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第二十二話 ていうか、敵はほんの百人程度? だったら私達だけでぶっ飛ばしてやる!

 旅館に泊まっている間に敵の部隊について聞いて回ったんだけど、有力な情報が一件飛び出した。


「このまま北へ向かうとアーランっていう監獄都市がある」


「か、監獄都市?」


「ああ。帝国に逆らった連中をぶち込む為に作られた都市でな、その途中の宿場町に百人くらいの斥候部隊が逗留してたぜ」


「……詳しいわね」


「こっちだって帝国相手に商売してる身の上だしな。それぐらい情報を把握してないと、必要な物資は用意できねぇよ」


 確かにその通りだ。部隊によって必要なモノは当然違ってくる。


「何を主に調達した?」


「雪山の装備が大半だ。おそらくカチカチかカリカリを越えるつもりなんだろ」


 ……ってことは、帝国軍の敗北は伝わってない?


「ちなみになんだけどさ。ここから山脈の向こう側に念話ってできるの?」


「はあ? できれば苦労しねえよ。山脈の途中にあった中継所が、雪崩に巻き込まれてぶっ壊れちまったからな」


 やっぱり! 男に十分な謝礼を払うと、酒場を出た。



 私も何度か念話してみたけど、リファリスに念話することはできなかった。


「だったらソレイユを経由するのみ」


 ソレイユは弱い念波もキャッチできるから、おそらくは届くはず……。


『…………ザザ……あ、もっしもーし!』


「久しぶり、ソレイユ」


『お、サーチじゃん。それより、何でこんなに念波弱いのかな?』


「サンダカ山脈の中継所が全壊しちゃったみたいでね」


『ああ、あの粗末な中継所ね。雪崩にでも飲み込まれたんでしょ?』


「みたいよ。詳しくは知らないけど」


『設備も場所も最悪で、よく今まで無事に動いてたもんだったからね。よし、今度はアタシがちゃんとしたヤツを設置してあげるよ!』


 それはありがたい。ソレイユ製の中継点は感度抜群なのだ。


「ありがと。それとさ、ソレイユから念話をリファリスに中継してほしいんだけどさ」


『なーにー。魔王様を念話の中継点扱いするわけー?』


「ごめんごめん。一つ借りでいいからさ」


『よっし、貸し一つゲット! ちょっと待ってなさいよ〜……』


 一瞬水晶が砂あらしになり、リファリスの顔が映し出される。


『はいは〜い』


「リファリス? サーチだけどさ」


『山越えできたみたいね。地獄の雪男(ヘルイエティ)はやり過ごした?』


「…………その辺はまた機会があったら話してあげるわ」


『そ、そう?』


 リジーがやらかしてくれたんだよ。何とかなったけどさ。


「それより! こっち側には思った以上に敵はいないわ。百人規模の斥候部隊がいるみたいだけど、自分達が負けたことはまだ伝わってないみたい」


『マジで!?』


「それなりの規模の軍も、二、三日で来れる距離にはいないわね」


 いるとしてもアーランくらいだろう。


『……さーちゃん、ありがとう。とってもありがたい朗報よ……エリザ! 今すぐに全軍出撃準備を!』


『はい!』


「全軍って……サンダカ山脈越えるの?」


『すでに先見部隊でカチカチ峠は確保してあるのさ♪』


 流石リファリス、抜かりはないわけだ。


「ただこっちにいる斥候部隊が雪山装備を買い求めてたらしいの。もしかしたらかち合っちゃうかもしんない」


『え、ええ〜……相当狭い峠道みたいじゃない。そんな場所てかち合うのは嫌だなあ……』


「そうね」


『嫌だなあ……』


「……そうね」


『嫌だなあ……』


 ……たく。


「わかったわよ。その斥候部隊を潰しておけばいいんでしょ?」


『さっすがさーちゃん! 好き好き、愛してる〜♪』


 ちょっと! そんな軽々しく『愛してる』なんて言うと……!


