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第十六話 ていうか、あとは掃討戦のみ。敵に恐怖を植え付けてやるには、最高のメンバーが揃ってます!

 私達が休んでる間に、戦況は大きく変わっていた。

 アサシンの突然の爆発は、正統王国軍だけではなく、帝国軍自体にも深刻なダメージを与えていた。しかもこちら側の負傷者はエカテルの謎薬によって瞬時に回復したのに比べ、帝国軍はようやく事態の収拾をし始めた段階。この隙を逃すリファリスではなかった。


「今がチャンス! 全軍、紡錘陣形で突撃! 敵軍を蹂躙しつくせ!!」

「「「おおおおおっ!!」」」


 爆発によって乱れた陣形を抉るように、リファリスの牙が帝国軍に深く刺さっていく。それによって帝国軍の混乱は拡大し、逃げ出す兵士も現れだした。


「これは……もう決まりね」


「自分で自分の首を絞めたようなもんやわ。何の為に爆破させたんやろな」


 案外何も考えてなかったのでは。


「死ぬ一歩手前くらいで自爆するようにセットされてた、と思われ」


「そうね、そう考えれば辻褄が…………っていうかリジー!?」


 何気に会話に紛れ込んできたのは、三つ何か(・・)をぶら下げて立ってるリジーだった。全身煤と泥だらけだ。


「うむ、リジーでござる」


 す、すっかり忘れてたわ……!


「あ、あんたケガはないの!?」


「全く」


 ……よ、良かった、無事だったか。


「ていうか、あんた、誰の首を持ってるの?」


「爆発で吹っ飛ばされて寝ていた近くを、敵の司令官らしき人物が通った。だから全員狩った」


「……ホントに司令官なの?」


「わかんない。勘」


 ……勘で首を狩られた敵は、間違いなく無念だったでしょうね……。


「とりあえずリファリスのところへ行って、首を確認してもらいなさい」


「はーい」


 ……リファリスに確認してもらったところ、司令官とその部下の首だと判明した。当然のことだけど、司令官を失った帝国軍は大々々混乱に陥り……完全に勝敗は決まった。



 戦いは掃討戦へと移っていき、私達のやることは無くなった。


「いや、無いことは無いんだけど、掃討戦に参加するのもねえ……」


 逃げる帝国兵の背中に刃を向けるのは、さすがに気が引ける。


「そう? 徹底的に懲らしめてやるべき、と思われ」


 容赦ないねえ、リジーさん。


「ウチも賛成や。殺す事よりも、追いかけまわして恐怖を植え付ける事が重要や」


 あらら、エリザも容赦なし。


「そういう事でしたら私も賛成です。別に殺さなくても、背後からちょっと痺れる薬や怖い幻覚が見える薬をかけてやればいいんですよね?」


 エカテル、それは単なる嫌がらせよ。


「おいかけっこ、おいかけっこ、おにさんこちら〜♪」


 ドナタ、今回は私達が鬼になるんだからね?


「……はあ……多数決は民主主義の原則ってか……。わかったわかった、追撃しましょ。脅すだけでも殺りまくりでも何でもいいわ。ただし、自分の命は最優先してね」


「もちろんや!」


 あんたが一番危なっかしいんだよ!


「それじゃあ好きなようにしなさい!」


「「「了解!」」」

「りょーかい!」



「呪われて呪われて呪われ尽くしなさい。≪呪われ斬≫」

 カシュッ! スパスパ!


