のヤツはミニスカにヘソ出し、しかも胸の谷間に切れ込みという謎仕様のメイド服だった。


「冗談で置いといたんだけど……」


「へ? 別にいいじゃん」


 動きやすいし。ビキニアーマーとそんなに変わらないし。


「……ま、いいけどね。目の保養にはなるし」


「…………変な気は起こさないでね?」


「わかってるよ。何故かわからないんだけど、さーちゃんには食指が動かないのよね」


 それは幸い。私だってリファリスにその気を起こされても困る。まあ起こされたら滅殺するけど。


「それじゃあ今日もお願いします」

「「「「はーい」」」」


 今日のエリザ達は、本陣前での座り込み。まあ労働者の権利だから、止めることはできない。


「リファリス様、ちょっと退いていただけます?」


「ほいほい」


 テント内をホウキで掃き始めたエカテルが、何か薬草を撒いている。


「……エカテル、何を撒いてるの?」


「あ、これですか? 水分を含ませた薬草で、ゴミを絡め取ってくれるんですよ」


 あ、出し殻撒くのと一緒か。


「ついでにダニや雑菌も殺せますし、ワックスの効果も抗菌効果あるんですよ」


 ……前言撤回、出し殻なんか目じゃなかった。


「……ねえ、サーチ姉」


「ん? あぁ、リジー。洗濯は終わっ……て……」


 大量の洗濯モノを抱えて歩くリジー。だけどなぜか禍々しい気配を発しながら。


「な、何か危険なオーラを醸し出してるんだけど?」


「どうしよう、サーチ姉。洗濯していく度に、このメイド服の呪いが感染していくんだけど」


 怖いな、おい!


「い、一体何の呪い?」


「三日以内に洗濯しないと、匂いが倍増する呪い」


 ……呪いっていうより、単なる嫌がらせでは?


「……要はちゃんと洗濯すれば問題ないわけね。リジー、しっっかりと洗濯をお願い」


「はい」


 ……珍しくちゃんと返事したわね。


「……さっき、何週間も洗ってなさそうな靴下を発見し、触れた。そしたら呪いが感染して……」


「…………それ、どうしたの?」


「焼いた。焼却した。浄化した」


 …………凄まじかったのね。


「わかったわ。こっそり世界を救ってくれてありがとう」


「…………引き続き世界を救う」


 ……世界を滅ぼしかねないような靴下、その辺に置いとかないでよ、リファリス……。


「……っていうか、どこで焼いたのかしら……?」


「サーチさん、サーチさああああああん!!」


 悲鳴のように私を呼ぶ声。あの声は……エカテル?


「ど、どうしたの!? 一体何事!?」


「敵の攻撃です!」


 !? ま、まさか籠城してる敵が打って出てきたの!?


「どうやら毒ガスを使った攻撃らしいです。外で次々に兵士が倒れています!」


 ……………毒ガス?


「……エカテル、今すぐにリジーを呼んできて」


「は、はい?」


「早く!」


「わ、わかりました!」


 ……試しに外を見てみると……うっわ、臭!! これって≪毒無効≫がないと倒れるレベルよね!?


「サーチさん、呼んできました」


「何、サーチ姉?」


「……あんたさあ……どこで靴下焼いたの?」


「え? テントを出たすぐで」


 ……私の膝がリジーの鳩尾を捉えるのは、この三秒後だった。



「ごほごほ……な、何なんですか、この煙?」


「エリザ!」


「ど、どうしました、サーチ様?」


「お願い、メイド業に戻って! 今すぐに!」


「はい?」


「あんた達の手に、世界の命運がかかってるのよ! お願いだから復帰して、毎日洗濯して!」


「……はい??」



 リファリスお抱えのメイドーズ。彼女達の活躍によって、この世界の平和は保たれている……。

リファリスの足は相当臭いらしい。

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