『……リファリス様』


『へ? ……エ、エリザ?』


『わ、私というモノがありながら………やっぱりサーチに横恋慕していたんですか!』


『ちょっと、違うわよ。何を勘違いしてるのよ』


「……だから言ってるじゃない。毎回『愛してる』って気軽に言うのは止めろって」


『気軽に!? そんな……誰でもいいって事なんですか!?』


『違うわよ! ごめんさーちゃん、ちょっと面倒な事になったから切るね…………エリザ、大人しくしなさい』


『え、あ、そんな、リファリス様……あぁ』


 プツンッ


「……ちっ。肝心なとこで切れちゃった」



 すぐにリジーを回収し、私達はその日のうちに『奈々鳴館』を出発した。


「行ってらっしゃいませ、ご主人様!」


「わ、私達にはそれはいいから」


 すっかり妄想メイド化したアマコに手を振り、私達は次の宿場町へ向かって出発した。


「道はこの一本しかないみたいだから、そのうち遭遇しかねないわね」


「ならどうする? どこかで待ち伏せする?」


「……あのね。たかだか百人くらいで(・・・・・・・・・・)私達が後れを取ると思う?」


「……確かにそうだと思われ」


「だから正面からぶち当たって、完膚ないくらいに叩きのめすわよ!」


「おうっ!」



「……隊長、戻りました」


「うむ、どうだった?」


「この先には敵は見当たりません。数人の冒険者が歩いているのみでした」


「そうか。本隊からの連絡が途絶えたままだから、もしや……と思ったが。やはり山脈の中継所が原因か」


「ならばやはり山越えを?」


「……山脈越しで念話できないのは、やはり痛い。一度本隊と合流し、今後の事を話し合った方がいいだろうな」


「わかりました。では山越えという事で」


「頼む」


「た、隊長! 隊長ーーー!!」


「何事だ!」


「て、敵襲です!!」


「な、何ぃ!? 敵の数は!?」


「二名です!」


「は?」


「もう半数が殺られましたああ!」


「はあああああああっ!?」



 ザンザンザン!

「「「うぎゃああ!」」」

 ドササッ


 ……これで二十三人。


「うりゃうりゃうりゃ〜」

 ガゴッ! メキィ!

「ぐしゃあっ!?」


 リジーの梯子が炸裂し、敵兵の頭蓋骨が粉砕された。


「……二十八人」


 少し負けてるか……別にいいけどさ。


「梯子って乱戦向きね」


「サーチ姉のリングブレードも」


 リングブレードは私が一番得意な武器だからね。短剣二刀流もいいけど、やっぱり年季が違う。


「それとサーチ姉。一つ聞きたかったんだけど」


 梯子を頭上に振り上げてから、リジーが尋ねてきた。


「何?」


「何で短剣は必ず白と黒なの?」

「ぶっ!」

「おまけに最近は片刃の剣ばっかりだよね?」

「ぶふっ!」


 し、しっかり見てやがる……!


「黒い剣には亀甲の模様が……「それ以上しゃべったら剥くわよっ」すいませんでしたあ!」


 あーもう! 私が短剣二刀流をやり始めた不純な動機がバレバレじゃないの!


「き、貴様等あ! ペチャクチャと喋りながら戦うとは、どこまで我等を侮っているのだ!」


「侮ってても十分勝てるのよ!」

 ズバシュ!

「ご、ごふ……無念……」


「た、隊長ーー!」


 今のが隊長? あっさり倒しちゃったわよ。


「ほらほら、私に勝てると思ったらさっさとかかってきなさい! 隊長さんの仇を討ちたいんじゃないの!?」



 ……結局敵の斥候部隊は、数人を残して壊滅した。


「残念。サーチ姉の白黒短剣が見れなかったうぐっほぅ!?」

「パンダみたいに言うな!」

閑話を挟んで次から新章です。

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