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第十七話 ていうか、いよいよ旅立ち「いやあ!見捨てないでくださあい!」わかった、わかったから!

 滝の真竜(アクアマスター)に、勇者の誕生に関する逸話を失伝した張本人の情報を事細か(・・・)に説明する。


『なんという輩だ、許せぬと仰ってます』


 ついでにエイミアが受けたセクハラ情報も誇張して(・・・・)伝えてもらう。


 ……グオオオオオ!!


『万死に値する! 我が牙の錆にしてくれるわ! と仰ってます』


「え、牙が錆るんでふがふが」


 エイミア、余計なツッコミはやめてね。


「あ、でも関係のない人達に危害は……」


 アブドラに伝えてもらうと滝の真竜(アクアマスター)がデカい目で睨みつけてきた。ていうか、マジ怖いっつーの。


『我を誰だと思うておる。それぐらいの力加減、雑作もないわ……と仰ってます』


 ……さっきまで辺り一帯、更地に変えてた人が言うセリフじゃないわよね。


『さっきまで辺り一帯更ぐぼあ!』


 だから余計なこと翻訳するなっつーの!


『ぐふごほ……わ、我はその輩を成敗しに行く。我が見初めし娘よ、再会まで壮健たれ……いざ、と仰ってます』


 ……そう言って滝の真竜(アクアマスター)は翔び去っていった。

 これによって堕つる滝(フォーレンフォール)での大事件は終息した。



 あとから聞いた話になるけど、スーモサカの町では巨大なドラゴンと人気のない変態ギルマスの鬼ごっこが常態化しているそうで、結構な名物となっているとか。あのギルマス、生命力はありそうだしねー……ゴキブリ並みに。

 まあ変態ギルマスのおかげでダウロの危機も何とかなったわけだし……一応、合掌。



 滝の真竜(アクアマスター)がどっか行っちゃってダンジョンコアの守護ががら空きになっちゃった件に関しては、しばらくアブドラ達ワイバーンが代行してくれるそうだ。


『我ら滝の真竜(アクアマスター)の名代としてここに滞在しますが、エイミア殿への忠誠は未来永劫。いつでも頼ってくだされ』


「はう〜……」と涙目のエイミア。我慢しなさい、めっちゃ重い忠誠だけどね。


「……ねえ、例えばだけど……エイミアが『ダンジョンコアのところまで連れてって』て言ったら従う?」


『『『もちろんです!』』』


 ……エイミア。あなたいつでも“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトの一角を崩せるわよ……。



 そして。

 ギルドへ事の次第を報告したうえで、ダリアさんに面会した。


「そうか……そのような伝承があったのか……」


「……やっぱり知ってるのって……」


「……長男である愚弟(もう縁切りたいクソ)だけに伝わったのだろうな」


 まあ今頃はドラゴンの腹の中でしょう。

 ……そう願う。


「それで? これからどうするの?」


「一応パンドラーネ……もとい闇深き森(ディープフォレスト)に行くつもりです」


 ダリアさんが視線を反らした。


「申し訳ないが……闇深き森(ディープフォレスト)の管理を委託されてるパンドラーネのギルドマスターも……うちの一族だ……」


 やっぱりジョー○さん化してるじゃない!


「だが大丈夫だ。非常に真面目だからな」


 ……さいですか。


「見た目は愚弟(地獄に落ちろクソ)とそっくりだが」


 全然大丈夫じゃないじゃない!


「……まあ紹介状は書いてやる。あとは努力で何とかしてくれ」


 丸投げだよ!


「お前達はまだいいよ……私なんか愚弟(あんなの)と似たばっかりに……鏡が怖い……」


 ………………ちーん。



 出発する日が決まり。


「ちょっとの間だったけど……」

「けっこう長くいたような気がしますね……」

「でも全員で入ったの初めてだよな……」

「……のじゃ」


 私達は竜生館の露天風呂に浸かっている。女将さんの計らいで貸し切りでパーティメンバーだけで入って……。

 って、おい!


「マーシャン! いつから私達のパーティ加入したの!?」

「あ……」

「そういえば……」


 エイミアとリルの視線を受けて。


「……今じゃ!」


 マーシャンは堂々と答えた。


「はーい、じゃあ多数決で……マーシャンの加入に賛成の人」


 マーシャンだけ手を挙げた。


「じゃあ反対の人ー!」


 私を含め三人。


「というわけで否決されましたー!」


 パチパチと拍手するマーシャン以外。


「な、な……」


 半泣きになってるマーシャン。実は事前に談合してたドッキリだったり。

 さて、ネタばらし……♪


「う、うわ〜ん!」


 あ、行っちゃった。


「おい、止めなくてもいいのか?」


「リルが一番ノリノリだったじゃないですか?」


 確かに。


「さーて、出ましょうか……あら?」


 立ち上がったエイミアの太もも。


「エイミア、いつタトゥーいれたの?」


「たつー?」


「あー……刺青よ刺青」


 そう言われてエイミアは自分の太ももを見る。そこには水とドラゴンをあしらった妙な紋章があった。


「……何ですこれ?」


 いや、私が聞いたんだけど……。


「ふむ……おそらく滝の真竜(アクアマスター)に見初められた証じゃろうな」


 なんと!

 逃亡中のマーシャンを捕まえて聞いてみたところ、このような結果でした。


「しかし滝の真竜(アクアマスター)もスケベよねー。結局巨乳好きなんだし」


 リルもウンウンと頷いている。


「む? 何を言うておる?」


 マーシャンは衝撃的な言葉を発した。


肉は柔らかいほうが(・・・・・・・・・)いいじゃろが」


 ……は?


「それって……」

「つまり……」


「自分の獲物(たべもの)に手を出すな、ということじゃな」


 ………………。


「「はやく言ええええええ!!」」

「いやああああああ!!」



 こうして。

 温泉巡りという旅の目的に、滝の真竜(アクアマスター)からの逃走……という目的が加わりました。



「サーチぃ! 見捨てないで! 食べられたくない!」


 わかった! わかったから!

次回、閑話をはさんで新章です。

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