 一番張り切ってるリジーは、逃げる敵の背中を≪呪われ斬≫で浅く斬る。


「痛え! ………ん? 身体が重くなって……」

「か、身体が! 身体が動かねえええ!」

「手が勝手に動いて……うわああああ!」


 呪われた敵兵は様々な呪いに襲われ、次々に落馬していく。


「うう、畜生……ここまでか……」


「まだ死なない。死なせない」


「な、何を……?」


「はい、この槍を持って」


「へ? ………う、うわわわわわ!?」


「ぎゃ!」「ぐあ!」「な、何故!?」


 槍を持たされた敵兵は、次々と周りの味方を刺し殺していった。


「な、何なんだこの槍はああああ!?」


「……ふむ……この槍は味方を刺して回る呪いっと……」


 リジーは敵兵を呪われアイテムの実験台にして回り、恐怖を拡散していった。



「枯れ木に花を咲かせましょ〜♪」


 一方、エカテルは逃げる敵の風上に回り、何故か楽しげに薬を蒔いていた。


「ぶわっ!? けほけほけほ……な、何だ、この粉?」

「か、痒いな……うわ、全身痒!?」

「かいかいかい……ぎゃああ、めちゃくちゃ痒いいい!」


 あちこち掻きむしる敵兵達は、馬上でバランスを保てなくなり、次々と落馬していった。


「か、痒い痒い痒い痒い!」

「うわあ、地獄だああああ!」


 ぽんっ


「ん? 手に花が……?」


 ぽんっぽぽぽんっ


「う、うわああああ! 俺の身体に花があああ!」

「お、俺が木に! 木に変わっていくぅぅ!?」

「葉っぱが! 葉っぱが! ぎゃああああ!」


 次々と身体に花や葉っぱを生やしていく男達は、やがて人の形をした樹木へと変貌していった。


「どうですか? 私の新発明、樹木変体薬です♪ さあ、まだまだ実験段階の薬が沢山ありますから、皆さんお試しあれ〜♪」


「「「ぎゃ、ぎゃあああああああ!!」」」


 …………エカテル、それはどうやって調合したの?



「「…………」」


 異様に張り切る二人を見て、私とエリザはドン引きしていた。


「リジー……確か呪われアイテムの呪い内容は、全て把握してるんじゃなかったっけ……?」


 つまり、実験でも何でもなく、純粋な嫌がらせ。


「……どうやってしたら、あんなキテレツな薬を作れんねん……」


 ……エカテル、そんなにストレス溜めてるわけ?


「ウ、ウチらはどないする? 何もせんでもよさそうやけど?」


 ……あの二人だけで、十分すぎるくらいの恐怖を植えつけられそうね……。


「……しばらく様子を見といて、リジーとエカテルが暴走したら、全力で止める……ってことで」


「かまへんけど……もう暴走しとるんやない?」


 ……かな、やっぱり。



 ………ドドドドド………



 そのとき、背後から不気味な地響きが聞こえてきた。


「……エリザ、私さ、スゴくイヤな予感がするんだけど……!」


「き、奇遇やな。ウチもや」


 二人同時に振り返ってみると。


 ドドドドドドドドドド!!

 ブモオオオオ!!


「「ニ、ニードルエレファンの暴走(スタンピート)だあああ!!」」


 ニードルエレファンってのは、身体中トゲトゲの象型モンスターです!


「ぎゃああ!」


「エリザ、ストップストップ! ジッとしてれば勝手に避けていくから!」


 ニードルエレファンは動く相手しか襲わない習性がある……はず。


「ホ、ホンマやな!」


「た、たぶん……」


「多分って……もう来てるでぇ!」


 私達の間近に迫ったニードルエレファン達は、急に私達を避けて通過していった。


「ほ、ほら。言った通りでしょ」


「ちがうよ、さーちん」


 へ?


「わたしがよけるようにいったの?」


「ド、ドナタ!?」


「このままにーどるえれふぁんたちが、てきをおいはらってくれるよ」


 ……そ、そうか。暴走(スタンピート)じゃなくて、ドナタの≪統率≫(ガバメント)だったのね。


「みんなはりきっておにごっこ!」


 ……遊びじゃないんだけどな……まあいいか。


「……サーチん……ホンマの暴走(スタンピート)やったら、マジでヤバかったんとちゃう?」


 ……かもしんない。



 この暴走(スタンピート)モドキによって、帝国軍は完全に崩壊し、私達は無事に要衝を奪うことに成功した。


 ドドドドドドドドドド!


「「た、助けてえええ!!」」


 ……リジーとエカテルの犠牲によって。

リジーとエカテル、何気に報いを受けてます。

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