閑話 ビキニアーマー紀行 4 嘆きの竜じゃないけど嘆く
前回のあらすじ
フェンリルを狩ってきたが傷物でNGとなる。
新たにSクラスのモンスターを狩ろうにも嘆きの竜だの地獄門のケルベロスだの不死鳥だのほとんど無理なものばかり。
残るSクラスを狩ろうか迷うところ。←いまここ。
その最悪と呼ばれるSクラスは……。
ジャイアントダイオウゴキブリ。
さて、どうなるやら……。
カサカサカサ……
「……いやああああああ!!やっぱムリー!」
私は泣きながら逃げた。
私近距離が専門なのよ!? あんなの見るだけでも嫌なのに近寄って斬りつけろっての!?
ムリムリムリ! 下手したら体液が……ぎゃあああ! 想像しちゃったー!
「リルー! 矢でなんとかしてよー!」
「ムチャ言うな! 装甲が硬すぎて通用しねえよ!」
「ドラゴンの髭使いなさいよ!」
「ムダにMP使いたくないんだよ!」
「じゃああんたが素手で殺りなさいよ!」
「素手……ぎゃあああ! 想像させんじゃねえ!」
不意に言い争いが止む。
……あれ?
「エイミアは?」
リルが指差す先に……。
「あんた何で隠れてんのよ!」
岩の陰に潜んでいたエイミアを引っ張りだす。
「きゃあ! 変なとこ引っ張らないでください!」
「隠れてたあんたが言うことか……! ……今日、黒?」
「な、な、何を見たんですかー!」
顔を真っ赤にして叫ぶエイミア。和むわー。
「私の反応見て和まないでください!」
……ほんと鋭い。
「もう……」
カサカサカサ
「いやーぎゃあやだやだやだー!」
また隠れた。
「エイミア、隠れてないで参加しなさいよ!」
また引っ張る。
「いーやーでーすー……」
ローブの裾を引っ張る。まためくり上がって……。
「きゃー! 見えちゃいますやめてー! サーチのスケベエッチー!」
「マーシャじゃないんだからそんな趣味ないわよ! 隠れてないであんたの釘棍棒でぶっ潰しなさい!」
思わずぐちゃっと潰れたジャイアントダイオウゴキブリが浮かぶ。
「「いやー!」」
私とエイミアの叫び声がハモる。
カサカサカサ……カサ
その時、背後に別のジャイアントダイ……めんどくさいから縮めてGがあらわれた。
ちょうどエイミアを引っ張り出した弾みで後ろにたたらを踏む。
そして剥き出しの背中にべチャリと何かが……。
「!!!……き、き、きゃあ! きゃあ! ぎゃあああ!」
思わず素手でブッ飛ばす。
で、その感触でさらに反応してブッ飛ばす。
……しばらくこれを繰り返した私の手柄で無事Gをゲットした。
「……これ魔法の袋に入れるの!?」
……入れるしかなかった。
「……今度は何を採ってきたんです?」
テンションだだ下がりの私達を見てアップリーズさんが苦笑いした。
「……Sクラスです……」
「Sクラス……ケルベロスかい? それとも不死鳥かな?」
「違います」
「……まさか……嘆きの竜?」
まさか。
「ほかに……Sクラスって……」
あ、アップリーズさんの額に冷や汗が……。
そして。私は三重に手袋をはめた手を魔法の袋に突っ込んで……。
突っ込んで……。
……うぅ〜……。
触りたくない……。
「……うひゃあ!」
でも我慢して出した。
べちゃっ
「……! ……!! ひぃっ」
なんか嫌な音したー!
「うわぁ!」
あ、アップリーズさんが逃げた。
「「「「ヒャッハー……」」」」
あ、バイトヒャッハーズが並んで倒れた。
……白目で泡噴いてる。
「バ、バカ野郎ー!!! こんなもん持ち込むなー!!」
……アップリーズさんの超怒声がウェイロードスラム中に響いた。
「こんなものが素材になるわけないだろ! 捨ててこい!」
……と言われて谷底に捨てた。
……すごーい。翔んでた蝿すら避けてくわ。
「……道理だな。素材だとしても装備したくないし」
「まずはそこに気付くべきだったわ」
「それより……どうします? もうSクラスなんて……」
……いないわね。
どうしよう……仕方ない、アップリーズさんに聞くしかないか……。
「……ちゃんと捨ててきただろうな?」
「「「すいませんでした」」」
「……バイト全員治療院行きになっちまったんだぞ、バカ野郎が」
「「「……まことに申し訳ありません」」」
ひたすら謝り続けて……それから素材の情報のお伺いをたてた。
「まあ難しいわな……」
「あの〜……」
するとエイミアがおずおずと手をあげた。
……また無意味に胸が震えた。
「……何だ?」
「例えばですけど……倒さなくても採れるような素材ってないんですか?」
……?
「どういうこと?」
「あ、前にオーガの角の採集の仕事あったじゃないですか。あれってオーガが寝てる間にこっそり採ったりできましたよね? それと同じことできないかな〜って……」
……Sクラスにそれは通用しないでしょ……。
「……まあ、無くはない」
はあ!?
あるの!? なら最初から……。
「ただ生きたフェンリル捕まえてくるほうが何倍も楽だと思うが」
「……でもケルベロスや不死鳥倒すよりはマシよね?」
「う、う〜ん……まあ、そうだな」
よし、それに賭けよう!
「それは何ですか?」
しばらくアップリーズさんは躊躇っていたようだけど。
教えてくれた。
「嘆きの竜の尻尾の鱗が2、3枚あれば何とかなる」
嘆きの竜……ですか……。
明日から新章、温泉と森編です。
サーチ「評価やブクマお願いしま〜す。もし入れてくれたらリルのお色気シーンが五割増し」
リル「てめえ!殺すぞ!」
サーチ「んぎゃああ!」